ある女性が病気と闘いながら大学生活を送る様子が描かれた小説。実は大分県内に住む女性が、自身の経験をもとに書いたもの。この小説に込められた思いを取材した。

「線維筋痛症」闘病の経験を小説に

≪わたしはこの人生をマイナスだけでは終わらせない≫
去年5月に出版された小説「run」。
教師になる夢を持つ大学生が、病気が原因で進路や人間関係などの問題に直面する物語。

この記事の画像(7枚)

この本を書いたのが大分県内に住む20代の新藤朱華さん(ペンネーム)。
本に登場する、病気の女性は自身がモデルになっている。
新藤さんは「線維筋痛症」という病気を抱えていて、高校2年生の時に突然体に異変を感じたという。

新藤朱華さんは、「段々体が重たくなってきて、通学もきつくなってきて、友達との会話も頭が回らなくな ってついていけなくなって来たのが最初」と当時を振り返る。

教育実習中に経験した体の辛さ…

学会などによるガイドラインによると、線維筋痛症は全身の痛みやこわばりなど人によって様々な症状が現れる。
その症状の複雑さから、病気としての特定が難しいとされているが、全国には200万人以上の患者がいると推測されている。

新藤さんは教師になるために県内の大学に進学、しかし、教育実習中に経験した体の辛さに教師にはなれないと挫折したそうだ。

「ごはんもまともに食べれなくて、栄養失調みたいな感じで震えたりとか、意識失いかけて救急車で運ばれたりして本当に毎日しんどくて…」(新藤朱華さん)

読書が支えに 執筆にも挑戦

病気を発症してから新藤さんの支えになっていたのが読書。本の中の言葉に励まされ生きるヒントにしていた。しかし…

「生きるか死ぬかぐらい症状がひどくなった時に読んでいて、励まされる本が段々無くなってきて、自分が救われる本を読みたいって思ったのが一番のきっかけ」(新藤朱華さん)

小説を書いたことはなかったが、2019年から執筆に挑戦。
約4年間、体調を見ながら少しずつ書き進め、去年5月、自費で出版した。

表紙には画家・北村直登さんの作品が

新藤さんの本の表紙にはカラフルな花のイラストが。県内で活動する画家・北村直登さんの作品。

画家の北村直登さんは「“私、本を書こうと思ってます。もし書けたら表紙の絵とか使わせてもらえませんか”って言って病気されてるとか、色々苦労しながら執筆されてると聞いて、僕で力になれるならという感じで。ほんとにこうやって言って成し遂げる人いるんだって」と話す。

「教壇に立つ」新たな挑戦も

新藤さんはいま新たなことに挑戦しようとしている。
この日は、由布市にあるカフェ「トストコーヒーロースター」で打合せ。
元教師のオーナーの藤井契さんは、新藤さんの本と病気を知って今後、学校で講演活動が出来るように後押ししている。

トストコーヒーロースターの藤井契さんは「ワンポイントの人権学習、特別授業の1時間であれば。1時間彼女がずっとしゃべるんではなくてサポートしながら出来るんだったら、子どもたちの前に立てる、教壇に立つって夢がちょっとでも叶うじゃないかと思った」と話す。

「(教壇に立つことは)ずっと遠くの夢だったが近い未来にあるんだと思ったら、すごくわくわくしている」(新藤朱華さん)

「1人じゃないって伝えたい」

現在、2作目を執筆中という新藤さん。

本を通して伝えたいことについて新藤さんは「一番は今つらい思いをしていたり独りぼっちだなって、苦しいなって思ってる人達に1人じゃないって伝えたい。皆さんが苦しんでいる時、私も多分絶対苦しいんですけど。頑張って前向きに進むので一緒に生きませんかって言いたい」という。

新藤さんの本は、大分市の書店やインターネットで販売している。

(テレビ大分)

テレビ大分
テレビ大分

大分の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。