見附市Facebookに掲載された漫画が話題

22日、大阪府や愛知県、埼玉県などで新規感染者の最多を更新するなど、再び、全国で感染が拡大しつつある新型コロナウイルス。

一方で、“感染者ゼロ”を維持し続けている自治体にも葛藤がある。以前編集部でも、全国で唯一ゼロの県、岩手県におけるプレッシャーを紹介した。

(参考記事:「絶対に帰るな」帰省を相談した父の返答が話題…岩手県担当者語る“感染者ゼロ”ゆえのプレッシャー

そして今、“感染者ゼロ”を維持し続けている市区町村の一つである、人口約4万人の「新潟県見附市」の公式Facebookに掲載された漫画「安心して感染したい」に注目が集まっている。
 

漫画を描いたのは、見附市公式レポーターの村上徹さん。

見附市公式レポーターとは、見附市が起用した市民レポーターのことで、村上さんもその1人。自ら収集した見附市に関する情報を、漫画というかたちで定期的に投稿しているという。

「安心して感染したい」

話題になっている漫画「安心して感染したい」には、まず、市民と思われる4人の“声”が描かれている。

「狭い町で噂になるから 一人目の感染者にだけは絶対になりたくないわ~」
「感染したって分かったら この町ん中ですぐに村八分にされんぞ~」
「感染なんかしたら『あの人!』って、後ろ指さされちゃう もう町中どこでも」
「周りから陰口叩かれて この町に住めなくなる」


そのうえで、作者の感想が綴られている。

「誰もが感染する可能性がある中で、こんな声を聞くと、噂するのも 村八分にするのも 後ろ指さすのも 陰口を叩くのもウイルスじゃない。この、『ひと』なんだよなぁ と思う。見附人として互いを思い合う温かい『ひと』でありたいと願う」

さらに村上さんは、漫画にコメントする形で「明日、自分が感染していないと自信を持って言える人は一人もいないからこそ互いを想い合う空気をまずは自分から創って行きたいと思います」などと綴っている。

この漫画に対し、「よく言ってくれた」「ずっと言いたかった」などと、代弁者として評価する声が寄せられているのだという。

コロナ禍での本当の気持ちを代弁してくれたとして評価する声があがっている、この漫画。どのような思いがあって描いたのか?

漫画の作者で見附市公式レポーターの村上徹さんに話を聞いた。

怖いのは“感染”ではなく“ひとの反応”

――どのような思いがあって、この漫画を描いた?

私は、広告デザインの傍ら、見附市にある「まちの駅ネーブルみつけ」(=行政サービス、市民活動の支援、市民の憩いと交流の場など、様々な機能や役割を担う複合施設)の駅長を務めています。

ここでは、様々な世代の方と交流があるのですが、その中でよく耳にするのが漫画の冒頭4コマで描いた“声”でした。彼らの“声”に理解はできるものの、「どうしてそれを口にするのか?」という疑問があったのです。

そのような疑問を抱えながら、ある時、自分が怖がっているのは“感染”ではなく、自分の感染を知った“ひとの反応”だと気付きました。

感染しない保証がない中、私たちは大量の情報に右往左往する臆病者同士なのに、その臆病者同士がお互いを怖がっていることが、ひどく滑稽に思えたのです。

この気付きをそのまま漫画にすると、一方通行になると思い、あえて、「自分たちが臆病者同士」というところにまでは踏み込まず、「怖いのはひと」という表現にとどめ、宙ぶらりんな漫画に仕上げました。

この漫画を読んだ方が「怖いのはひと」から、もう一歩踏み込んで考え、「自分もひと」と気付いてもらえたら…といった思いが込められています。

「よく言ってくれた」という声が寄せられている

――見附市で感染者が出ていないこと、村上さんもプレッシャーに感じている?

漫画を実名で発表したことによって、今後の自分の考え方と行動に、より責任が伴うとは感じています。実際、この週末に横浜から帰ってくる予定だった妹家族には「延期してほしい」とお願いしました。


――市民の方からはどのような感想が寄せられている?

「よく言ってくれた」「ずっと言いたかった」と、代弁者として評価してくれる方が多いです。

最も嬉しかったのは、仕事部屋でつぶやくように描いた作品が、多くの人にとって「考えるきっかけ」「自分に問いかけるチャンス」になったことです。

感染者第1号捜しにならないために必要な対策は?

――1人目の感染者が出ても、“犯人捜し”にならないためにはどのような対策が必要だと思う?

未知の恐怖に対して、“ひと”は過剰な攻撃を行ってしまいがちですが、その攻撃の対象は私たち自身、つまり“ひと”では決してないことをはっきり認識することが第一だと思います。

もう一つ言えることは、この漫画を“見附市の気持ち”として、全国に周知徹底することだと思います。この漫画に描いたことは、見附市内だけで起きていることではない、地方都市に限ったことでもない、と感じています。

つまり、「コロナ“あるある”漫画」なんです。

この“あるある”を人口約4万人の地方都市の行政が発信することで、“臆病者同士が一緒に恐がる事例”を全国に示すことができるかもしれません。

この漫画にアンチの意見が一つも寄せられていないということは、漫画に出てくる4人の“声”にも、私自身が発した「温かい『ひと』でありたい」という願いにも共感してくれている人が、たくさんいることの証拠だと思います。

「ひとがひとを怖がるのはばかばかしい」という真っ当な考えが波及することを、強く願っています。
 

見附市公式Facebook

見附市がとっている対策は?

続いて、もしも感染者第1号が出た場合に備え、市としては何か対策は考えているのか? 新潟県見附市の担当者にも話を聞いた。

――感染者を出さないためにどのような対策をとっている?

一般的な対策となりますが、国や県から示されている感染拡大防止策(3密の回避、新しい生活様式への対応など)について、市民の皆様に市の広報誌などを通じて、定期的に協力をお願いしています。


――感染者が出ていないことを市民の皆さんはプレッシャーに感じている?

私の知る限りでは、市に直接プレッシャーを感じているというような声は届いておりません。しかし、村上徹さんの漫画を読む限りでは、感じている方もいらっしゃるのではないかと推測されます。


――1人目が出た場合、“犯人捜し”にならないために何か対策は考えている?

これをやるということを決めているわけではありませんが、そのような動きにつながらないよう、市民の皆さまへの情報発信をしていく必要があるのではないかと考えております。


――感染者が出た場合の対策は考えている?

新潟県からの情報をもとに、一時的に公共施設を閉鎖するなどの対策をとっていくことになるかと思います。


――「Go Toトラベル」の開始と4連休で県またぎの移動が促進される中、感染者を出さないための対策は?

「Go Toトラベル」に合わせての対策は行っていませんが、引き続き、国や県が示す感染拡大防止策について、市民の皆さまに協力をお願いしていきたいと考えております。

7月22日からは「Go Toトラベル」、23日からは4連休が始まり、県またぎの移動が促進。それに伴い、感染のリスクも高まる。実際に22日、東京から戻ってきた新潟市の男性が新型コロナウイルスに感染したことを確認している。

感染対策を徹底していたとしても、感染する可能性は否定できない。
それだけに、漫画を描いた村上さんが見附市の公式Facebookに綴っているように、「明日、自分が感染していないと自信を持って言える人は一人もいないからこそ、互いを想い合う空気をつくる」ことが重要なのだろう。
 

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