4月に総選挙も…対フェイクニュースの法規制進まず
このように一部の政治YouTuberが、政治的な分断を深め、フェイクニュースを拡散する中、対策は後手に回っている。
韓国国会には現在、YouTuberなど“1人メディア”への規制を強化する「フェイクニュース防止法案」が10件あまり発議されている。ただ、いずれも国会での議論は停滞し、成立の見通しは立っていない。
むしろ政治家の間では、支持層の結束を強めるため、極端なYouTubeを利用する動きもある。最近も、右派の政治YouTubeチャンネルが新たに開設された際、与党の議員らがこぞって祝賀コメントを寄せ、問題となったばかりだ。
一方、欧米に目を向ければ、YouTubeなどプラットフォーム事業者の責任を問う動きが広がっている。ドイツではいち早く事業者に対し、フェイクニュースやヘイト発言などを含むコンテンツの削除・遮断義務を与え、違反した場合、最大500万ユーロ(約8億800万円)の過料を賦課する「ネットワーク執行法」を2018年から施行し、一定の効果を上げている。
またアメリカでも、プラットフォーム事業者の免責特権を保障した「通信品位法(230条)」の改正に向け、議論が始まっている。西江大学新聞放送学科のユ・ヒョンジェ教授は「政治YouTuberたちは自らを言論と称し、メディアとしての利益は享受しながら責任は負わずにいる(韓国メディア)」と指摘し、規制の必要性を訴える。
4月の国会議員総選挙は、日韓関係改善を進める尹錫悦大統領の今後の政権運営を左右する重要な分岐点となる。選挙まで2カ月あまり。国民の政治への関心が高まる中、YouTuberたちは、これ見よがしに詭弁やフェイクニュースを広めるだろう。どうか韓国国民が慎重に見極め、冷静な一票を投じることを願う。
(執筆:FNNソウル支局 仲村健太郎)