休日や平日の夕方から地下鉄大通駅の休憩スペースで過ごす若者たち。

なぜここに集まるのか。

声に耳を傾け続けると生きづらさや孤独が見えてきた。

“地下広場”に集う少年少女

2024年1月、私たちのもとに1通の手紙が届いた。

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差出人は札幌市の20歳、優人(仮名)。

手紙には子どもの頃からの家庭での過酷な体験が綴られていた。

「(母親から)なぐる、ける、たたく」

「友達と放課後遊んだ覚えはない」

児童相談所に保護され施設に入所。

中学を卒業してから働き始め、18歳ごろから地下鉄大通駅の休憩スペースで過ごすようになった。

集まっていたのは同じような背景の若者。

提供:視聴者
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そして、社会に居場所がない大人たちだった。

「複雑な環境で育った人が多く集まってるなと感じた」

「3~4人ぐらいのおっちゃんらと酒飲んで」

「お金がなくても酒やご飯を買ってもらえた」

失われた“居場所”

ようやく見つけた居場所は相次ぐトラブルで失われた。

2023年4月、若者たちとトラブルになった男がなたを振り回し、逮捕された。

提供:視聴者
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休憩スペースは一時閉鎖された。

居場所がなくなった優人は24時間営業のゲームセンターなどで過ごすことになった。

そして、休憩スペースで出会った少女らと一緒に30代の男性の財布を置き引きしたとして窃盗の容疑で逮捕された。

「いまは色々考えすぎて壊れそう」

「1番はやっぱり、後悔」

「私は諦められた側」 様々な家庭環境

「(2023年12月から)寒くなってきて今回は特に若い人たちが集まっていると報告を受けている」(札幌市 秋元克広 市長)

冬、再び若者が大通駅の休憩スペースに集まるようになった。

年齢層はさらに若くなっているという。

「めっちゃ幅広いです。小学4年生から19歳、20歳まで。小学生もいます」

「家庭環境が色々ある子。私は諦められた側なんです」

2月29日、大阪から田村健一弁護士が大通駅にやってきた。

若者が集まる東京都・歌舞伎町の「トー横」や大阪府・道頓堀の「グリ下」などで少年少女の支援を行ってきた。

提供:田村健一 弁護士
提供:田村健一 弁護士

「利用しようとする大人がいて、小学生や中学生の売春だったり薬を渡すような大人がいたりとかで、東京大阪で大きな問題になっている。札幌の現状がどうなってるのかしっかり自分の目で見たい」(田村健一 弁護士)

提供:田村健一 弁護士
提供:田村健一 弁護士

田村弁護士が札幌を訪れたのは2023年の騒動後に続いて2度目だ。

寄り添う大人もいることを伝えたいという。

「この活動してて、良い大人っておんねんなと言われることがある」(田村弁護士)

「親、学校の先生が良い大人じゃなかった場合、社会全部が良い大人じゃないっていう風に思って当然。その思い込みをどんと変えるのが、私の活動の大事なポイント」(田村弁護士)

必要な支援とは

どういった支援が必要なのか、専門家に聞いた。

「経済的にゆとりのない家庭や学校で不全感を多く抱えてしまう子どもが適切とは言えない形で外に出たりするので、そういう子どもたちだけじゃなくて、(他にも)不登校の子とか、親が夜働いていて家に子どもが一人でいるとか、そういう子どもたちが過ごせる、家庭や学校ではない第3の居場所が社会にもっとたくさんあると安心できる。」(北翔大学 飯田昭人 教授)

さまよう若者たちの居場所をどう作るのか。

2023年の一時閉鎖からまもなく1年。

社会が突き付けられた問いの答えは、まだ出ていない。

北海道文化放送
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