FNNの2月の世論調査で、岸田内閣の支持率は27.6%、1月より5.2ポイント急落し、内閣の“危険水域”と言われる支持率3割を割り込む“危機”が4カ月連続となった(2月17、18日、全国の18歳以上の男女を対象、電話世論調査)。

岸田首相の施政方針演説 1月30日
岸田首相の施政方針演説 1月30日
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同じく、自民党支持率も急落、派閥パーティー資金問題が表面化する前の昨秋まで3割台を維持していた自民党支持率は、今回2.3ポイント下がり、24.8%、岸田政権で過去最低で、こちらも4カ月連続して2割台にとどまった。

内閣と自民党の支持率が初の「逆転」 岩盤支持層が岸田政権を見限りか

派閥の裏金問題と盛山文科相の旧統一教会問題のWパンチを受ける形で、岸田内閣の支持率は22.4%、不支持は72.5%と、再び7割台となった。自民党支持率は24.8%で、裏金問題の“本丸“自民党にも厳しい意見が続いている。

ここで注目の結果は、内閣支持率が自民党支持率を初めて下回った点にある。

岸田政権を「支持する」と答えた人に、世論調査で支持する理由を聞いたところ、「他に良い人がいない」53.9%、「自民党中心の内閣だから」20.9%が次いで多い答えとなった。

この結果から、自民党支持層は、岸田総理・総裁について、消極的ながら支持している、または自民党政権であることが支持する理由ということがわかる。この状況の中で、政権支持率が、自民党支持率を下回ったことから「自民党の岩盤支持層が岸田政権を見限った」ということが言える結果となった。

【岸田内閣を支持する理由】
他に良い人がいないから     53.9%
自民党中心の内閣だから     20.9%
実行力に期待できるから     10.5%
岸田総理の人柄が信頼できるから  9.1%
政策がよいから          4.1%

 “不記載議員”に国会説明要求9割 岸田首相「確定申告」お願いに批判 

派閥の裏金問題をめぐって自民党は2月15日に“不記載議員”の聞き取り調査を発表した。

しかし公表された調査結果は匿名、さらにキックバックの使い道についても15項目の概要にとどまり、金額など詳細は公表されず、説明責任をはたしたとの評価は広がっていない。

不記載議員が国会の政治倫理審査会で説明するべきかどうか質問したところ「説明するべき」が89.0%、「説明する必要はない」は9.2%となった。世論調査で賛否や是非を質問する中で、9割の有権者が同じ回答となるケースは少なく、自民党の報告書に対する説明不足、不記載議員の説明を求める強い世論がうかがえる。

“不記載議員”が政倫審で説明【不記載議員の政倫審での説明】
説明するべき    89.0%
説明する必要はない 9.2%

自民党調査の発表が、確定申告がスタートする時期と重なった中、岸田首相が国会で「適切な納税」を呼びかけたことに、街頭インタビューなどでも批判の声が上がった。自民党のキックバックの不記載は、報告書によると5年間で5億円8千万円近くに上り、収支報告書の訂正が行われた。これに対し、野党は、“裏金所得”を報告書の訂正で済ませる対応は、「脱税だ」「税金一揆が起きる」と国会で追及している。

岸田首相の「適切な納税」呼びかけに反発する声も
岸田首相の「適切な納税」呼びかけに反発する声も

世論調査では、有権者は国会説明にとどまらず、処分と、再発防止について求めている考えを明らかになった。自民党の、不記載議員への対応については「不記載があった全ての議員を処分すべき」が55.2%、「派閥の幹部議員を処分するべき」が34.4%、「処分の必要はない」は7.7%で、何らかの処分を求める回答が9割という高い割合となった。

【不記載議員への自民党の処分】
不記載があった全ての議員を処分するべき  55.2%
派閥の幹部議員を処分するべき       34.4%
処分の必要はない             7.7%

再発防止については、罰則の強化、ルールの厳格化を求める声が強い。政治資金規正法の改正として、政治資金について不正な会計処理があった場合、会計責任者に加え、国会議員の連帯責任も問う「連座制」について「導入すべき」が85.6%、「導入する必要はない」が12.1%となった。

【不正な会計処理があった場合の連座制の導入】
導入するべき    85.6%
導入する必要はない 12.1%

また、政党から議員個人に渡される「政策活動費」については「廃止するべき」が19.2%、「使途の報告の義務化」が76.1%、「今のままで良い」は4.3%だった

【「政策活動費」のあり方】
廃止するべき     19.2%
使途の報告の義務化  76.1%
今のままで良い    4.3%

裏金問題に加えて、盛山文科相の旧統一教会との関わりがWパンチ

盛山文科相は、旧統一教会の解散命令請求を所管する文科省のトップながら、教団の友好団体と2021年の選挙前に関わりがあったことが判明、その説明をめぐって「覚えていない」を連発し、説明責任が果たされていないとの評価が広がっている。

2月には旧統一教会に対する解散命令の審理を控える中、岸田首相は盛山大臣を続投させる意向を示し、野党は辞任を求めている。世論調査で質問したところ「辞任にするべき」が72.6%、「辞任の必要はない」が20.1%となった。

調査後の19日になって、野党は、盛山文科相への不信任案を提出し、国会の予算審議が停滞する事態となった、岸田首相は即座に「文科省としての職責を全うしている」と述べ更迭論を退けた。ただし、今後も政権支持や予算成立への影響など複雑な判断が今後も迫られることになる。

岸田政権「すぐ交代」論上昇

低迷する岸田政権だが、いまのところ岸田交代論は表立つ動きになっていない。岸田首相の周辺も「脱派閥をやりきらなければならない」と道半ばの派閥改革を続ける意欲だ。世論調査で、いつまで岸田首相に総理大臣を続けて欲しいかを聞いたところ「すぐに交代して欲しい」27.8%、「9月の自民党総裁任期まで」が26.8%、「3月末前後の来年度予算成立まで」21.8%、「国会が終わる6月頃まで」15.2%、「9月意向も続けて欲しい」5.8%となった。

岸田交代論は表だっていないが…
岸田交代論は表だっていないが…

年度末までに交代を望む声が5割となった。この数字を分析するには、1月にも同じ質問をした結果と比べると、「岸田総理にとって厳しさが増している状況」だと言える。

1月の質問では、最も多かったのが「9月の自民党総裁任期まで」29.3%と秋までの岸田首相の続投の声が最も多かった。一方で、「すぐに交代して欲しい」「3月末まで」との回答は合わせて42%にとどまっていた。先月に比べ、岸田首相は交代するべきだとの時期が早まっている結果となった。

世論の目が厳しくなっても、永田町では、岸田交代論が表立たない。理由の一つについては、自民党内からの「次の総理とか言ってる余裕は今の自民党にない」という声が象徴するように、派閥解消は道半ば、政治資金をめぐる問題にも道筋が見えない中、火中の栗を拾う後継候補がいないという現状もある。

さらに4月28日には、キックバック問題で自民議員が辞職した長崎3区、区長選をめぐる買収で自民議員が辞職した東京15区、議員死去に伴う島根1区の3つの補欠選挙を控えていて、自民党にとっては「4月の補欠選挙は厳しい」という状況にある。後継候補が様子見を続けるこれらの要因で、消極的な理由から当面は“岸田続投“の状況が続いているといえる。

裏を返せば、5月以降は、自民党総裁選が秋に控える中、続投を目指す岸田首相に対し、ポスト岸田を探る動きが活発化することが予想される。

ポスト岸田“麻生効果”の上川外相がトップ3

こうした中、次の総理大臣にふさわしい人の調査でも、2月の調査でこれまでと違う動きも見られ始めた。

最も多かったのは「石破元幹事長」21.2%、続いて「小泉元環境相」12.9%、順番こそ従来通りとなったが、石破氏は1月の20.3%から約1ポイント支持が増えた一方、小泉氏は2ポイント減少。石破氏の“独走”の色合いが強まっている。また、従来の「小石河」の構図に割って入り、初めて3番手に入ったのは「上川外相」9.8%。「岸田首相」は2.1%で1月に続いて2月調査でも7番手にとどまった。

【次の総理にふさわしい人】(カッコ内は1月)
石破茂         21.2%(20.3%) 
小泉進次郎     12.9%(15.0%)  
上川陽子     9.8%(5.1%)
河野太郎       8.4%(9.2%) 
菅義偉         5.8%(6.5%)  
高市早苗       4.0%(4.7%)  
岸田文雄       2.1%(2.3%)  
野田聖子       1.6%(0.6%)  
泉健太         1.1%(1.3%)  
林芳正         1.0%(2.0%)  
萩生田光一     0.5%(0.1%)  
茂木敏充       0.3%(1.2%)  
西村康稔        0.2%(0.2%)  
馬場伸幸        0.0%(0.1%)  
この中にいない    26.0%(24.5%)

石破氏、小泉氏と定番の顔ぶれに、中位に沈む岸田首相というトレンドが続く中、上川外相の躍進に注目が高まっている。上川外相の注目が高まったのは、麻生副総裁の「おばさんやるね、美しい方とはいわんけれども」といった発言だ、見た目や年齢に関する発言として、麻生副総裁が「不適切だった」として撤回したいきさつも含めて、上川外相が注目を浴びた。

麻生副総裁・上川外相
麻生副総裁・上川外相

ただし、上川総裁候補が、永田町でも浮上する背景はこれだけではない。ある自民党議員は「上川さんは、汚れていない、色がついていない」と上川外相を評価する。石破氏、河野氏らは、すでに総裁選に挑戦経験があり、小泉氏は総裁選に立候補したことはないものの、立候補にはまだ踏み切らないとの見方がもっぱらだ。

小泉氏・石破氏・河野氏のいわゆる「小石河」
小泉氏・石破氏・河野氏のいわゆる「小石河」

新たな総裁候補の有資格者が、いまの自民党にいないという現状も、上川総裁候補への待望論が上がる背景だ。

ただし、この自民党議員はこうも言う「上川さんは無害だ」。昔から、自民党で、ささやかれるのが「総理と神輿は軽い方が良い」、という言葉。派閥解消の動きが進み、議員の数を表だって動かすと派閥批判にさらされかねない中、御しやすく党の顔にできる候補という思惑が、上川候補浮上の背景にあるということも言える。

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。