1月21日の「都道府県対抗男子駅伝」で、長野は大会新記録で3連覇。優勝はこれで10回目だ。まさに「駅伝王国」と呼ぶにふさわしい結果。なぜ、ここまで強いのだろうか。選手や関係者などに聞くと、「練習環境」「合宿」「駅伝愛」などが理由にあげられる。
長野は“駅伝王国” 大会新記録で3連覇
広島県で行われた都道府県対抗男子駅伝。
長野は1区・佐久長聖高校の浜口大和選手が4位の好位置につけると、その後も上位でたすきをつなぐ。
4区では同じく佐久長聖の永原颯磨選手が区間賞の走りで、一気にトップに。
続く5区・山口峻平選手も区間賞。後続との差を広げる。
最後は佐久長聖OBで駒澤大学の前キャプテン・鈴木芽吹選手が「区間新」の快走。
大会新記録で3連覇を達成した。これで長野は歴代最多10回目の優勝。
長野県チームの高見澤勝監督は、「想定通りにレースが進んでくれた。選手たちが一生懸命がんばった成果。支えてくれたスタッフや多くの関係者のおかげで、こうした結果に」と話し、優勝の味をかみしめた。
この記事の画像(15枚)なぜ強いのか?関係者に聞くと…
全国高校駅伝でも、男子の佐久長聖が6年ぶり3度目の優勝。2022年は女子の長野東が初優勝するなど、長野はまさに「強豪県」。
なぜ、ここまで強いのだろうか。
駅伝やマラソンの解説でおなじみの金哲彦さん。
信州のランナーの特徴について、「のびのびとしたフォームで走る選手が多い。チマチマ走るんじゃなくて。クロスカントリーのコースが身近にあるからじゃないかなと思います。当然、アップダウンが、山に住んでいる子どもは小さい時から足腰も強いでしょうから」と話す。
標高が高く、起伏に富んだ地形
標高が高く、起伏に富んだ地形が多い県内。確かにトップ選手が集まる高地トレーニング施設があり、佐久長聖も長野東もクロスカントリーコースで練習している。
「山国」であることが選手を強くしていると言えそうだ。
金さんは、「県外の人たちが長野に練習環境を求めていっているわけですから、長距離には最高の環境です」という。
また、佐久長聖高校の主将の永原颯磨選手は、「中学時代、山を使った練習があった。どこに行っても高地トレーニングのような環境があるので、標高を低いところを走ると効果を感じる」と話す。
合宿 チームワークを育むだけでなく
続いて話を聞いたのは、長野陸上競技協会・駅伝部長の丸山健志さん。
「今の都道府県対抗駅伝に関しましては、直前の1月の合宿は、大学生も実業団も一緒に合宿をする。特に大学生に関しては箱根駅伝を終わって翌日に合宿に合流してもらう。チームワークがつくれるというのが一番大きいと思います。これは他所の県ではまず類がないことだと思います」と話し、胸を張る。
特徴的な強化策として挙げられるのが「合宿」。
都道府県対抗駅伝の合宿は、前年の3月にスタートし、ほぼ毎月行われている。
中学生から社会人まで参加してもらうことで、チームとしての一体感も育まれると言う。
駒澤大学の鈴木芽吹選手は、「伝統的に年始の合宿とか、一般の選手も参加していて、そこでコミュニケーションをとって結束力を高めているので、そういう状態で広島入りしてチーム力を高められている」と、合宿の重要性を話す。
憧れの先輩と…高まるモチベーション
特に中学生にとって「憧れの先輩」と一緒に走ることは大きな刺激になる。
堀金中学校の中澤侑己選手は、「先輩方の練習に向かう姿勢や日常生活などでさまざまなことを教えてもらった。合宿などがあるからいろんなことを教えてもらって、陸上の結果にもつながるし、人間としても大切なことを学べる」と、合宿は成長できる環境だという。
憧れや経験の「循環」
中学生の頃から刺激を受け、先輩や指導者に憧れて強豪校へ集まり、切磋琢磨する。
卒業後は合宿などを通じてこれまでの経験を次の世代に伝えていく。
この憧れや経験の「循環」が強さの伝統を築いている。
金さんは、「男子は佐久長聖に集まってきて、女子は長野東に集まってきてみたいな。そういう流れはできています。高校駅伝で強いだけじゃなくて、OB・OGが活躍しているじゃないですか。日本代表に何人もなっているし、大学駅伝でも活躍しているし、世界大会でも活躍している。そういう、ロールモデルになるような、ヒーローになるような先輩たちがたくさんいるからだと思う」と分析している。
伝統の駅伝大会
さらに県縦断駅伝や市町村対抗駅伝など歴史ある大会が多いのも長野県の特徴。
幅広い年代のランナーが交流することによって、競技力の向上や競技人口の増加も期待できると言う。
駅伝好き県民の熱い声援
大会を通じて県民の関心も高まり、熱い声援に。
都道府県対抗男子駅伝でも長野県からの応援団や広島の県人会が駆け付けていた。
信州駅伝サポート会の伊藤利博さんは、「昔から県縦断駅伝とか、信毎マラソン、のちの長野マラソン、長野県には駅伝文化が育まれたと思う。それが今の結果につながっているのでは」と話す。
沿道の声援は選手を確実に後押しする。
佐久長聖高校の主将の永原颯磨選手は、「多くの人からの声がけは力になるし、苦しくなった時には応援してくれる方々のことを考えて、もうひと踏ん張りできた」と、声援に感謝している。
強さには、やはりさまざまな理由があるようだが、そもそも駅伝に対する県民の「熱量」の高さはどこから来ているのだろうか。
丸山健志駅伝部長は、「駅伝は特に『心』を大事にする競技ですので、思いやりであったり、そういうのが長野県民は非常に好むんじゃないかなと思います」と話す。
たすきをつないで心一つにゴールに向かう。
環境や伝統だけでなく、県民の「駅伝愛」が王国を支えているとも言えそうだ。
(長野放送)