自民党の派閥による政治資金パーティーをめぐる裏金事件に関連し、清和政策研究会の塩谷立 座長が衆議院政治倫理審査会に出席した。しかし、自らの関与を否定するばかりで、真相究明とは程遠い結果に終わった。

裏金関与や私的流用を否定

2024年度の政府予算案の採決をめぐり、立憲民主党が衆議院予算委員会・小野寺五典 委員長の解任決議案を提出したことに伴い、約4時間遅れで始まった自民党・安倍派の塩谷立 座長に対する政治倫理審査会。

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塩谷座長は冒頭、「長年、清和研の幹部を務めてきたが、政治資金パーティーをめぐる問題には一切関与しておりません。東京地検特捜部が捜査を尽くした結果、立件の必要なしとの結論に至ったと承知している」と裏金事件への関与を明確に否定した。

安倍派では、各議員がパーティー券の販売ノルマを超えた分について、派閥の政治資金収支報告書に記載しないまま議員側にキックバックし、議員側も自身の収支報告書に収入として記載しないことが常態化していて、塩谷座長も受領したキックバックを収支報告書に記載していなかったが、「今回の一連の問題が発覚するまで一切関知していなかった」と釈明。その上で、受領したキックバックは「交通費や交際費など、すべて政治活動のための費用として全額適切に使用し、私的流用は一切ない」と強調した。

キックバック存廃に関する議論の経緯

塩谷座長によれば、キックバックは「二十数年前から始まったのではないかと思うが、正確には承知していない」という。

ただ、このキックバックに関して、2022年4月に当時の派閥会長である安倍晋三 元総理が廃止する方針を示したと言われている。

この点については塩谷座長も認めていて、「安倍会長がどういう言葉で言ったか記憶がないが、いわゆる『金の流れには不透明性がある』『現金での支給はやめた方がいい』というような話があって、還付(キックバック)はやめようということになったと記憶している」と口にした。

そうなると、安倍元総理がその時に不記載を認識した上でキックバックを廃止しようとしていたのではないかという疑問が浮かぶが、塩谷座長は「私だけでなく不記載のことを聞いた人は(その場に)1人もいないと思うし、その指示は受けていない。仮に具体的に不記載のことがあったら当然直していたと思う、その時点で。不記載について、それを改善しようとは話は残念ながらそこで出なかった。これは事実」と断言。そして、「しっかり事実を話している。ぜひ、それは理解してほしい」と語気を強めた。

ところが、派閥幹部の間でこうした議論がありながらも、実際には2022年7月に安倍元総理が凶弾に倒れて以降もキックバックを継続。であるならば、問題は誰が継続を“主導”したのかということだ。

塩谷座長は直後の8月に行われた派閥の会合の中でキックバックについて協議したことは認めながらも、「多くの人たちから『なくなっては困る』と。清和研をどうするかが大変な問題で、還付をどうするかということについて、困っている人がたくさんいるから『それではしょうがないかな』という、それくらいの話し合いの中で継続になったと私は理解している」と、最終決定を下した幹部について明言を避け、「8月に協議して以降は具体的に我々で決めたわけではない」と、にわかに信じがたい発言に終始。

また、会合ではキックバックの方法について議員個人の政治資金パーティー券を派閥が購入するアイデアも出たとされているが「私は誰が言ったか記憶がないが、そういったことがアイデアとして出されたことは記憶している」と話した。

モヤモヤ残った政倫審

この裏金問題をめぐっては、安倍派に所属する前防衛副大臣の宮澤博行 衆議院議員が、2023年12月に「『しゃべるな!』『しゃべるな!』これですよ」と派閥の中でかん口令が敷かれていたことを明言している。

派閥からのかん口令を明らかにした宮澤議員(2023年12月)
派閥からのかん口令を明らかにした宮澤議員(2023年12月)

しかし、このことを問われた塩谷座長は「宮澤議員に対してそのようなことを言ったことはない。宮澤議員に誰が言ったか聞きたいところではあるが、こちらからそういった指導をしたことはない」と否定。

結局、1時間あまりの審査で新たな事実が明らかにされることはなく、従来通りの話が繰り返された。

だが、過去の発言と整合性が取れない部分や事実に反する発言があったことも事実だ。

思えば安倍派の裏金事件は、まだ疑惑の段階だった際に塩谷座長がキックバックについて「そういう話はあったと思う」と言及したことで疑念が深まった。

事の重大性に気付いたのか、この発言はわずか数時間で「事実確認しておらず撤回したい」と翻したが、今回の政倫審で塩谷座長は「還付については政治資金を調達する方法としては良いことだと思っていた」「還付することについては、若手議員がパーティーを活用して政治資金を調達する方法としては良いことだと思っていた」などと繰り返し、以前からキックバックの存在を認識していたことを明らかに。当該の発言は「誰に(キックバックが)あったか確認してないので撤回した」と苦しい言い訳をした。

さらに、キックバックが「二十数年前から始まったのではないか」と推測する理由については、「私自身は1996年から7年間浪人した。派閥のパーティーが始まって『こういう仕組みでやるんだ』という時にはいなかったと思うし、私が戻ってきてそういうことになっていたという記憶で話をしている」と説明。

たしかに、塩谷座長は1996年の衆院選で北脇保之 氏(元浜松市長)に、2000年の衆院選で鈴木康友 氏(前浜松市長)に敗れ、比例復活も叶わなかったし、落選期間中にキックバックの仕組みが作られたことも事実なのかもしれない。

とはいえ、北脇氏の市長選立候補に伴い行われた1999年の補欠選挙では鈴木氏に勝利し、1年あまりの間、国政の舞台に戻っていて、その記憶まで失くしてしまったということはないだろう。

国民から厳しい目が向けられる中で

「国民感覚とはかけ離れた永田町の常識を反省し、実態を是正した上で政治資金のさらなる透明化を図ることが必要」

政倫審で与えられた弁明の機会に、このような主張をした塩谷座長だが、審査では本当に自らが知っていることを洗いざらい話したのだろうか。

自身を含む安倍派幹部が立件されなかったからといって幕引きを図ることなく、この言葉を体現できるよう汗をかくのか、国民は塩谷座長の今後の言動や行動に厳しい目を向けている。

(テレビ静岡)

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