ホテルに宿泊しながら出産後のママが心と体のサポートを受けられる「宿泊型の産後ケア」。アクセスも便利な札幌駅近くのホテルで行われている。
自身も産後うつを体験したママが願う、親子の安心のカタチだ。
ママの不安に寄り添う”産後ケア”
2023年11月、札幌のホテルで行われた宿泊型の産後ケア。ホテルの部屋で助産師が24時間赤ちゃんを預かり、ママは自分の時間を自由に過ごせる。
「久しぶりにゆっくりできて心の余裕ができた」(参加したママ)
企画したのは、2歳の女の子を育てる、高橋奈美さん。

自身も産後うつを経験したことから、こうした場所の必要性を実感したという。
「ママは一人じゃない。頼れるところがあるのを発信して受け皿にしたい」(産前産後ケアホテルCocokara 高橋奈美 代表)
動き出したのは2022年10月。
その後、ホテルを利用した産後ケアを常設したいと活動を続けてきた。
「歴史あるホテルでできるということでうれしい」(高橋さん)
札幌駅近くのホテルで開催

札幌駅近くのセンチュリーロイヤルホテル。アクセスにも便利なここを舞台に、2泊3日の産後ケアプランを実施することになった。
2024年5月での閉館が決まっているが、開業して約50年、地域への恩返しとしてホテルを活用してもらいたいと考えた。
「(アクセスが)いい場所で、宿泊している間に札幌駅でショッピングなどの楽しみ方もできるの」(高橋さん)
札幌中心部のホテルで始まる産後ケア。
ママたちはどのように過ごしたのだろうか?
「育児に悩むママの選択肢に…」
1月30日から2泊3日で札幌中心部のホテルで行われた、宿泊型の産後ケア。参加した石松萌さんは3歳の女の子と4か月の赤ちゃんを育てている。

「夜あまり寝られてないですか?」(助産師)
「寝たい、とにかく寝たい」(34歳の石松萌さん)
2人の育児に追われる石松さん。
今回の目的は、久しぶりの休息を取ること。
助産師はお母さんの不安にも向き合う。
「(ミルクを)どれだけ飲めているかわからないからそれが心配で」(石松さん)
「心配になりますよね、おそらくほぼ母乳だけなのでしっかり飲めていると思う。数字見ると安心できると思うので、一緒に後でやっていきましょう」(助産師)
2人の育児に追われ久しぶりの休息

不安を抱えたお母さんが孤立しないよう、そっとプロたちが寄り添う。
チェックイン直後から赤ちゃんはベビールームへ。初めから預かることで、お母さんが気兼ねなくその後を過ごせるようにするねらいだ。

「ママに送ってあげよう。出来るだけ様子を伝えて安心して外でも過ごせるようにできたら」(助産師)
離れて過ごすママにはこまめに赤ちゃんの様子を写真や動画で送ります。
「おかえり」
夕方、仕事を終えたパパと保育園帰りの長女もホテルに到着した。
「弟いない」(長女)
「久しぶりだよね、3人だけなの」(ママ)
「静かだね」(パパ)
「そうだよね、それ一番思った。常に泣いてるから」(ママ)
長女とゆっくり過ごす時間も大切に

弟が生まれてから我慢させてしまうことが増えていた長女とゆっくり過ごすことも、今回の目的の一つだ。
「弟がいると小さい声で話してっていうこと多いよね。きょうは大きい声でしゃべっても大丈夫だからね」(ママ)
「ママー!」(長女)
久しぶりにパパとママをひとり占めできた。
朝、夫と長女を送り出した石松さん。
お昼は部屋で1人ランチ。

「ご飯のこと考えなくていいのが助かる」(34歳の石松萌さん)
Q:一人でご飯食べるのは?
「いつ振りかわからない。すごく静かすぎてどうしようって感じ」
ママは自分の時間を楽しんだり、外出をしたりして自由に過ごす。
「子どもを迎えに行って一緒に映画を見に行こうと思います。荷物が少ない。抱っこ紐やベビーカー持たなくていいのがすごくうれしい」(石松さん)
この日は長女と2人で映画と温泉にいった。石松さんにとって、3年半ぶりの映画だった。
家族の時間を大切に 親子の安心のカタチ

2泊3日、久しぶりに育児から離れて過ごした石松さんは。
「(長女と)2人の時間では全部この子だけに時間を使えて、そういう時間大事だと思った」
「精神的にゆったりできたというのが一番大きい。また子育てに気持ちが向き合えるかなと思います」(石松さんの夫)
家族みんなにとって必要な時間となった。

「本当にお世話になりました。久しぶりに会うと何倍もかわいく感じるね。きょうからまたよろしくね」(石松さん)
「印象的だったのがママの笑顔。(ママが)安心している様子を見て何か役に立ちたという気持ちになっている」(センチュリーロイヤルホテル 蝦名訓さん)
「産後ケアの認知度も低いし、その受け皿がまだ札幌には少ない現状がある。新しい形で産後ケアをスタートできたのはすごく意義があることだと思う」(高橋さん)
家族が笑顔になるホテルでの産後ケア。育児に悩むママたちの選択肢になるよう、高橋さんの活動は続く。