円相場が一時34年ぶりの低水準に達したことを受け、財務省・金融庁・日本銀行が緊急会合を開催した。
会合では、為替市場の過度な変動を防ぐための方針を確認。
円安進行の中、企業経営においてコスト増に対応するための価格転嫁・生産性向上が重要と、専門家は指摘する。

34年ぶりの円安に緊急会合

円相場が一時、約34年ぶりの円安水準となったことを受け、財務省などが緊急会合を行った。

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27日の東京外国為替市場の円相場は一時、2022年10月につけた1ドル=151円94銭を下回り、1ドル=152円台目前まで円安が進んだ。

過去最大の円買い介入が行われた水準を超えて円安が進んだことをふまえ、財務省と金融庁、日銀は27日夕方に緊急会合を開き、為替の動向などについて協議し、“過度な変動は望ましくない”との認識を確認した。

財務省・神田財務官:
政府としては、為替市場の動向を高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せずに、適切な対応をとってまいります。

一方、外国為替市場では、三者会合の開催の情報が伝わると、政府による為替介入への警戒感から円が買われ、1ドル=151円台後半で推移していた円相場が、前半まで円高が進んだ。

企業経営を圧迫する円安影響

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 円安の加速によって、ビジネス環境はどう変化するのか、企業経営をされてきた石倉さんは、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
円安が続くと、輸出産業は為替の影響で業績好調になるかもしれない。

一方で、内需企業を中心にコストが上がる分、売値も上げないといけないが、その「時間差」、そして支払うものの方が多くなり、経営がキツくなってくるところも出るのではないか。

堤キャスター:
── それは、どういうことでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
円安になると、エネルギーや食料品などを海外から仕入れる時に、支払うお金が増える。

つまり、原価となる仕入れや、原料の価格が上昇するのでコスト負担は増える。そこで、利益を確保するためには、価格に転嫁することになるが、その間の時間差がキツくなる。

堤キャスター:
── より難しい経営が求められるということでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
さらに、今は賃上げをしないと人も確保できないので、人件費も上げる必要がある。つまり、仕入れである原価、そして、それを価値に変える人のどちらに対しても支払う金額は増えていく。

では、その分余るだけの値上げができるか、生産性アップができるかといわれると、これは簡単ではない。値段も大胆に上げてしまえば、顧客が離れてしまいかねないので、慎重にやらざるを得ない。

つまり、値上げや生産性アップの効果が出てくるまで、企業としてはコストが増えるだけになるので、経営として難易度は上がる。

円安下での企業成長は正攻法で

堤キャスター:
── 加速する円安など、厳しい環境の中、成長していくためのポイントは?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
経営としてシンプル、かつ、すぐにできるのはコストカットなのだが、これは将来の成長を奪う可能性も高いので、あまりとりたくない手。

だからこそ、なるべく早めに価格転嫁すること、そして、生産性を上げられる要素を細かく社内から見つけ、小さくてもすぐにでも着手する。そして、改善し続けていくという正攻法から逃げないことが重要。

堤キャスター:
為替の変動は、企業はもちろん、私たちの暮らしにも大きな影響を与えます。
もっと危機感を持って、その対応を考える必要があるのかもしれません。
(「Live News α」3月27日放送分より)

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