病院を受診する際に必要になる健康保険証。紙の保険証については2024年12月に廃止され(猶予期間として最長1年)、マイナンバーカードと一本化される予定だが、医療関係者などの間では懸念が広がっている。福岡の声を取材した。

マイナ保険証 厚労省でも低い利用率

マイナンバーカードを取得した人に最大2万円分のポイントを付与するなど、様々な特典を用意して保有率向上を目指してきた政府だが、2024年1月末時点の保有率は79.1%で、国民の5人に1人はまだ所持していない。

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この保有率のさらなる向上などを目的に政府が打ち出したのが、マイナンバーカードと紙の保険証を一本化した「マイナ保険証」の導入だ。
現在の健康保険証は2024年12月に原則、廃止する方針が決まっている。

しかし、「マイナ保険証は、登録はしているけど使ってはいない。やっぱりまだ不信感がある」(60代女性)、「メリットというよりも面倒くさい。顔認証したり、何か押したり。それよりも紙の保険証を出した方が早い」(80代女性)と、街の声はマイナ保険証に後ろ向きだ。

マイナ保険証については、実は国家公務員の利用率も4.36%と低く、2023年11月の時点で国民全体の4.33%と同水準であることが判明。さらに、マイナ保険証を所管する厚生労働省でも利用率は、4.88%にとどまっているのが現状なのだ。

名前や住所登録に誤り…多数のトラブル

「(利用率が)低すぎる。もっと率先して使って頂くように働きかける必要性を改めて認識した」(2月6日)と、武見敬三厚生労働相も利用率を上げるよう求めていく考えを示したが、マイナ保険証への一本化については、現場の医師からも強い反対の声が上がっている。

林外科医院 林裕章理事長:
少なくとも今の段階ではトラブルが多すぎる訳です。紙の保険証をなくすということは、これはまだ全然できる状態にはないと思います

福岡県内約2000の医療機関でアンケートをとった結果(2023年8月)、回答した285の医療機関の14%にあたる40の医療機関が、マイナ保険証を使った時の医療費の自己負担の割合が健康保険証と異なるトラブルがあったと回答した。

さらに、マイナ保険証に登録されている名前や住所に誤りがあったり、健康保険に加入しているのに「該当資格なし」と表示されたりするなどのトラブルも101件報告されたという。

林外科医院 林裕章理事長:
今、まだ5%しか使われていなくて、これだけトラブルがある。それが5%の20倍の100%になる訳です。紙の保険証がなくなるということは、そうなると大混乱どころじゃない

林外科医院では、受付に設置されたマイナ保険証を読み取るカードリーダーの下に大きなポスターを掲示している。そこには、「今まで通り保険証を持参してください」と書かれ、紙の保険証を忘れないよう呼びかけていた。

診察を受けに来た患者:
マイナンバーカードは早く作ったよ。だけど使う用事がないけん、なおしてる(しまっている)。紙の保険証をそのまま使えた方が良い

「現場をよく分かっていないのでは」

利用者のメリットが見えにくいマイナ保険証。病院側には、さらに不都合もある。

「発熱外来のためのプレハブです。熱がある人を診療します」と林裕章医師が案内してくれたのは、駐車場に建てられたプレハブ小屋だ。病院の駐車場で診療を受ける人は、今の段階ではマイナ保険証での受け付けができないのだ。

林外科医院 林裕章理事長:
マイナ保険証のカードリーダーは各医療機関に診療所の場合、1つ配布がありましたが、それは大体、受付の所に置いておかなくていけない。プレハブに来る人は受付を通ることができないので、マイナ保険証で受け付けができない。やっぱり政府の方々が現場のことをあまり良く分かっていないのではないかなと思います

トラブルが相次ぎ、国民の十分な理解も得られていない中、政府は2024年12月、予定通りにマイナ保険証への一本化に踏み切るのか?
マイナンバーカード取得は、そもそも国民の義務ではないのに、紙の保険証を廃止して国民を追い込むようなかたちになっている現状はいかがなものなのか?

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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