和歌山県白浜町で妻を溺れさせ殺害した罪に問われた夫の裁判で、二審でも「有罪」の判決が言い渡された。

【動画】溺死偽装し「妻を殺害」で有罪判決の夫 無罪を主張した控訴審で再び「有罪」の判決

 結婚式で幸せそうな表情を見せていた野田孝史被告(34)と妻の志帆さん。その2年後、和歌山県白浜町で夫婦でシュノーケリングをしていた際、野田被告がトイレに行っている間に志帆さん(当時28歳)が溺れ、2日後に搬送先の病院で死亡した。

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当初は事故と思われたが、事件の1カ月前から夫婦の間には離婚話があったことが明るみに出て、事件の疑いが浮上。

離婚話の原因は夫の不倫で、相手の女性は当時、妊娠中だった。 さらに志帆さんに複数の生命保険がかけられていたことや、野田被告が白浜に行く前日、「溺死に見せかける」などとインターネットで検索をしていたことから、野田被告に疑惑の目が向けられた。

決め手となった「胃から出てきた砂」

そして「決め手」となったのが「胃から出てきた砂」。志帆さんを治療した救命医が、治療中に胃の中から「砂が出てきた」と供述したのだ。

医師の供述:胃からチューブが詰まるぐらいの砂が引けるようになりました。今まで溺水患者を診てきた中で、これほど多くの砂が出てきたことはありませんでした。

その砂の量が37グラムほどと推定されたことから、一緒にいた野田被告が志帆さんを海底付近に押さえつけ溺れさせたことを裏付けるとして、逮捕・起訴された。

二審は「砂」の存在自体について調べ直す異例の展開

一審の和歌山地裁は、海底付近で押さえつけ、多量の砂を含む海水を飲ませ殺害したという検察側の主張を認め、懲役19年の判決を言い渡した。一方、弁護側は、シュノーケリング中に溺れた可能性が高いとし無罪を主張して控訴した。

二審で争点となったのが、胃の中の砂だ。救命医が見たという胃の中の砂は、廃棄されて残っておらず司法解剖でも、砂は胃を含む体のどこからも見つかっていなかった。二審では、3人の法医学者を含む4人の証人尋問が行われ、1審で有罪の決め手となった「砂」の存在自体について調べ直す異例の展開となった。

「なぜ亡くなったのか、知りたいのは僕です」

判決前、野田被告は拘置所で接見取材に応じ、「望む限り最良の妻でした」「不幸があった。その一声です。なぜ亡くなったのか、知りたいのは僕です。被害者家族と同じ立場です」と話していた。

「砂の量から他殺とした一審の認定は不合理だ」としながらも

大阪高裁 齋藤正人裁判長
大阪高裁 齋藤正人裁判長

そして、迎えた4日の判決。大阪高裁の齋藤正人裁判長は、「胃の中に砂があったことは認められるが、一審の砂の量の認定には無理がある」とし、砂の量から他殺とした一審の認定は不合理だとした。

しかし、「被告は不倫発覚後、被害者の妻にやり直したいなどと説得していた際も不倫相手と暮らすなど、妻への説得が本心でないことは明らかで、保険金契約、検索履歴などから被害者を溺死に見せかけた保険金目的の殺害計画をうかがっていたことは明らか」と指摘。「死亡状況は計画に完全に符合していて、他殺以外の偶然に起きたこととは考えられない」として一審の懲役19年の有罪判決を支持し野田被告の控訴を棄却した。

野田被告の弁護人は「上告を前提に本人と協議する」としている。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月4日放送)

関西テレビ
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