週末に行われたロシアの大統領選挙で、プーチン大統領が過去最高の得票率87.29%で圧勝した。今回の圧勝の背景には、反プーチン派の対抗馬の排除、兵士が訪問する強制動員、豪華景品のばら撒きという3つの作戦があったとされる。

反プーチン派を徹底的に排除

ウクライナ問題などがある中で、2018年の前回選挙より得票率を10ポイント以上伸ばした形だが、プーチン大統領はなぜこれだけの支持を得ているのだろうか。

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ロシアは、1991年に旧ソ連が崩壊してできた。社会主義に変わり資本主義が導入されたが、マフィアなども登場し、秩序は乱れ、貧富の差も広がり、人々の生活は混乱していった。

そこに現れたのがプーチン氏だ。2000年に初めて大統領に当選して、強権的な手法で秩序と経済の安定を取り戻していった。今もそういった“強い指導者”としてのイメージを支持する国民が大勢いるのも事実だ。ロシア国民の高い支持はあるものの、今回、なぜ過去を上回る勢いがあったのか。そこには3つの作戦があったと言われている。

1つ目が、反プーチンの対抗馬排除作戦。2つ目が、兵士が訪問する強制動員作戦。3つ目が、豪華景品ばらまき作戦だ。ウクライナとの戦闘もある中、プーチン氏はとにかく多くの票を得て対外的にも国内的にも自分は唯一無二な強力なリーダーだとアピールする必要があった。それが、この3つの作戦につながった。

まず1つ目の対抗馬排除作戦だが、今回プーチン氏以外に立候補した3人、ニコライ・ハリトーノフ氏、レオニード・スルツキー氏、ウラジスラフ・ダワンコフ氏は、政治的立場はプーチン氏と異なるものの「政府の政策を広く支持」している人たちだ。

一方で、反プーチン派は徹底的に排除した。ウクライナ侵攻に批判的なボリス・ナデジディン氏は大統領選への立候補を禁じられ、ナリヌワイ氏も投獄され、死亡した。

有力対抗馬を出せないようにして、ライバル不在の、実質上の「できレース」を行なった形だ。最初からプーチン氏が圧勝するようできた選挙だったわけだ。

兵士らが市民を個別訪問 強制的にプーチン氏に投票させたか

2つ目の、兵士が訪問する強制動員作戦とはどういったものなのか。

ロシアに支配されたウクライナのクリミア半島の投票所の映像には、兵士と見られる制服姿の男性たちが市民に混じって投票に行く様子が映されている。

こういったロシア支配地域では、兵士らが市民を個別訪問して、強制的にプーチン氏に投票させたと指摘する声が上がっている。

電子投票で“豪華景品”が当たる

3つ目は、豪華景品のばらまき作戦だ。

政府が把握しやすい電子投票をした有権者に対し、日本円で最大16万円相当のポイントが当たるほか、カムチャツカ地方ではヘリツアーやクリミア半島への旅行などが電子投票をすると当たるという。

さらに、もっと豪華なものも当たる。現地報道によると、シベリアなどでは投票方法にかかわらず「自動車」や「アパート」まで当たるという。まるで豪華なキャンペーン付きの大統領選のようだ。

こうした豪華景品が当たるのは、もちろん投票率を上げるために行われたが「投票率が上がる」しかし、「プーチン氏以外に有力候補無し」とすると、「プーチン氏に票が集まる」ということでプーチン氏の思惑通りとなった。

ロシア国内で反発する武装組織も…プーチン氏に焦り?

過去最高の得票率で圧勝して、さぞかしプーチン氏は大喜びしていそうだが、そういうわけでもなく盤石ではなさそうだ。

選挙中に、こんな動きがあったのだ。

反プーチン派のロシア人が結成した武装組織「自由ロシア軍」が、投票期間中にウクライナ側からロシア西部へ侵入し、国境周辺の村を制圧したと発表した。

プーチン氏はウクライナ相手に優勢に戦いを進めているが、小規模とはいえ、ロシア国内でもこのように反発する武装組織も出てきた。

一見、余裕の構えを崩していないプーチン氏だが、ウクライナ侵攻も3年目に突入し、実は「焦り」があるのではないかと考えられる。それが、今回の大統領選での強烈な締め付けにつながったという見方もできる。

今回の選挙の結果、2030年までプーチン政権が続くことになる。
(「イット!」 3月18日放送より)

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