佐藤正久元外務副大臣(自民党参院議員)と鈴木宗男元官房副長官(無所属・参院議員)は25日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、24日で丸2年を迎えたウクライナ戦争について意見を交わした。

この中で、佐藤氏は、北朝鮮がロシアに砲弾や火器を送り、ウクライナを「ミサイルの実験場」として使っているとして非難した。佐藤氏は、北朝鮮が日本海に向けて発射するしかなかった対地ミサイルについて、「実際命中したかどうか、その評価、判定、さらにその修正ができ、ウクライナでこういうデータを取れるのは(北朝鮮にとって)極めて大きい」と指摘した。

一方、ロシアのプーチン大統領が2月、米FOXニュース元司会者とのインタビューで、2022年3月に行われたトルコ・イスタンブールでの停戦交渉に繰り返し言及し、「停戦の合意にほぼ達していた」旨の発言をしたことについて、鈴木氏は「あのとき和平していれば、こういう状態にはならなかった」と述べ、ウクライナや西側諸国側に非があるとの認識を示した。

そのうえで、「ロシアは(領土を)どこまで取るという、勝利の表現はしていない。ロシアが和平を考えている一つの大きなメッセージだ」との見方を示した。

対する佐藤氏は「ロシアのもともとの目的はウクライナの属国化だ」として、プーチン大統領の発言について「情報戦の一環と見るべきだ」と話し、懐疑的な見方を示した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
(ロシアの反体制指導者)アレクセイ・ナワリヌイ氏の死を受けて、アメリカは妻のユリアさんと娘をサンフランシスコまで呼んで会談をしたり、追加の対ロ制裁を下したりしている。イギリスも追加の制裁を発表した。日本は「政府として重大な関心を持ち、注視する」というだけで明らかな態度を示していない。このコントラスト、温度差をどうみるか。

佐藤正久氏(元外務副大臣・自民党参院議員):
日本には情報がないというのが一番の理由だ。情報がなければ、制裁なんてなかなかできない。アメリカもナワリヌイ氏の死亡だけで制裁をしたというわけではなく、ウクライナ侵攻2年という全体像の中での制裁だ。日本も新たな追加制裁をいま検討中だ。対外情報という部分は日本は非常に弱い。情報のギブ・アンド・テークができず、なかなか情報が入ってこない。ただ、政治犯や政敵の人権は認められるべきで、管理責任という面ではプーチン政権に責任がある。プーチンの排除を主張してきた活動家のナワリヌイ氏が神経剤ノビチョクを盛られて暗殺未遂にあったり、いきなり捕まえられて刑務所に入れられて転々とさせられたりして、極寒の北極圏の刑務所で拷問を受けていたということに対しては人権重視の日本としてもっと強く言ったほうがいい。

松山キャスター:
ロシアへの制裁は、今回のナワリヌイ氏の死に関しての制裁だけではなく、これまで西側諸国などは何度も制裁を行ってきた。一方でロシア連邦統計局によると、ロシアの2023年の実質経済成長率は3.6%増だ。ロシアへの経済制裁は全く効いてないのか。

鈴木宗男氏(元官房副長官・参院議員):
ロシアは、(2014年の)クリミア(併合)の時からの経験があるから、確実に経済成長していくということだ。わたしは昨年モスクワに行って、欧米からの経済制裁に対抗するためのユーラシア統合の責任者で、プーチン大統領の顧問、セルゲイ・グラジエフ氏と会談した。彼は3%、4%、5%の成長が見込めるが、ロシアは堅実にやっていくと言って、余裕を持っていた。制裁をしても、油やガスをインドや中国が買う。いまはサウジアラビアが一番買っている。だから経済的にロシアは参ってない。去年5月、バイデン大統領が経済制裁をすれば、2カ月でロシアはギブアップだということを言ったが、そうなってない。アメリカはじめ西側の読みは甘かった。

松山キャスター:
西側の制裁がなかなか効かない。また、アメリカ議会などでの政治的対立で、ウクライナへの軍事的支援がしばらく行かないかもしれない状況になっている。ウクライナにとってはかなり難しい局面と見ていいか。

岡部芳彦氏(神戸学院大学教授):
(対ロシア)制裁を始めるとき、SWIFT(国際銀行間通信協会)から除外すると。
金融面での核兵器みたいなものだとして、金融ネットワークから除外すればかなり効くのではないかと言われたが、効かない。グローバル・サウスの国を中心に抜け穴があり、ロシアは支援が取れるのでどうしても強い。もう一つ言うと、(ロシア国内の)軍需産業が非常に好調だ。軍事ケインズ主義と言われるが、やはり景気がいいということになる。

松山キャスター:
ロシアの戦争継続の陰には北朝鮮がちらついている。北朝鮮にとってロシアにミサイルを供給するメリットは何か。

佐藤氏:
いま北朝鮮は軍事特需が起きていると言われている。工場を再稼働して砲弾や火器をロシアにどんどん送っている。その見返りにロシアから油や小麦等の食料、軍事技術も来る。さらにミサイルの実験場としてウクライナが使える。今までは日本海に向けてKN-23(弾道ミサイル)を撃っていたが、イスカンデルタイプのKN-23、24は本来地上目標に対して打つものなので、実際命中したかどうか、その評価、判定、ウクライナでこういうデータを取れるというのは、その修正をできるから極めて大きい。(世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社)ユーラシア・グループ(本社・米ニューヨーク市)が、イラン、ロシア、北朝鮮を新たな「ならず者国家」と指摘したが、対米を考えたときにロシアとイランと連携できることは、ロシアが中心にいることもあり、北朝鮮にとっては大きなメリットがある。
ロシアはしたたかで、ナワリヌイ氏の不審死の話もあるが、外交面でも内政面でも、いろんな面で「恐(おそ)ロシア」という部分が出てきている感じがある。

松山キャスター:
イランや北朝鮮がロシアをバックアップしているということだが。

鈴木氏:
北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを撃っているが、では、そのエンジンはもともとどこから来たか。ウクライナだ。武器の拡散はどこでもある。それをしっかりおさえなければいけない。佐藤さんがロシアを「ならず者国家」と言ったが...。

佐藤氏:
ユーラシア・グループがそう言った。

鈴木氏:
それをわれわれは軽々に使うべきではない。ユーラシア・グループが言ったから、日本も使うといっても、北方領土問題がある。平和条約交渉がある場合、どこかで折り合いをつけなければ、問題解決はできない。あるいはエネルギーの問題がある、水産物の問題がある、200カイリの問題がある。国益の観点からトータルで考えるのが政治だ。軽々な発言はしないほうがいい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー)
2月6日、アメリカのメディアのインタビューを受けた、ロシアのプーチン大統領は、2022年3月に行われたイスタンブールでの停戦交渉に繰り返し言及。「停戦の合意にほぼ達していた」などと発言を繰り返した。この停戦交渉で、ウクライナは中立化を宣言し、NATO(北大西洋条約機構)に加盟しないことや、ウクライナの安全をロシアを含む11カ国が保障することなどをウクライナが提案したという。

松山キャスター:
侵攻開始から1カ月後のこのイスタンブールでの交渉が、実は停戦に一番近づいた瞬間だったのではないか、という言い方が当時からされていた。プーチン大統領が今になって、アメリカの元FOXニュースのタッカー・カールソン氏のインタビューで、繰り返しこの停戦交渉に言及する背景についてどう考えるか。

佐藤氏:
これは情報戦だ。まさにいま厭戦(えんせん)気分とか、支援疲れがあるという勢力に打ち込むためにわざとこのインタビュアーに向けて昔の話を言った。ブチャの虐殺等もあって、おととし3月はロシアがきつい状況にあった時だ。いまは逆にロシアのほうが押している状況だ。昔の話をいま持ち出しても現実的ではない。情報戦の一環と見るべきだ。現状を考えると、プーチンがいま支配している領土をもらったからといって戦争をやめるかどうか。これはまったくわからない話だ。もともと目的はウクライナの属国化だ。当時の案が現実的かどうか、わたしは極めて懐疑的だ。

鈴木氏:
プーチン大統領がタッカー・カールソン氏とのインタビューで言ったことは紛れもない事実だ。あの時に和平していれば、こういう状態にならなかった。

いま、ウクライナ戦争で、ゼレンスキー大統領はクリミアを含めてすべてを奪還する、それが自分たちの停戦の考えだと言う。どう考えてもそれはありえない。ロシアはどこまで取るかという、勝利の表現はしていない。ロシアには余裕があるし、ロシアが和平を考えている一つの大きなメッセージだと思っている。

佐藤氏:
ゼレンスキー大統領の一つの失敗は、ハルキウやヘルソンで反抗がうまくいったということに鑑みて、2023年6月から今度は反攻に転じた。誰が考えても、当時はまだ十分な戦車も来ていないし、準備も含めて早いという状況、不十分な状態で反攻してしまった。結局、この1年ちょっと全然動かない状況の原因を作った。司令官を戦時中に交代するというのも普通は真逆で、こういう理由で交代するとしっかり言わなければ、国民にも厭戦気分が広まる。われわれの大統領はどういう形でこの戦争を、本当に押し返すまでやろうと思ってるのかと、そういう部分が本当に見えないと。ここはもう少し明確に言ったほうがいい。

いまゼレンスキー大統領にとって大事なのは、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスの首脳と膝詰めで会って、どこまであなたたちは俺に支援をしてくれるのかを確認することだ。どのくらい、いつまでという部分をしっかり見極めて、兵たんの限界が戦争の限界を決めるから、それを本当にやらないと(いけない)。これからこの戦争指導をどうするかという大きな絵を描くのはゼレンスキー大統領なのだから。

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