長時間労働の末に自ら命を絶った医師の遺族が、病院側を相手取り損害賠償を求める裁判を起こした。遺族が不審を抱くのは病院が主張する「自己研さん」という言葉だ。

https://youtu.be/n_c6Z-fBSag

■自殺した医師の遺族が病院らを提訴『自己研さん』とは…

高島晨伍さんの母・淳子さん:
自己研さんで晨伍は自殺しないと思います。やはり上司のマネジメントの欠如、仕組みや環境の問題だったと思います

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 こう話すのは医師だった高島晨伍さん(当時26歳)の母・淳子さん。晨伍さんは2022年自ら命を絶った。神戸市の甲南医療センターに勤めていた晨伍さんは2022年5月、自宅で自殺しているのが見つかった。

自殺直前の時間外労働は月およそ200時間。 そしてこの月を含む3カ月間では165時間という長時間労働が労働基準監督署の調査で明らかになり労災認定された。

淳子さんらは2日、病院を運営する法人「甲南会」と病院長に対し「自殺する1年ほど前から、長時間労働の改善を求める書面が院長らに提出されるも、放置されたため自殺につながった」などとして、あわせておよそ2億3400万円の損害賠償を求めて提訴。

■病院側は「過重な労働は強いていない」と主張

病院側はこれまで「過重な労働は強いていない」と主張している。その理由として挙げているのが…

甲南医療センター具英成院長(2023年8月):
(医師は)本人の自主性の中で自己研さん、自己の発展を目指す職業的な特徴がある

 学会での発表の準備や研究などを業務にあたらない“自己研さん”とした。

しかし遺族は専門医になるために必要なプロセスで、「業務にあたる」と訴えている。

高島晨伍さんの母・淳子さん:
自分で調整ができる自己研さんであれば、いくらでも何時間でもできたと思います。亡くなる前の晩に晨伍の所にいきました。『晨ちゃんに何かあったらお母さん生きていけないから必ず連絡してよ』といって帰ってしまいました。しかし私は1年半以上、こうして厚かましく生きております

4月からは「働き方改革関連法」が適用され、医師の時間外労働は原則年間960時間までに。同じく医師である晨伍さんの兄は、「医師の働き方を考えるきっかけになってほしい」と訴える。

高島晨伍さんの兄:
若手医師だけでなく、管理者がこの問題に目を向けて関心を持ち、推移を見守ることが、医師の労働への意識を高めるきっかけになるのではないかと思います

患者を救う医師自身の命を守るため、「自己研さん」という言葉で片付けない、働き方の議論が必要だ。

■「国の通達」にも"自己研さんは労働時間"

今回の問題を改めて整理する。

亡くなった高島医師です。診療に加えて、専門医の資格を取るための論文を出品、それから学会の発表によって労働時間、長時間になっていた。これに対し病院側は、これらは労働時間に当たらない自己研さんだと主張している。

ただ、国の通達を見てみますと「診療などの業務と関連性がある、あるいは上司の指示による」などといった場合、自己研さんも労働時間としている。

さらに、その労働時間に当たるのかどうかの線引きが難しい場合は、事前に病院側と医師がコミュニケーションを取っていくこと、この重要性も指摘している。

亡くなった晨伍さんの兄は、「同じ医師ですけれども医師の働き方を考えるきっかけにしてほしい」と話した。

ジャーナリスト・浜田敬子さん:
お母さまもおっしゃってましたけど、やっぱりこれは医師としてキャリアを積んでいくための業務だと思います。なので、労働時間としてきちんと見ること。そして、今回この医療センターが問われるべきは、1年前から働き方を見直してほしいという提案が出ていたにもかかわらず、これを無視していたこと。これについてはきちんと検証されるべきだと思いますし、何よりもやっぱりお医者さんたちの働き方が改善されないと誰が1番、不利益をこうむるかっていうと、患者の私たちです。過酷な労働の中でやってらっしゃると、先端的な研究もうまくいかなかったり、いい治療ができないと思われます。私たちは自分事としてこの問題を考えなければいけないと思います

関西テレビ 神崎博報道デスク:
この病院の勤務管理をする上司に当たる人たちは、おそらくですけども 24時間365日、寝る間も惜しんで働き続けて、今の地位を獲得してこられたので、自分たちやってきたことが『当たり前や』という思いがあると思います。こういう“上に立つ人たち”の考え方を変えてもらわないと、この問題は根本的には解決しないのかな…と私は思います

4月からは医師の働き方改革がスタートしますが、労働環境の整備が急がれる。

(関西テレビ「newsランナー」2月3日放送)

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