アメリカでUFO目撃情報などの調査を行っている全米UFO報告センターには、2023年だけで「謎の複数の飛行物体を見た」など4000件以上の情報が寄せられた。

UFOはどこで最も目撃されているのか。アメリカメディアが過去20年以上の目撃情報の詳細を分析したところ、人口10万人あたりで最も多かったのは、西部ネバダ州リンカーン郡と判明した。そこにはUFOや宇宙人との関連があるとして度々取り上げられる米空軍施設「エリア51」があり、再びこの場所に注目が集まっている。

UFOをめぐる最新情報をまとめた。

「エリア51」に再び注目集まる

2023年に全米UFOセンターに報告されたUFOの目撃情報は4330件にのぼった。目撃された場所を地図上に落とし込んだ画像を見ると、東海岸と西海岸、五大湖周辺に多くの報告がなされていることがわかる。

過去のUFO目撃情報をまとめた地図(全米UFO報告センターより)
過去のUFO目撃情報をまとめた地図(全米UFO報告センターより)
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こうした情報をさらに詳しく分析したのが、ニュースサイト「アクシオス」だ。

2000年から2023年にかけての全米UFOセンターの報告をさらに詳しく分析したところ、10万人あたりの目撃件数では820.9件でネバダ州リンカーン郡がトップになったことが分かった。

記事の中で「UFOを見たければ行くべき場所」と書かれたこの地域には、UFOや宇宙人に関連した情報が多数出ている米空軍施設「エリア51」があるため、再びこの場所が注目を集めることになった。

米空軍の訓練施設などがある「エリア51」はUFO関連で知名度が高い(写真:米空軍)
米空軍の訓練施設などがある「エリア51」はUFO関連で知名度が高い(写真:米空軍)

UFOを巡ってはここ数年、市民レベルの関心を超え、「国家安全保障上の懸念」として連邦議会でも取り上げることが多くなっていて、民間や軍のパイロットからの証言も相次いでいる。

こうした状況から、全米UFO報告センターは2023年から報告された目撃情報の中から、重要な情報をハイライトとして発表するようになった。その理由について担当者はFNNの取材に対し「2023年の目撃情報に関して唯一言えることは、私たちはその年から目撃情報をより慎重に検討し始めたということだ」と答えている。

国防総省“UFO調査”最高責任者「情報発信に抵抗された」

議会や民間レベルで情報公開を求める動きが広がるなか、情報を出さない政府の隠蔽体質を批判した国防総省のOBの発言にも注目が集まっている。

その人物とは、国防総省でUFO情報を一元管理・分析するAARO(全領域異常対策室)の最高責任者を2023年12月まで務めたカークパトリック氏だ。

AARO(全領域異常対策室)の責任者だったカークパトリック氏
AARO(全領域異常対策室)の責任者だったカークパトリック氏

アメリカメディアのインタビューでカークパトリック氏は、正体不明の航空機や、その調査を行う政府の取り組みについて、国防総省が国民に十分に伝えていないと幹部に伝えていたことを明らかにした。さらに彼がメディアで情報を発信しようとした際には「常に内部の抵抗にあった」と語っている。

カークパトリック氏は、抵抗の背景について「UFO問題に取り巻く、陰謀論に巻き込まれることを懸念しているため」と説明した上で、黙っていること自体が問題を悪化させていると国防総省の体質を批判した。

国防総省はカークパトリック氏の意見に反論
国防総省はカークパトリック氏の意見に反論

この発言について国防総省は「省内の一般的な手続きは、公の場での活動には高官の許可を得ることだ。我々の知る限り、カークパトリック氏が要求したメディアへの出演はすべて承認された」と反論した。

議会証言と合致する国防総省への批判

連邦議会下院では去年7月、UFO公聴会が開催された。

その中で元軍人の参考人から、UFOの目撃情報や、「墜落したUFOから“人間ではない生物”を回収した」ことなどが告発され、公聴会は大きな注目を浴びた。

さらに内部告発者に対する「妨害」や「汚名を着せられる」など、国防総省の対応にも批判の声が挙がった。出席した議員からも、国防総省の調査に対する消極的な姿勢を批判する声が次々に出た。

共和党のバーチェット議員は、政府が議会の調査を妨害する「悪魔だ」と批判した
共和党のバーチェット議員は、政府が議会の調査を妨害する「悪魔だ」と批判した

カークパトリック氏は、このやりとりについて当時、SNSに「個人的な見解」として「侮辱的なもので、見過ごすことはできない」として、目撃情報などの発言を否定する書簡を発表している。

議会の「深刻な国家安全保障上の脅威」に沸き立つ

2月14日にはアメリカ議会下院情報特別委員会のターナー委員長が「深刻な国家安全保障上の脅威に関する情報を全議員に提供した」との声明を発表。新たなUFO情報ではないかとSNSを中心に注目が沸騰した。

この内容は翌日、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官が、ロシアによる宇宙への核兵器配備計画に関する情報だったことを明らかにし、UFO情報説は打ち消された。

ターナー委員長の声明によって、SNS上はUFO情報かと注目が集まった
ターナー委員長の声明によって、SNS上はUFO情報かと注目が集まった

奇しくもカークパトリック氏の言うように、不十分な情報が先行した形で、国民の間で様々な憶測が飛び交う事態となり、このときも情報発信のあり方が問われた。今後も、政府や議会による情報公開の在り方を巡って、国民世論が混乱する可能性がある。

まだ2024年は始まったばかりだ。UFOを巡る今後の展開がどうなっていくのか、新たな情報公開の動きなども含めて追っていく。
(FNNワシントン支局 中西孝介)

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中西孝介
中西孝介

FNNワシントン特派員
1984年静岡県生まれ。2010年から政治部で首相官邸、自民党、公明党などを担当。
清和政策研究会(安倍派)の担当を長く務め、FNN選挙本部事務局も担当。2016年~19年に与党担当キャップ。
政治取材は10年以上。東日本大震災の現地取材も行う。
2019年から「Live News days」「イット!」プログラムディレクター。「Live選挙サンデー2022」のプログラムディレクター。
2021年から現職。2024年米国大統領選挙、日米外交、米中対立、移民・治安問題を取材。安全保障問題として未確認飛行物体(UFO)に関連した取材も行っている。