35歳以上の転職は難しいという「35歳限界説」があるが、この説は過去の話になっているのかもしれない。

パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda」は、昨年7月~12月に「doda」のエージェントサービスを利用して転職した個人のデータを分析。このうち、40歳以上の転職実態をまとめ、3月7日に発表した。

40歳以上の転職希望者は増加傾向

まず「doda」によると、40歳以上の転職希望者数は増加傾向にある。

「doda」に新規で登録した人数の推移を、年ごとに年齢区分別で見ると、2023年における40歳以上の新規登録者数は、2018年比で1.5倍以上に伸長。他の年齢区分と比較しても、最も大きい伸び率となった。40歳以上の登録者は2022年から2023年にかけて特に大きく伸び、「この1年でミドル層の転職への関心が高まっている様子が伺えます」としている。

こうした状況を受け、「doda」は40歳以上の転職実態に注目して調査を行い、レポートを発表。このレポートで、昨年7~12月に「doda」のエージェントサービスを利用して転職した40歳以上の個人のうち、65.2%が異業種に転職していることが分かったという。

65.2%が異業種へ転職(提供:パーソルキャリア)
65.2%が異業種へ転職(提供:パーソルキャリア)
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職種別で見ると、昨年7月~12月に40歳以上で異職種に転職した個人の割合は34.2%。転職者全体と比較すると10ポイント近く少ないものの、40歳以上の3人に1人は新しい職種への転職にチャレンジしていることが分かる。

3人に1人は新しい職種への転職にチャレンジ(提供:パーソルキャリア)
3人に1人は新しい職種への転職にチャレンジ(提供:パーソルキャリア)

40歳以上の転職者のうち6割超が異業種へ転職しているということだが、これにはどのような背景があるのか? また40歳以上が転職する場合、どのようなポイントをおさえればいいのか?

パーソルキャリア株式会社「doda」副編集長の山口義之さんに聞いた。

「6割超が異業種に転職」の背景

――「40歳以上の転職希望者数が増加傾向」の理由は?

この10年で、IT化・デジタル化が各業界で進み、変化の激しい時代となりました。

それ以来、新卒採用の代替としての中途採用から、新規事業や変革を遂げるために必要な専門性のある人材ニーズが高まりを見せた結果、段階的に採用対象の年齢が上がっていきました。

コロナ以降においては、慢性的な労働力不足に加え、働き方の選択肢も増えてきたことから、家族と過ごす時間を取りたい、大事にしたい、といった理由で転職を希望する40歳以上も増えてきました。

特に40代は子育て世帯が多く、転職希望者の増加につながっていると考えられます。

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―――「40歳以上の転職者のうち6割超が異業種に転職」、この背景は?

事業環境の不確実性と複雑性が高まり続ける中で、生き残りをかけて新業種や業態へ参入する企業が増加しており、経験や知見を豊富に持つ即戦力人材のニーズが高まっています。

企業の即戦力人材の採用熱が高まっていることを受け、「これまでの経験、培ってきた知識を他の会社で試してみたい」という個人が増えている、さらには年収アップも期待できるため、多くの40歳以上が異業種に転職していると考えられます。


――「40歳以上の転職者の3人に1人は異職種に転職」、こちらの背景は?

40歳以上の約65%が「異業種転職」、約34%が「異職種転職」ということで、「異職種転職」のほうが少ない結果になっています。

「異職種転職」の中身をさらに紐解いてみると、例えば、人材会社の営業からメーカーの人事など、職種が異なっても経験や専門性が活かすことができる転職をしています。

この大きな理由は、「年収」だと考えています。
 
職種においては、全くの未経験や微経験で転職すると、年収が下がる可能性が非常に高くなります。40歳以上の場合、すでに、そこそこのお給料をもらっている人や、家庭を持っている人も多く、「年収」を下げられない、下げたくない人がほとんどです。

そのため、大幅な職種転換は避けていると思われます。
 
しかし最近では、「本当にやりたいことにチャレンジしたい!」という人も増えてきています。今後、個人の「働く」の価値観がさらに多様化すれば、微経験であったとしても、異職種の転職を受け入れる企業も増えるかもしれません。

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――転職する人が、あえて異業種や異職種を選んでいる?

働く個人は「異業種転職がしたい」「異職種転職がしたい」と選んではないと思います。

どんな環境で、どんな仕事をしたいか、さらには転職するにあたって絶対に外せない条件は何かを総合的に加味した上で、転職活動を行っていると思います。


――企業が異業種や異職種の人材を求めている?

企業のニーズは、即戦力性という観点で、近しい業種・業界での経験者を求めることがベースである一方で、新たな領域への参入など、業界の知見を有する人材を求めたいというニーズも強くあります。

40代の転職の場合は、企画・管理系職種が割合としては多く、ミドル・バックオフィス系人材(企画・管理系人材)は相対的に他の職種と比べ、業界に関係なく転職しやすいのが実態です。

40歳以上が転職する際のポイント

――転職の「35歳限界説」は過去の話?

明確に過去の話になっているといっても、過言ではありません。

当然ながら、専門性の高い職種ほど、その傾向は強く、建設やITなど人材不足感の強い領域においては40代や50代でも転職支援事例は増えます。管理部門などの職域も、相対的に年齢を問わないケースが多いです。

一方で、営業職などで管理職などを求めるケースは、その分野の専門知識がないと、即時メンバーマネジメントを行う難易度が高く、相対的に採用判断基準は難易度が高い印象があります。


――40歳以上が転職する際におさえるべきポイントは?

ポイントは2つあると考えています。

1つ目は「転職をせざるを得ない状態になる前に、一度、行動を起こしてみる」。

焦りが生まれると選択肢が狭まってしまいます。転職意向がなくとも、情報収集してみたり、市場価値を高めるためにリスキリング(学び直し)をしてみたりと視野を広げてみると、現職への向き合い方も変わるでしょう。
 
2つ目は「働く上で最も重視したいものは何か考えてみる」。

年齢が上がるにつれて守りたいものが増えると、キャリアが凝り固まりやすくなります。「年収アップ」「本当にやりたいことへの挑戦」など、何でも構いません。今後のキャリアや人生において、何に重きを置くかを考え、選択することが、納得感のある転職に繋がるはずです。

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今回のレポートと取材で「転職35歳限界説」は過去の話で、40歳以上にも転職のチャンスは十分にあることが分かった。

そのうえで、40歳以上で転職を考えている人は、まず、2つのポイント「転職をせざるを得ない状態になる前に、一度、行動を起こしてみる」「働く上で最も重視したいものは何か考えてみる」を実践してみてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。