成長と共に着られなくなった子ども服をどうしているだろうか?思い出が詰まった服はなかなか捨てられず、タンスの奥にしまい込んでいる人もいるかもしれない。

そんな人に嬉しいサービスが新たに誕生した。思い出の詰まった子ども服をオーダーメイドでひな人形の衣装にする「きおくひとえ」だ。

思い出が詰まった子ども服がひな人形の衣装にリメイク
思い出が詰まった子ども服がひな人形の衣装にリメイク
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社会課題解決型ビジネスを専門とするマーケティング会社「株式会社SIGNING」(東京・港区)と、創業100年の人形工房「左京」(静岡市)の共同事業で誕生した。

制作の流れ
制作の流れ

制作の流れは、まず使用する服を選び、そして職人と打ち合わせをしてこの服の使い方を決めていく。汚れをあえて残すなどの相談も含めた、思い出に寄り添いながらデザインを決定。職人により細部までこだわり抜かれた上質な“ひな人形の衣装”リメイクするという。

なお、実際に工房に行かなくても、LINEなどのオンラインツールを活用したやり取りでも発注は可能となっている。

職人が思い出に寄り添って制作
職人が思い出に寄り添って制作

ひな人形は、「お殿様」と「お姫様」の2体1組。顔は14種類から選べる。そして、5種類から選べる「台座」が1つの内容で、25万円(税込)となっている。

30組限定で2月20日から抽選販売の事前申込を開始。「きおくひとえ」の公式サイトで3月10日まで募集し、約4~6カ月での納品予定とのことだ。

ひな祭りを「家族で思い出を語り合う日」に

世界で1つだけのオリジナルのひな人形。来年にはなってしまうが、ひな祭りに向けて飾るのが楽しみになりそうだ。しかし、そもそもなぜ子ども服を「ひな人形」の衣装にリメイクすることにしたのだろうか?

まずは考案者である、株式会社SIGNINGのクリエイティブディレクター・青沼克哉さんに話を聞いた。


ーー「きおくひとえ」サービス誕生の経緯を教えて。

プロジェクトの発端は、自分が4歳の娘のためのひな人形を用意できていなかったことでした。罪悪感もあったのですが、心から「ほしい!」と思えるものに出会えておらず、夫婦それぞれの両親からもすすめられていたにもかかわらず購入に至っていませんでした。

そんな中で、「どんなひな人形だったら自分も欲しくなるか?」を自問自答しながら思いついたのが、「思い出の子ども服でつくるひな人形」でした。

そんなざっくりとした構想を、共に形にしてくれる人がいないかと探す中で見つかったのが、同じ世代、同じ静岡出身の望月さん(人形工房「左京」のひな人形職人)でした。2023年10月頃に、いきなりInstagramのダイレクトメッセージでアイデアをお伝えしたところ、面白がっていただき、一緒に具体化していきました。

「美しい」「かわいい」だけではないひな人形
「美しい」「かわいい」だけではないひな人形

ーー子ども服をひな人形に着せるというアイデアはどのように思いついた?

世の中には既に色んなタイプの素敵なひな人形がありますが、毎年飾りたくなるような親の衝動を突き動かされるようなものは少ないように感じました。

単純に「美しい」「かわいい」だけではなく、毎年のひな祭りを「家族で思い出を語り合う日」にしてくれるようなひな人形があったらどうか、といったことを考えた末に行き着いたのが、今回のアイデアでした。

子ども服をリメイク
子ども服をリメイク

ーー現在、どんな声が届いているの?

X上で、さまざまなポジティブ反応をいただいています。「できあがりを想像しただけで泣きそうになった」「このひな人形だったらほしい」といった声をいただけたのが、個人的には嬉しかったです。


ーーそのような声に対しては、どう思っている?

たくさんのポジティブなリアクションをいただく一方で、男の子向けのサービス展開を望まれる声も多く見受けられました。五月人形での展開についても、さっそく望月さんとも前向きに検討を始めているところです。

大切な思い出をひとつも余さずにカタチに

思い出を語り合う日になるひな人形をということで誕生したサービス。では、そんなひな人形の衣装を作る上で、子ども服から作ることでの難しさはあるのだろうか?

人形を制作する、人形工房「左京」の四代目ひな人形職人・望月琢矢さんにも話を聞いてみた。


ーーInstagramメッセージでアイデア案が届いたときはどう思った?

弊社は生地の色合わせ・着物の縫製から販売までを一気通貫して行っている雛人形工房です。一から制作ができる職人がいる工房だからこその強みを、最大限に活かせるサービスだと感じました。

また、初節句にひな人形を買わなかった・買いそびれてしまった方へ、再度アプローチができるというのは、これまでに無い考え方で、進んで実現するべき価値のあるサービスであると感じました。

世界に1つだけのオリジナル
世界に1つだけのオリジナル

ーー思い出の服を使うからこその、こだわりや気をつけている部分は?

ハサミを入れる前の職人同士の打ち合わせはかなり綿密に行います。担当者それぞれの視点から制作に問題がないことをすべて確認してから実際の制作に入っていくため、普段のダブルチェックの量を倍にも3倍にもして確認を行っています。

柄の見え方などにも職人の工夫がある
柄の見え方などにも職人の工夫がある

また、制作が始まってからも、服のロゴやワンポイントなどを、さらにどこかに忍ばせて使えないか・柄の見え方をどうしたらより感動的になるか、という「より良く・より綿密に」という考えが途切れることはなく、各職人からのアイデアで制作の方向を変えたり、追加の部品制作を行うなどの工夫を凝らしています。

依頼者に成り代わったような気持ちで子ども服に接することで、大切な思い出をひとつも余さずにカタチにしていくような段取りを組むように気をつけています。

唯一無二の「思い出の服」という素材
唯一無二の「思い出の服」という素材

ーー普段の作業と比べ、どんな難しさがある?

「思い出の服」という唯一無二の素材を使っての制作のため、失敗の許されないプレッシャーの中で、最初の下地込みからベテラン職人が手を入れて制作するようにしています。

また、お客様の「抽象的なイメージ」を、我々がうまく汲み取ってカタチにしていくことにも頭を使います。服の柄がひな人形のどこにどのように出るように設計していくか、色のイメージなど、完成形を何度もイメージしながら制作していく難しさはあります。

難易度が高いのはもちろんですが、私たち職人自身が普段味わえない新鮮なものづくりの楽しみを得られるのも、本サービスのものづくりならではなのかなと思います。

子ども服は1着からでも制作可能
子ども服は1着からでも制作可能

ーー1着を作るのに、必要な子ども服はどれくらい?

最大のパーツ(お殿様のメインの着物部分)でも、服を展開して平面上にしたとき60cm×60cm程度の面積があれば使用が可能です。その他のパーツですと40~50cm四方以上の面積があれば使用が可能です。

使用する服のサイズに制限はありません。服も最低1着からお受けできます。素材的に硬すぎ・柔らかすぎて使用が難しい場合は、打ち合わせ時にお伝えすることがあります。

汚れをあえて残して思い出を衣装に刻むこともできる
汚れをあえて残して思い出を衣装に刻むこともできる

ーー傷んでいる汚れている服でも大丈夫?

傷んでいる、汚れている服でも大丈夫です。あまりに劣化が激しくてほろほろと解けてきてしまうような場合は難しいと思いますが、基本的にはお客様との打合せ時に実物を見ながらの相談の中で使える・使えないを判断していきます。


ーーちなみに、現在の応募状況はどう?

事前申し込み開始2日の時点で、20件弱のお申し込みご応募を頂いております。ご応募時にもとても想いがこもったメッセージを頂いていて、一つ一つ大切に読ませていただいています。

制作の様子
制作の様子

どんな人におすすめのサービスなのかを伺ったところ、青沼さんは「子どもへの愛があふれて止まらない全ての親御さんに」と語り、望月さんは「お子さまへ一層の愛を伝えたい方へ」と話している。世界に1つだけのひな人形を通じて、思い出だけでなく、親から子へと愛情が伝えられるサービスだという。

思い出いっぱいの子ども服をどうしようか悩んでいるならば、「きおくひとえ」を活用するのもよさそうだ。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。