2023年、秋田県ではクマによる人身被害が相次いだ。その中で、ある人物の活動に注目が集まっている。“放置された柿”の活用に取り組み、ビジネスとしての確立を目指している男性を取材した。

クマ出没で大忙し 柿を守る柿木さん

柿の形をした帽子と、柿色のつなぎがトレードマークの柿木崇誌さん。広島市出身で、2018年に結婚を機に能代市に移住した柿木さんは、放置されている柿の木に関心を持ち、代行して収穫と管理に当たっている。収穫した柿は、ドライフルーツなどに加工して販売している。

“柿の帽子”と柿色のつなぎがトレードマークの柿木崇誌さん
“柿の帽子”と柿色のつなぎがトレードマークの柿木崇誌さん
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2022年に活動を始めた柿木さん。2年目となった2023年の秋は、想像を超えるほどの忙しさだったそうで、柿木さんは「2023年は、本当にひたすら走り回っていた。忙しかったというイメージしかない」と話した。

2023年はクマの出没が相次ぎ、「異常」と言える事態だったからだ。

クマの出没が相次いだ2023年を振り返る柿木さん
クマの出没が相次いだ2023年を振り返る柿木さん

柿木さん:
電話で話されるのは「クマがいるから」とか、結構緊急性を要するような話し方だった。依頼数は前年の倍以上で、収穫も倍。2トン以上で、収穫も30件以上

一方で、柿の木を伐採してしまったという話もよく聞いたという。
「クマの被害防止」という差し迫った対応だったため、致し方なかったとはいえ、柿木さんにとって柿の木は、貴重な資源だ。複雑な思いを抱えながら、忙しい日々を過ごした。

コスト面で課題が…「1人では限界」

そして多くの依頼に対応する中で、柿木さんは、移動時間の増加によるガソリン代、加工する際の電気代など高騰するコスト面が課題になっていると話す。

依頼を無料で請け負う代わりに不要な柿を引き取っているが、時にはコストの方が上回ってしまうことがあるという。
また、収穫から加工までをすべて1人で行うには限界を感じていた。そこで始めたのが、収穫体験のイベントだ。参加費を募って開催したところ、予想以上の反響があった。

柿木さん:
今まで収穫体験をしたことがないし、もちろん高枝切りばさみを使ったこともない人がいて、非日常みたいな感じで楽しんでもらえた。僕も1人で黙々とやってきたので、とても楽しく、収穫量も増加できて非常に良かった

このほか、高齢者施設や福祉施設などに声を掛け、柿の皮むきなど作業の一部を委託。自身の負担を軽減できるほか、施設の関係者の新たなやりがいを生み出したい考えだ。柿木さんは「僕だけでは解決できない問題なので、みなさんに力添えしてもらって、みんなで解決していくことが大事になってくると思う」と語った。

“地域に還元” 柿木さんの挑戦

キッチンカーなど、販売場所の開拓も進めてきた柿木さん。2024年は新たな目標がある。

柿木さん:
キッチンカーを拡大してバスとかにして、お好み焼きの提供はもちろんだが、それと一緒に柿の加工品を販売する。そして、収穫体験でもバスを使って、みんなで行動できるようなことを今年は実現したい。もう一つできるのであれば、加工場を新設したいと思っていて、みんなで作ったり、新しいことを生み出したりできる場所を設けたい

ほかにも、加工品の品数を増やしたり、飲食店や菓子店に柿を提供して新たな料理やスイーツを開発してもらったりと、柿木さんは常に、柿の活用の幅を広げる方法を考え続けている。

柿木さん:
2023年は赤字にならないくらいのところまで、収穫から販売までもっていけたが、プラスマイナスゼロだと稼働していた分が赤字になるので、やはり利益を出さないと継続は不可能。今年は働いた以上の利益を出して、それをみなさんに還元というか、恩返しできるように稼がないといけない。活動費が捻出できるくらいの利益は上げたい

着実に活動の幅を広げてきた一方で、ビジネスモデルの確立は道半ば。“地域の資源を活用して利益を生み出し、地域に還元する”、この循環の実現に向けて柿木さんの挑戦は続く。

(秋田テレビ)

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