30日午後、トヨタ自動車の豊田章男会長が記者会見を開き、グループ企業で不正が相次いだことについて謝罪した。再発防止のために、会長自ら「グループを見る」と踏み込んだ発言をした。
トヨタ自動車 豊田章男会長:相次ぐ不正により、お客さまをはじめ(株主など)ステークホルダーの皆さまに、ご迷惑、ご心配をおかけしていることを深くおわび申しあげます。
30日、会見で謝罪したのはトヨタ自働車の豊田章男会長。
「トヨタグループの責任者として信頼を取り戻すビジョンを示す」と話した。
トヨタ自動車 豊田章男会長:絶対にやってはいけないことをやってしまった。お客さまから信頼を取り戻すことは、時間のかかることだと思う。厳しくも長い目で見ていただきたい。
「世界のトヨタ」ブランドを大きく揺るがすことになった、豊田自動織機のエンジン不正データ問題。

記者リポート:午前9時前です。国土交通省の職員が豊田自動織機の工場へと入っていきます。
30日、愛知県の碧南工場で行われた立ち入り検査では、関係者への聞き取りや、試験データが記載された資料の確認などが進められた。
豊田自動織機は、大正15年に設立された、トヨタの源流企業だ。今も、自動車部品の製造を手がけていて、まさに“トヨタグループの根幹”。その豊田自動織機と親会社のトヨタ自動車は、29日、「エンジン試験での不正」があったと謝罪した。
そこで長年行われていた不正とは…。
■エンジンの出力試験に「見栄えの良いデータ」を提出

トヨタ自動車からディーゼルエンジンの開発を受託した豊田自動織機は、認証手続きに必要なエンジンの出力試験の際に、燃料の噴射量を調整して「見栄えの良いデータ」に見せていた。そのデータは実に16年もの間トヨタ自動車に提出され、国の認証をクリアしていた。
斉藤鉄夫国交相:ユーザーの信頼を損ない、かつ自動車認証制度の根幹を揺るがす行為であり、極めて遺憾です。
斉藤国土交通大臣は、「企業のガバナンス」の問題も含め、広く調査する意向を示した。
さらに、不正の事実関係を確認し大量生産に必要な、「型式指定」の取り消しを含む、行政処分を今後検討するということだ。
今回、不正が明らかになったのは、フォークリフトなどのエンジン7機種や、乗用車用のディーゼルエンジン3機種で、トヨタ自動車はランドクルーザーやハイエースなど10車種の出荷停止を決めている。
トヨタによると出力性能が出荷基準値を満たしていることは確認しているため、直ちに使用停止する必要はないとのことだ。
■販売店にも影響が…

ただこの余波は、専門店でも…ハイエースを販売する中古車販売店にはお客さんから10件ほど問い合わせがあるという。
「CRS大阪」エリアマネージャー 小牧潤也さん:『僕の車大丈夫?』という声もたくさんいただきました。納車お待ちいただいているお客さんが、一体いつ納車されるのかなっていう。そういう不安の声っていうのも、正直言うと、あるのはあります。
取材した中古車販売店で販売するハイエースのうち、4割ほどが今回のデータ不正に該当しているそうだ。
「CRS大阪」エリアマネージャー 小牧潤也さん:去年から不正、不正というところがありましたので、不正なしの安心できる車両っていうのを、ご提供していけたら。
■納期に間に合わせるために不正を行ったか

なぜ、エンジンの試験で不正が行われていたのか…。
豊田自動織機が設置した特別調査委員会は29日、原因は、組織的・構造的な問題にあると指摘した。
特別調査委員会 井上宏委員長:データ書き換えの典型的なパターンでは、劣化耐久試験に要する期間等を十分に考慮せず、量産開始予定日から逆算して策定した不合理な開発スケジュールが原因となります。
納期に間に合わせるために、不正を行っていたというのだ。
この不正の原因は、2023年の年末に発覚したトヨタグループのダイハツ工業の不正とも酷似している。
このような不正は自動車業界に蔓延しているのか、専門家は…。
自動車評論家 国沢光宏さん:他のメーカーでやっている話ではないので、やはり特殊な例なんだと思います。これ、非常に悪質なことをやっていると思います。今回でいえばディーゼルエンジンの開発量がすごく少ないんです。他のメーカーがディーゼルをやっていなくて、一人残ったわけです。そこでいっぱいお金かけてやらないと、いけないというような状況になったときに、少し手を抜こうという状況が一つあって、それがバックボーンになっている。
くしくも、30日、トヨタ自動車はダイハツなどを含むグループの2023年の世界販売台数が、前年比7.2%増の1123万3039台で、4年連続で世界トップとなったと発表した。
グループ会社の認証不正による生産停止が相次いだことで、ことし、この記録が維持できるかは不透明だ。
トヨタ自動車 豊田章夫代会長:認証において不正を働くということは、お客さまの信頼を裏切り、認証制度の根底を揺るがせる、極めて重いことであると受け止めております。グループ責任者としておわび申し上げます。私が社長を辞めてちょうど1年になります。会長になったということで、現執行に対しても各会社に対しても遠慮を持ち、微妙な距離感をもっておりましたが、責任者ということで、もう一度グループとトヨタ自動車を見ていきたいと思っています。
■経営層と現場のギャップや声が上げられない環境に問題

2022年から2023年にかけてトヨタグループでは不正問題など相次いでいた。
そして29日、豊田自動織機でトヨタなど自動車用のエンジンの試験で不正があったことがわかった。
ダイハツでも不正があったようになぜ同じことが次々起こるのだろうか?
29日、トヨタの佐藤社長は、豊田自動織機で起こったことについて、「自動車開発が100年に一度の変革期にある中で、技術の高度化による現場の負荷を経営層が理解できていなかった」と説明しました。
一方、先月ダイハツは、大規模な不正行為が見つかった原因について奥平社長は、「経営陣、管理職が現場の 負担やつらさを十分に把握せず、困ったときに声をあげられない、職場環境風土を放置してきたこと」と説明しました。
今回の問題をどうみていますか?
関西テレビ 加藤報道デスク:私この問題を見たときに思い出したのが、ドイツであったフォルクスワーゲンのグループでの不正問題です。これは私がドイツに赴任している時に起きたのですけれども、こちらも同じディーゼル車で試験の時に不正なソフトを入れて、排ガス規制を逃れるようにしていた、分かっていながら販売したということで、世界でも大スキャンダルになりました。結果、すごく人気が高かったディーゼル車がEVに舵を切るきっかけになった大きな事件となりました。その時に問題になったのも、同じように結局ガバナンスの問題でした。どれだけ世界で売上を伸ばしていくかという、競争の中で起きてしまった事件で、いまだに裁判も続いてるぐらい尾を引いています。本当に信頼と実績というのは、ものすごく時間をかけて作るのに、壊れる時は一瞬だというのを本当に思い知りました。
トヨタ自動車の2023年の自動車の販売台数が世界一になったということだが、その歪み、そしてしわ寄せがあったのかということも含めて、しっかりと検証をして再発防止に取り組んでほしいと思う。
(関西テレビ「newsランナー」2024年1月30日放送)