3年連続で転出超過1位の広島県。特に若い世代の東京への流出が深刻だ。女子学生から見ると、流出の理由として「地元にどのような企業があるのか知らない。やりたい仕事が見あたらない」といった声があがる。女性の流出の背景について取材した。

若い女性が活躍できる場を広島に…学生がイベント企画

先日、バレンタインデーをテーマに花を使ったイベントが広島市であった。主催したのは、安田女子大学公共経営学科の学生たち。

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安田女子大学 公共経営学科3年 佐々木愛香さん:
こういった若い学生、しかも女子大学生がイベントを企画運営することが、広島でも新しい挑戦やチャレンジができるという意味で、誰もがパイオニアになれるということを表現できたらと思っています。

学生たちは、今、若者の広島県外への流出問題に取り組んでいる。流出を防ぐためには若い世代、特に女性が、新しいことに挑戦できる環境が必要だという。

広島には、したい仕事がない

安田女子大学 公共経営学科3年 佐々木愛香さん:
特に若い女性が流出していると思いますが、大きく2つのパターンがあると思う。1つは都市部でしかできない仕事をしに、出ていくパターン。もう1つは広島で、したいことがないという消極的な要因から流出するパターン。

広島県の場合、転出する男女の割合は、ほぼ同じ。しかし、全国的には、転出超過した40エリアのうち、4分の3にあたる30のエリアで、女性が男性を上回る。なぜだろうか?専門家に聞いた。

地方の女性の仕事は“ママの延長”のようなものだけ

ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 天野馨南子さん:
仕事のバリエーションで比べると、男性よりはるかに女性のバリエーションが地方にはない。地方の人の話では、女性は“笑顔の仕事” 観光・宿泊・飲食業や介護・看護・保育なら、いくらでもあるという。ジェンダーレスと言われているのに、ママの延長みたいな仕事しか地方では用意されていない状況に、いまだになっているので、女性の流出が男性以上に止まらない。

この問題を広島の女子学生はどのように感じているのか?

安田女子大学 公共経営学科3年 佐々木愛香さん:
都市部の方が、選択肢が多いというのは事実だと思います。

安田女子大学 公共経営学科3年 満岡萌菜実さん:
暮らしやすいと、広島にずっと住んでいて思うので、魅力的だと思うが、福岡など近くの県を見ると新しいものがすごく多いので、そっちに魅力を感じることもある。

女性にとって、地方の魅力がなくなる中、その流れを加速させることがあった。

女性の雇用情報は東京の企業メイン

就労や労働条件の男女差を無くし、女性が活躍できる社会の実現を目指して「女性活躍推進法」が2016年に施行された。

ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 天野馨南子さん:
2016年に女性活躍推進法が施行されて、301人以上の労働者を雇用する企業は、女性活躍の行動計画を国に提出することが義務付けられた。それがネット上やポータルサイトで全て公開されたが、301人以上の労働者がいる企業は4割が東京

この法律は2022年に改正され、労働者数101人以上の企業に義務化。東京の企業を中心に女性にとって魅力的な情報が全国に分かりやすい形で発信された。

安田女子大学 公共経営学科3年 久保桃香さん:
私はずっと働きたいと思っているので、女性が活躍できる場をアピールしている企業というのは魅力だと感じます。

安田女子大学 公共経営学科3年 満岡萌菜実さん:
出産など、企業の支援については確認します。

安田女子大学 公共経営学科3年 佐々木愛香さん:
自分らしく輝ける場所にいきたいという思いは男女共通ですので、女性ということを考えたときに妊娠や出産や子育てなど、女性ならではの問題がたくさんあるので、そこに対してのケアが手厚いところに行きたいというのは正直な感想です。

この法律の施行が東京と地方の情報格差を広げることになったと専門家は指摘する。

ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 天野馨南子さん:
300人以下の企業も、行動計画を出していいんですが、努力義務と国が配慮したことに甘えてしまった。東京の企業からばかり行動計画が出てくる。

「広島にどのような会社があるか知らない」

就職活動において情報の不足は、企業と学生ともに大きなマイナスだ。

安田女子大学 公共経営学科3年 佐々木愛香さん:
自分は広島に21年間住んでいますが、広島の企業の名前を見かけたり、どのような会社があるのかを全く知らないので、情報社会の中で、情報が自分たちの手元にないことが問題意識としてある。

2023年、東京都の転入超過は女性が男性を6,000人近く上回った。地方から若い女性が流出することは単に労働力の問題だけでなく、出生率にも関わる。

ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 天野馨南子さん:
広島がどんどん若い人口をこれだけ減らしてしまうと、社会保障もどうするのかと思うし、これだけ就職による転出がはっきりしていて、若い女性の社会減が起きれば、出生数の大激減につながるのは見えている。

地域の企業が女性の雇用に本腰をいれないと解決しない

コメンテーター JICA中国 新川美佐絵さん:(青年海外協力隊など経験、SDGsの啓発活動を行う)
情報不足だけが理由だとは思えない。それぞれの企業が本当に若い女性を採用したいと思っているのか、若い女性を採用したら当然、育休、産休、介護っていうところまであるわけで、そこまで腹をくくって採用したいと思っているのかというところが疑問だ。専門家も触れていた、女性の「笑顔を求められる職業」は、業務によっては社会的意義はあるが、すごく賃金が安かったりする。そういう仕事しか用意できないという構造的な問題もあるのかなと思う。

働き方改革やコロナ禍で、リモートでの就業を認める企業が増えた。地方でも女性が子育てをしながら、柔軟な働き方ができる環境整備が求められている。

(テレビ新広島)

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