令和6年の天皇誕生日の一般参賀は、小雨の中行われた。今年は4年ぶりに抽選は行われず、約6000人が、開門前の正門に並び、午前9時半開門と同時に、皇居へと進んだ。

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宮内庁職員、皇宮警察に続き、背中に日の丸が染められた白い装束の数人が旗を持ちゆっくりと歩いて行った。

この人たちとは区別するように、皇宮警察に先導されながらそのほかの参賀者が傘を差して入門し、鉄橋を渡って行った。

陛下も悩まれた一般参賀

宮内庁の古参職員に聞いても、記憶にないという雨の一般参賀。

宮内庁では、2万人が入ってくることを想定して、ベランダ前にはテープでラインを描き、人と人との距離を取ろうとしたが、参賀者は傘を差していることもあり、想定した距離よりも幾分あけて、距離を取っているようだった。場内では、大声を出さないようにと場内アナウンスされたほか、モニターには「万歳等の大声を発することをお控え願います」と注意が出ていた。

天皇陛下は、能登半島地震により大きな被害が出ている中、誕生日とはいえ、お祝いを受けることに悩み続けてこられた。こうした思いは、宮内庁から発信され、各メディアでも伝えられていた。

お出まし直前に、雨の中で一般参賀者がとった行動とは

お出ましが近くなり、場内に宮内庁職員の案内の放送が流る。

このとき気がついたのだが、入場してきたときは開いていた傘が、言われた訳でもないのに、閉じられていた。

さらに、傘も透明なものが多いようだった。ここに来た人たちが、みんなベランダの天皇陛下や皇族方のお姿が見られるようにしているか、どれだけ周りの人に気を使っているのか、その気持ちが伝わってきた。

いつものように、ベランダの後ろの障子風の扉が開くのが見えた。天皇陛下、皇族方のお出ましだ。

宮殿から遠くに陣取った、旗を持った人たちから「天皇陛下、万歳」の声が上がった。しかし、その声は一部だけで、多くの人たちは小旗を振りお祝いの気持ちを示し、声を上げる人は広がらなかった。

お言葉では、「冷たい雨の降る厳しい寒さの中、誕生日にこのように来ていただき、皆さんから祝っていただくことを誠にありがたく思います」と、来てくれた人たちに感謝の気持ちを示したあと、能登半島地震の被災者へのお見舞いに触れられた。

宮殿前に集まった約1万人が、静かにお言葉を聞いていた。

3回の一般参賀で広がった温かな光景

2回目、3回目のお出ましの際にも、同じように参賀者は傘を閉じ、「誕生日おめでとうございます」という声は聞こえたが、大きな声を上げる人は少なく、小旗を振り陛下への祝意をたくさんの人たちが示していた。

3回目のお出ましが終わると、参賀の人たちからは拍手が起こった。

小雨で気温が低いこともあってか、皇居宮殿前に集まった参賀者は約1万3500人だったが、いつもとは違う光景の中に、集まった方々の温かさを感じ、そして、私は誇らしい気分にさせてもらった。
【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】

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橋本寿史
橋本寿史

フジテレビ報道局解説委員。
1983年にフジテレビに入社。最初に担当した番組は「3時のあなた」。
1999年に宮内庁担当となり、上皇ご夫妻(当時の天皇皇后両陛下)のオランダご訪問、
香淳皇后崩御、敬宮愛子さまご誕生などを取材。