いま農林水産省が、「一度侵入を許すと、我が国の畜産業に壊滅的な被害を生ずることになる」と危機感を示している、「アフリカ豚熱」。

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「アフリカ豚熱」とは、豚やイノシシに感染するウイルス性の伝染病です。しかし有効なワクチンや治療法がなく、致死率はほぼ100%といわれています。

農水省では空港や港で入国者の靴底の消毒など水際対策を強化しており、これまでに日本での発生例はありませんが、1月、韓国では、釜山のフェリーターミナル近くで野生のイノシシの感染を確認。

10日からの「春節」に合わせた大型連休で、日本と中国、そして韓国などとの間で旅行者の動きが活発に。日本へアフリカ豚熱のウイルスが侵入するリスクが高くなっています。

リスクが高まる「アフリカ豚熱」イタリアの“生ハム”輸入停止

感染が拡大している「アフリカ豚熱」。もし日本で発生してしまったら、食卓にどのような影響があるのでしょうか?

宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター 副センター長である岡林 環樹氏は、世界中で拡大し、隣国の韓国でも確認された「アフリカ豚熱」が日本に持ち込まれるリスクについてこう話します。

岡林 環樹氏:
いままでも飛行機や船によって、アフリカ豚熱に感染したお肉が持ち込まれた事例はありましたので、そういったことを考えると、今回非常に韓国からのリスクが高くなったのではないかと思います。

イタリアでは、2022年の1月にアフリカ豚熱に感染したイノシシが見つかっており、日本は家畜伝染病予防法に基づき、すぐにイタリアからの豚肉・加工品の輸入を停止しました。
都内の生ハム店によると、現在は国産やスペイン産の物を販売しているといいます。

唐木明子氏:
ちょうど1年半くらい前に、イタリアンのシェフが「入らないんです、イタリア産が」って言われて、生ハムイタリア産もスペイン産もそれぞれおいしいんですけども、味が少し違うんですよね。だから今までの味が出せなくて困っているとおっしゃっていたのが、まだ続いているんだと。だからこれは根深い問題なんだなと多います。

――もし日本にアフリカ豚熱が入ってきた場合、どのような事が考えられますか?
岡林 環樹氏:

国内発生が起こった場合は、発生農場、そしてその周辺地域での殺処分対応が求められます。そうすると、当然国内の豚肉供給源が減ってくる、となると価格の高騰が起こるわけですね。現に中国や韓国ではアフリカ豚熱流行後に、豚肉の価格が2~3倍近くまで上がっているということが報告されています。

加工肉にもウイルスが残存

アフリカ豚熱には、現時点で治療法や有効なワクチンはありません。
また、豚が死んでいても、肉を冷凍していても、ウイルスは長く残存します。塩漬けの肉や乾燥肉でも300日間、ふん便には10日以上残存し、ふん便を踏んだ靴で10日以内に世界を移動すると感染拡大します。

――豚が死んだあとも、肉製品に加工されたあともウイルスが生き続けると…
岡林 環樹氏:

豚の臓器や筋肉内ではウイルスが生存しているわけで、加工品になってもウイルスが感染リスクを持っているということが大きな問題ですね。さらに、血液やふん便にも出ていますので、そうすると今度は農場が汚染されたり、食肉加工する場所が汚染されたり、またマーケットなんかも汚染されていく。そこに入った人の足とか、そういったものにウイルスがふん便等にくっついて運び出されるというリスクも危惧しなくてはいけないとなってきます。

養豚業界の対策は?

国内の養豚業界も警戒を強めています。
「高品質庄内豚」「平牧三元豚」などの高級ブランド豚を有する山形県の畜産振興担当によると、空港での靴底消毒の強化・野生イノシシの農場への侵入防止。海外から帰国の際関係者でも農場立ち入り禁止するなど対策を行っています。

また、「かごしま黒豚」「九州もち豚」の鹿児島県庁畜産課は、観光客を農場に入れないようにお願い。「あぐ~豚」「琉球ロイヤルポーク」の沖縄県庁畜産課は、外国人観光客へのパンフレット配布・注意喚起、農業関係者に消毒用の消石灰配布を行っています。

――アフリカ豚熱の侵入を防ぐために、私たちができることは?
岡林 環樹氏:

まず、やはり汚染された豚肉というものがキーワードになっていますので、とにかく今は、流行地からそういった食品を持ち込まない、持ち込ませないようにすることが大事になります。国内におきましても、野外に肉を捨てるとか、食品の残りかすを出さないという取り組みも大事だと思います。また、海外に行った靴で近くの農場に行ったり、動物園に行ったりというそういった動物との接触を避ける、そういった一人一人の取り組みが大事になってくるのかなと思います。
(めざまし8 2月9日放送)