大相撲・春場所で13勝をあげ、110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした尊富士(24)。
優勝から一夜明け、会見を行いました。

新入幕優勝を果たした尊富士
新入幕優勝を果たした尊富士
この記事の画像(12枚)

――勝てば優勝という意識はあった?
尊富士:

めちゃくちゃ意識しました。
――お母さんからはどんな言葉があった?
尊富士:

「よくやった」って。いろんな思いを感じましたね。その「よくやった」に対して。
一番の親孝行ができたかなと。

勝てば優勝となる14日目でしたが、尊富士は敗れ、右足首を負傷。車椅子で退場し、千秋楽の出場は危ぶまれていました。

負傷した取組を応援していた人の中には、息子・尊富士のけがを心配する母・桃子さんの姿が…。

尊富士の母 石岡桃子さん:
けがが心配で、行きたい気持ちが強いです。もう祈るしかないですね。

そして、迎えた千秋楽。尊富士は足にテーピングを巻いて出場。
粘り強い取組で見事、優勝を勝ち取りました。

初土俵から10場所目の史上最速での優勝を果たした尊富士。新時代を築く力士の素顔に迫ります。

千秋楽で見せた「心」の強さ

歴代最速の10場所目での優勝、110年ぶりの快挙を成し遂げた尊富士ですが、春場所の番付をみてみると、東前頭17枚目。番付最下位から優勝の下克上を果たしました。

「めざまし8」スタジオでは、尊富士のすごさを、相撲に詳しい好角家歴20年以上のタレント・山根千佳さんをゲストに迎え、詳しく聞きました。

好角家歴20年以上のタレント・山根千佳さん
好角家歴20年以上のタレント・山根千佳さん

――番付最下位からの優勝はどれだけすごいことなのでしょうか?
山根千佳さん:

私も20年以上大相撲を見てますけど、ここまで鳥肌が立つ瞬間っていうのは初めてでした。とにかく大興奮で、現実なのかな?っていう感じ。信じられない方がうれしいよりも強かったですね。

山根さんが見た、“尊富士が優勝できたポイント”とは?

山根千佳さん:
今場所、千秋楽ではけがの影響でいつもの立ち合いの踏み込みはできていないように見えました。でも、集中力、特に心技体の「心」の部分が強かったですね。相手が左にかわすような動きの時に素早く右からおっつけている技術面もありましたし、とにかく先手で前に攻められた。ということです。

母・桃子さんへの恩返し「夢みたい」

尊富士は兄と弟、妹がいる4人きょうだい。母・桃子さんは女手一つで育ててきました。
桃子さんは急きょ青森から大阪へ向かいましたが、チケットが手に入らず、会場近くで観戦したといいます。

尊富士の母 石岡桃子さん:
もう急きょ来たんで会場に入れなくて、体育館の近くで画面で見ました。
――その時はどんな思いでしたか?
もう勝つ負けるよりもけがした足が心配で、そればっかりでしたね。

優勝という快挙に桃子さんは…。

――息子さんの姿を見てどんな思いですか?
尊富士の母 石岡桃子さん:

ほっとしましたね。もうけがが心配で来たんですけど、 まさかこんな形で優勝できるって夢みたいです。
――小さいころの尊富士はどんな子供だった?
優しくて癒やされる感じですね。土俵に上がってる顔、姿とは全然違う。本当に癒やしですね。

けがを心配する母親と、母親に恩返しをしたいと思う息子。
相撲ジャーナリストの横野レイコさんは桃子さんからこんな話を聞いたそうです。

相撲ジャーナリストの横野レイコ氏
相撲ジャーナリストの横野レイコ氏

相撲ジャーナリスト 横野レイコ氏:
(尊富士は)いつもここ一番でけがをする。「残念だったね」ってお母さんが言うと、「いや、ごめんね」って言って、「次は必ず頑張るから」って、「私がいつも励まされてました」って。

恩師が語る尊富士 過去の逸話も!?

祖父がアマチュア相撲の指導者で、保育園から相撲を始めた尊富士。

相撲を続けた理由として、フジテレビ「ジャンクSPORTS」に出演した際に、「相撲の稽古が終わると唐揚げを買ってもらえるから」と語っていました。
尊富士はどんな少年だったのか?小学校から中学校まで指導した恩師はこのように話しています。

つがる旭富士ジュニアクラブ 越後谷清彦総監督:
腕立ては1回もできませんでした。腕立てやれば1回目でもうおなかが床についてしまうという。

さらに、越後谷総監督によると「相撲センスは抜群だったが、腕立て伏せや股割りができず、でも、負けん気が強くて鍛えれば強くなると思った」とのこと。

そんな尊富士の出身地は青森・五所川原市で豪雪地帯。中学時代、道場までは片道30分歩いて行かなければならなかったといいます。道場に着いた頃には、持って行ったまわしが凍った状態に…。そんな事態に尊富士は、凍ったまわしをスクワット1000回で溶かしたというエピソードも。

山根千佳さん:
学生時代から膝のけがを2回くらいされていて、残ってる腱も少ないみたいな話も聞くので、膝に負担がかからないような相撲とってほしいですし、下半身の基礎のトレーニングをしっかりしてほしいですね。

相撲ジャーナリストの横野レイコさんによると、パワーを裏付ける筋骨隆々とした肉体、とくに「肩のこぶ」がすごいそうで、220kgものベンチプレスを上げるといいます。
同部屋の兄弟子・横綱 照ノ富士から「まずは基礎が重要。四股やすり足だけしろ」ということで、現在は課題の下半身の強化トレーニングをしているといいます。

――下半身をもっと鍛えて出足がさらに鋭くなったら楽しみですよね?
山根千佳さん:

とんでもない出足、今でもそうなんですよ。ここからさらに強くなると思います。
――尊富士の魅力は単なる突き押しじゃないところですよね?
安定感がありますよね。立ち合い当たってから下から上に攻められる強さというのがあるので、そこが本当に魅力的ですよね。
立ち合いのパワフルな当たり方、そしてその後の攻めの速さ。その出足、足の運び方の速さというのが本当にすごいです。
電車道にもっていくような、そんな相撲を今後は楽しみにしています。
(「めざまし8」3月26日放送)