子どもの学力をアップさせる秘訣とは何だろうか。もちろん「勉強をする」ことが学力アップにつながるのだが、その前提として大切なのが「体作り」だ。子どもの学力アップを「栄養」の観点から考える。

学習塾で「おやこほけんしつ」

愛媛・松山市内の学習塾「寺子屋グループ市駅教場」で、先日、あるユニークな取り組みが行われた。指をクリップに挟んで行っているのは、貧血検査だ。

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採血する必要がないため乳児から行うことができ、血液中の酸素濃度やヘモグロビン濃度を測って鉄分が不足していないかどうか調べることができる。また、子どもの筋肉量や体脂肪率などを測定している。

この学習塾で行われていたのは、親子で健康の課題について知ってもらおうという「おやこほけんしつ」という取り組みだ。

東京の一般社団法人「ラブテリ」が、医師・助産師・管理栄養士・博士などの専門家とともに2016年から全国約30カ所で実施している。

開催した寺小屋グループ 崎山浩取締役副社長:
健康面を含めた改善のために何ができるかなっていうことに親子で考えていただいて、そのことが勉強を順調に進められるということにつながるかなと思っています

体験した親子の母親からは「男の子はこれからぐっと伸びる時期に入るみたいなんで、その時にカロリーがちゃんと取れるように心がけたい」、息子からは「小食なのでもうちょっと朝から食べようかなって思いました」という声が聞かれた。

成長期の子どもは「鉄分不足」の傾向

ラブテリはこれまでのべ7000人ほどの母親と子どもを対象に貧血検査を実施。その結果、特に成長期の子どもたちにみられた傾向のひとつが「鉄分の不足」だという。

ラブテリ代表 細川モモさん:
なかなか十分にその成長に必要な栄養素が取れないという子どもたちが、想像以上にいるのではないかなと考えています

背景には、「物価高」や「節約志向」といった社会問題もあるのではないかとみられている。

ラブテリ代表 細川モモさん:
食費を抑えた結果、子どもに必要な栄養素もかなり不足させてしまって、やっぱり成長がうまくいかなくなるといったような問題が出てきてしまう。やはり物価高であり格差社会だからこそ早期に発見をすること、早期に改善をしていくことが大事なんじゃないかなと思っています

「鉄分不足」は「学力」にどう影響する?

実際、「鉄分の不足」は「子どもの学力」に影響するのだろうか?「おやこほけんしつ」にも関わった管理栄養士でもある、愛媛大学農学部地域健康栄養学分野の猪川聡美研究員に聞いた。

管理栄養士・愛媛大学農学部地域健康栄養学分野 猪川聡美研究員:
特に月経が始まっている女の子っていうのは、鉄を絶対的に失う時期になっていますので、その時期にダイエットとかが重なってくるとあまり食べないとか、できるだけカロリーのないものを食べるということは鉄欠乏につながる可能性は大いにあります。男の子でも、活発に運動をしているような男の子というのは運動することで鉄を失う可能性が大きい

これは子どもの身長の伸びの変化を男女別に示したグラフだ。女の子は11歳で約8cm、男の子は13歳で約9cmと、身長が急成長する「成長スパート」という時期を迎え、成長のために多くの鉄分などが必要になる。さらに女の子は10歳頃から月経を迎え、血液不足、鉄不足に陥りやすくなるという。

子どもの骨折が増加中

鉄分は、人が活発に活動するために必要な酸素を脳など体全体に供給する「ヘモグロビン」をはじめ、「筋肉」や「骨」を作るもとにもなる大事な栄養素だ。

猪川研究員は、成長期にこの鉄分が不足すると「集中できない、イライラする、眠たくなるというような学習がしにくくなる状況につながっている可能性がある」と話した。

さらに…

管理栄養士・愛媛大学農学部地域健康栄養学分野 猪川聡美研究員:
ちょっと転んだだけで骨が折れてしまうというのは高齢者のイメージがあると思うんですけど、今、子どもの間でもスポーツをすることによってすぐ骨折してしまうっていうことが増えてきています。それはおそらく、必要な栄養素がピークボーンマス(骨の成長ピーク)を育てるような時期にきちんと取れていなかったということの表れだと思います

令和の子どもたちの栄養不足について、愛媛県内で保育園事業や働く母親のサポート事業などを展開する(株)エルパティオの川崎暁子さんは「成長期のお子さんがいるお母さんたちは、やはりどうしても量やカロリーに目が行ってしまい、なかなか栄養素まで意識するのが難しいですよね」と話した。

不足しがちな栄養を手軽に補える朝食を紹介

また、朝食と「子どもの学力」について興味深いデータもある。平成29年度の文科省の「全国学力・学習状況調査」の結果によると、「朝食を食べる習慣がある」子どもたちほど、朝食を食べない子どもたちより正答率が高いという結果が出ている。

やはり朝食はとても大事なのだが、さすがに忙しい朝に毎日「旅館の朝ごはん」みたいなものは用意できないのが現実だ。子どもたちの隠れた「鉄不足」を具体的にどう補えばよいのか。「不足しがちな栄養を手軽に補える朝食」を愛媛大学の猪川研究員に教えてもらった。

(1)主食【雑穀米】
パンよりご飯。食物繊維が豊富な雑穀米や玄米などがおススメ。血糖値が緩やかに上昇することで、記憶力や注意力などの認知機能が白米より良いことが報告されている。
(2)【納豆】
不足する鉄分・タンパク質が豊富。ほかにも卵やツナ缶などでもOK。
(3)【果物】
「納豆」の場合は特にミカンやイチゴなどでビタミンCを同時に取ると鉄分の吸収率が良くなる。

猪川研究員も2歳と1歳の小さなお子さんがいるということで、実体験をもとに手軽なものを教えていただいた。

愛媛県内で保育園事業や働く母親のサポート事業などを展開する(株)エルパティオ 川崎暁子さん:
これだったら本当忙しい朝でも、時間をかけずに準備できますよね。子どもたちの成長を考えると栄養を意識することが必要だなとわかっているんだけど、気づく機会がなかなかないと思う。こういう“気づきの機会”が身近な所で増えていくといい

(テレビ愛媛)

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