第3節、長崎に大敗し今季初黒星を喫したものの、第4節は見事に立て直し、連敗を阻止した状態でアウェイ・千葉に乗り込んだ清水エスパルス。厳しい展開になることは容易に想像できたが、自らの手で勝利への道を切り拓いた。

耐えに耐えてアウェイで勝ち点3奪取

昨季、清水エスパルスが一度も勝つことが出来なかった千葉。長崎戦の時のようなチーム状態であれば、千葉の勢いに押され、自滅の道をたどる可能性も十分にあっただろう。

特に今回の千葉の場合、前節のアウェイ・鹿児島戦で4失点を喫し敗れているため、ホームで情けない姿は見せられないと意気込んでいたのは想像に難くなく、試合開始直後の圧力は間違いなくエスパルスにとっての脅威だった。

しかし、千葉の強いプレスを耐え忍び、前半終了間際にわずかなチャンスを活かして先制へとつなげる。直後に同点に追いつかれはしたものの、後半はエスパルスの“辛抱強さ”が千葉に狂いを生じさせた。

体力が続かなかったのか、徐々に千葉の圧力が弱まるとエスパルスに自由が効き始め形勢逆転。

35分には住吉のカットから途中出場の松崎にパスが渡ると、さらに外を走る乾が右足を豪快に振り抜き勝ち越し。

すると、時を同じくしてエスパルスは勝ち切りを図ってシステムをスリーバックへと変更しつつ、その後も高い位置での展開を続けていると、アディショナルタイムに中村のサイドチェンジを右サイドバックから駆け上がった北爪がダイレクトで折り返し、最後は松崎が左足のアウトサイドでキレイにネットを揺らし勝利を決定づけた。

第4節の大分戦では終始、試合を支配し相手を圧倒する“王者”のサッカーを実践したかと思えば、千葉戦では我慢比べを耐え切る強さを見せ、体力面でもメンタル面でも成長の証を示した秋葉エスパルス。

次なる相手も昨季勝てなかった秋田だが、ロングキックとセットプレーを持ち味とする相手に、“らしい”サッカーでどのように攻略してくれるのか、目が離せない。

秋葉監督「タフさや泥臭さも重要」

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-千葉戦の総括
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
千葉戦は我慢比べになった。思う通りのプレーは出来なかっただろうが、自分たちが出来ないのなら相手にもさせないという体力的にもメンタル的にも削り合いになる中で、自分たちのチャンスが来るまで根気強く、我慢強く、前に出るのをやめないで自分たちの時間が来るのを待つという価値の高い、自信のつくゲームをしてくれた。

交代選手を含めた総合力で我々の方が最後までタフでクオリティーを持っていたと思う。アウェイで勝ついい成功体験になったし、選手たちの成長を感じた。これをあと33試合続けて行きたい。

-千葉が乾に厳しいマークをする中でゴールを決めた
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
そういったクラブは増えていると思うし、あれだけ違いを見せられると(乾)貴士のところにも厳しくマークに来る。2023年は、それにイライラして自滅することもあったが、今はメンタル的にもかなり大人になって、攻守において一番“効いた”プレーができる選手として今も成長している(笑)

特に早い段階の守備で相手のフリーキックを遅らせたり、クイックに帰陣して速攻をさせないなど、ピンチとチャンスを嗅ぎ取れる選手になっている。そんな中でゴールを決められるのは超一流の証だと思う。もっとワクワクドキドキさせて欲しい。

また、そうなることでそれ以外のいろんな選手が得点を獲っている。山原ももう2点獲っているし、いろんな選手が絡むことはうれしい。活きのいい選手はまだまだ他にもいる。特徴を出して、ブラッシュアップして、今ベンチを温めている選手もトライを見せて欲しい。

-第5節終了時の勝ち点が12という結果について
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
基本的に試合数×2という勝ち点をベースに考えている。そういった意味では十分及第点といえる。ただ、いつ獲れなくなるかはわからないので、貯金できる内にいくら積み上げてもいい。

ここまでの1敗をいうのは望んでいた結果ではない。我々は最低でもドローにしなくてはいけない。相手に3が入り、自分たちが0はいいことではない。最低でも引き分けにしなくてはいけない。それが優勝する上での大事なポイントになるはず。そうしたタフさや泥臭さも重要になる。

-昨季は勝てていない秋田について
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
千葉戦で苦手意識は払拭できたのではないかと思う。ロングボールへの対策やセカンドボールの拾い合い、そこからのクロス対応など、キャンプから選手と課題として共有し対処してきたのでかなり良くなってきている。

秋田はよりわかりやすい相手。我々は常にボールを動かしながら相手の陣地でプレーできるようにしたい。相手の土俵に乗らないことは重要だが、逃げるのではなく相手がロングボールを入れてきたら真っ向から跳ね返して、しっかりセカンドボールを回収できるようにすれば、相手はやることがなくなってしまう。そういった強さやたくましさが出せるゲームを目指したい。

-千葉戦ではセンターバックの2人が警告を受けた
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
住吉は特に軽率なプレーで警告を受けてしまったが本人も反省出来ている。両方のプレーともギリギリ止めないといけないというレベルではなかったので、もったいない形だったことを映像で見せて認識できている。次にはそれほど影響ないと思う。

蓮川選手「我慢強く戦えたことが勝因」

清水エスパルス・蓮川壮大 選手:
長崎戦で負けた反省からいろいろ修正した中での2連勝。まずは勝てたことが最も大事。千葉は前の試合で大敗して迎えたホームということで、前から激しいハイプレスをかけてきた。前半の少ないチャンスで先制点を獲れたのはエスパルスのクオリティーの高さで、劣勢の中で大切なことだった。後半を無失点で切り抜けたことも大事なところだった。

チームとしても我慢強く戦えたことが勝因だった。攻撃の起点づくりが上手くいかない時でも、ディフェンスでボールを動かして焦らずに戦えた。前に質の高い選手がいて、粘ることが出来れば決めてくれると学べたので、これからも守備が失点しないことにこだわるのは意識すべきだと思う。

左サイドバックの山原選手は前に出るところに良さがあるので、攻撃を活かしてもらうために事前にコミュニケーションを取ってしっかりとカバーリングすることができた。いい関係を築けている。

また、セットプレーやロングスローへの対策、スリーバックへの変化などゲームを安全に終わらせるところもしっかりできたのは収穫。

次は3連戦の最後。3連勝も見えるがまずは目の前の試合にしっかり勝つことが大事。出し切る気持ちで終われるようにチームとしていい準備をして取り組みたい。

吉田選手「力の底上げが出来ている」

清水エスパルス・吉田豊 選手:
フル出場するのは久しぶりだったが常にトレーニングは積んできたので最後までやり切れた。体を張るプレーは自分の長所なので、絶対に負けたくないし負けない気持ちでできた。

また、ベテランとしてチームを支える気持ちは2023年よりさらに強くなった。声出しや雰囲気づくりも意識的に取り組んでいる。試合に出る選手、リザーブ、出られない選手、それぞれいるが、みな全体練習後も個別の課題に取り組んで力の底上げが出来ている。

連戦が続くとフワッとした気持ちになりやすい。出ない選手がいつでも出られるという状態にあると、出ている選手もスキをみせることができなくなる。「もっとやらなきゃ」と思える。ハードワークが出来る。そういったチーム力が出来ているし、これからも大事になる。

自分もそこを行き来してきたが、出られない選手にもしっかり声をかけてみんなで勝ち続けていくことができるようなチームになるよう、これを1年間やれるように勉強中でもある。チームはいま一番良い状況にあるのかなと思う。みんなで勝ち続けるクラブでありたい。

秋田は前節3対0で勝利しているが、空中戦や勢いでやってくるチーム。そこに付き合わず自分たちのサッカーをして相手の良さを消すことも必要。しっかり落とし込んで試合に臨みたい。

直近、右サイドで組むブラガ選手はまじめで話を聞いてくれるので、練習から積極的にコミュニケーションを取っている。彼が前でしっかりエネルギーを使えるように、もっと気持ちよくプレーできるように彼の良さを引き出したい。

松崎選手「得点につながる場面で顔を」

清水エスパルス・松崎快 選手:
個人的に得点は早いうちに上げたいとも思っていたし、2対1という場面で相手がパワープレーをしてきたタイミングだったので、試合を終わらせられる3点目になってよかった。シュートは自分にしては珍しく冷静にコースも見えていて、アウトにかけて思い通りのコースに行った。出来すぎかもしれないゴール(笑)ただ、あそこに入らないと点は獲れていないので、ポジションを取れていたことも大事だった。

2点目のアシストは、相手センターバックがばらけて自分に食いついてきたので、乾選手に流したらスーパーゴールを決めてくれた。

自分は得点につながる場面で顔を出さなければならない。エスパルスの前線には良い選手がたくさんいるので負けないような活躍ができたらと思う。チームメイトはボールを出したらしっかり返ってくるし、乾選手や北川選手らきちっと決めてくれる選手がいて心強い。負けないように自分も決めたいし、追いついていきたい。

秋田に関してはこれまでの相手と少し違うタイプのチームだが、そういう相手も倒せるようにならないとJ2優勝は見えてこないので3連勝できるように頑張りたい。

北爪選手「もっと結果を出さなければ」

清水エスパルス・北爪健吾 選手:
千葉戦はタフなゲームだった。相手に能力があるのはわかっていたし、前半は我慢というか、なかなか自分たちの形でゲームが運べなかったが、前半終了間際に点が獲れて、我慢強く戦えている印象を持っていた。

1対1の状況が続き、どこかでゲームを変えるポイントになりたいとは思っていたが、追加点が入ったタイミングの交代でスリーバックにしてゲームを終わらせる役割と思って入った。(松崎)快の初得点のアシストが出来て自分にとっても良いきっかけになるゴールだった。交代で入る選手は差を出さなければいけないし、自分の良さも出さなければいけないし、もっと結果を出さなければいけない。

少しずつでも自分たちの成長が結果につながっているゲームが出来ていると思う。ただ、パーフェクトかと問われればまだまだ修正は必要で、首位にいるわけでもない。まだ5試合。勝ちを積み重ねることで成長と自信を積み重ねていければと思う。

90分間、強度を落とさないことは、キャンプでやった激しいトレーニングの成果が出ているし、試合の終わらせ方を整えた勝ち方も出来ているのは自信になっている。

秋田はパワフル。セットプレーやロングキックとセカンドボールの回収を狙ってくる。それでもすべてを上回らないと2023年と同じことになる。自分たちでボールを動かして、たくさん点を獲り、みんなと喜びたい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。