東日本大震災の発生から13年。被災地の現状を知ってもらうため、仙台市の大学生が、誰でも楽しめるスマートフォンのゲームを制作した。舞台は被災した福島県の12市町村。ゲームには、自らの目で見て感じた思いが込められている。
よそ者の大学生が作ったゲーム
![中央にいるのが、主人公の「カクゾウ」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/700mw/img_bb33331c79822ee0eb828efb1578aecc175963.jpg)
主人公「カクゾウ」が任務を達成しながら、土地を開拓していくロールプレイングゲーム。その名も「12RPG」。
「開拓系RPGと呼んでいるんですけど、近いので言ったら『どうぶつの森』ですかね」と話すのは、ゲームを制作した東北大学工学部2年生の宮崎翔太郎さん(20)だ。
![東北大学工学部・宮崎翔太郎さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/5/700mw/img_45d5e9014ab2f69ba68f7f1a0e5bfaad152431.jpg)
山口県出身の宮崎さんは、「やっぱり“よそのこと”という感じが強かったです。ニュースやテレビを通してしか、情報を得ることができないような感じなので。本当、親近感が湧かないような感じでしたね」と話し、大学に入学するまで、東日本大震災を身近に感じたことはなかったという。
「何かできないか」浪江町来訪が契機に
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そんな宮崎さんに転機が訪れたのは2年前の夏。友人に誘われたことがきっかけで、初めて福島県浪江町を訪れた。
![丈六公園](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/700mw/img_b433d603f8a904e17710e6bf2b72d8eb306921.jpg)
宮崎さんは当時のことを「初めて来た時はやっぱり人がいないというのは感じましたね。建物は意外と多くあるんですけど、普通の田舎で人がいないのとはちょっと違って、奇妙な感じを覚えたというのはありますね」と振り返る。
13年前、東京電力福島第一原発の事故により、町内全域に避難指示が出された浪江町。2年後には居住制限区域や帰還困難区域などが指定され、町全域の2万1000人を超える町民が避難対象となった。現在も町内の8割が、帰還困難区域となっていて、避難指示が続いている。
![震災後の浪江町(提供:浪江町)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/6/700mw/img_d6a53b021ddcf865f389a852b7235720279986.jpg)
震災の爪痕を目の当たりにしたほか、現地の人からも話を聞いた宮崎さん。「自分に何かできないか」と考え、ゲーム制作をすることに。
目にした風景 被災地の今の姿を...
![請戸漁港の壁画](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/7/700mw/img_97fff5305d866618847274def4b96efc186167.jpg)
もう一つ決断に至った理由が。それは浪江町の請戸漁港、近くの防潮堤に描かれた壁画を見たことだ。その壁画は地元の小中学生や東北工科芸術大学の学生が2021年、漁港の復旧工事完了に合わせて描いたもの。
中には、宮崎さんの地元山口の特産物でもあるフグも描いてあった。町を訪問して目にした風景の数々。宮崎さんは、被災地の今の姿を伝えたいと思ったといいう。
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ゼロからのスタート 福島の12市町村を舞台に
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そのようにして始まったゲーム制作。だが、宮崎さんは最初からゲーム開発の知識があったわけではなかった。スクールに通ってプログラミングを習得。県内外の大学生などを誘って9人で分担し、2023年2月から制作を続けた。「12RPG」は一年が経った2月中旬にようやく完成。
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舞台は、震災で被災した福島県の12市町村。震災直後の描写は無く、復興した町の様子をメインに取り上げている。
また、ゲームには各自治体がシンボルとする花や木、鳥なども登場する。例えば浪江町だと、それぞれ町のシンボルの花・木・鳥の「コスモス」・「松」・「カモメ」を取り入れた。
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そして、主人公「カクゾウ」がパワーアップするため食べる花には、宮崎さんが福島で藍染や藍の種まきを体験した思い出から「藍」の花を選んだ。
![上・道の駅「なみえ」、下・ゲーム内の道の駅「なみえ」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/6/700mw/img_56a07f5bcad6e16ab20f211bba654300293573.jpg)
この他にも、宮崎さんのお気に入りの絵がある請戸漁港に、道の駅「なみえ」、町を一望できる丈六公園も登場。どれも全国へ発信したい、被災地の今の風景だ。
街に思いを馳せる時間に...届けたい人は
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「復興」と「未来への希望」が散りばめられたこのゲーム。一番届けたい人がいる。
宮崎さんは「被災して違う街に行かれた方々がいて、そういった人が少しでもこのゲームを見て『あぁ昔こんな街だったな』と思い出して、『ちょっとでも帰ってみようかな』という気持ちが芽生えたらうれしい」と笑顔で話した。
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(仙台放送)