あべのハルカス本店を始め関西にデパートを展開する近鉄百貨店が、自社で栽培した果物の販売を進めている。

同社が自社栽培しているイチゴは「紅ほっぺ」という品種で、甘みが強く酸味もやや強めで、イチゴ本来の甘酸っぱさを味わえるのが特徴。あべのハルカス近鉄本店で、近鉄いちご「はるかすまいる」というブランド名で昨年12月6日から販売している。
そして1月31日から2月6日の期間は、奈良店・橿原店・生駒店にも「はるかすまいる」が登場。奈良店と生駒店では「はるかすまいる」を使用した限定スイーツも店頭に並ぶという。

実は近鉄百貨店では2022年8月に、イチゴに関する専門チームを立ち上げ、2023年冬の発売を目指していた。
実際にイチゴを栽培しているのは、大阪・河南町にある「近鉄百貨店直営いちご農園 はるちかファーム」で、6000平方メートルの面積があるという。

なお「はるかすまいる」というネーミングは、あべのハルカスの由来となった、晴れ晴れとさせるという意味の古語“晴るかす”と”スマイル“を合わせたもので、ひと粒ほおばると自然と笑顔になるおいしさという意味が込められている。

これまで近鉄百貨店では、あべのハルカス近鉄本店などで新鮮な農作物や加工品を販売する産直ショップを展開してきたが、生産から販売までを自社で担うのは「はるかすまいる」が初めてだという。
産地直送の野菜や果物を売る店舗は様々あるが、なぜ百貨店が生産から販売まで行うことになったのか?そしてなぜイチゴを選んだのだろう? 株式会社近鉄百貨店の担当者に聞いてみた。
イチゴは「百貨店の強みを最大限活かせる」
――そもそなぜイチゴ栽培を行うことになった?
1つ目は、高収益事業への推進です。当社は百貨店事業の構造改革を進めており、その一環としてより収益性の高い生産事業に取り組むこととなりました。
2つ目は、地域共創活動の実現です。当社では、北海道公式アンテナショップ「どさんこプラザ」の運営を代表するような、地域の活性化や魅力度向上に取り組んでいます。
今回の生産事業を通して、沿線地域の価値向上はもちろん、就農人口の減少や土地の再活用といった地域が抱える課題解決へ寄与していきたいと考えています。地域の方々とつながり、生産もお手伝いいただきながら、本当に美味しい農産物を自社で作り、お客様にお届けしていきます。
――いろんな果物がある中で、「イチゴ」を選んだわけは?
「イチゴ」は果物の中でも需要が高く、市場の値崩れも少ない高付加価値商品です。また、店頭のお客様だけでなく外商顧客やインターネットショップといった多様な販売チャネルがあり、お取引先さまへも卸販売ができるなど、百貨店としての強みを最大限活かせると考えたからです。
――実際に商品化するにあたって大変だったことは?
イチゴ栽培に関するノウハウがまったくない状態からのスタートでしたので、土地の選定やハウス設備の構築など初めての経験ばかりでした。
各自治体や企業の皆さまにお手伝いいただきましたが、大変なことの連続でした。例えば、2023年は気温が高かったことにより、苗の状態が悪くなってしまい、全体の3割の苗を抜き替えました。せっかく育てた苗でしたが、抜かないと病気になってしまうので、再び元気に育つことを祈りながら作業しました。
ギリギリまで完熟させ甘みを引き出して提供
――店頭価格を教えて
全サイズともに1パック250gで、S(551円)、M(651円)、L(751円)、2L(901円)、
3L(1080円)、4L(1201円)、5Lサイズ(1301円)となります。
※価格は1月22日時点のもので、収穫の状況によっては変更の可能性がある。
――「はるかすまいる」のオススメポイントは?
中間の卸業者を挟まないため店頭に並ぶまでのリードタイムを通常より約2~3日短縮することができ、ギリギリまで完熟させ、甘みを引き出した新鮮なイチゴを提供できるところが一番のアピールポイントです。
紅ほっぺの特徴は甘みが強く酸味もやや強めで、イチゴ本来の甘酸っぱさとコクを味わえ、果肉はやや固めでしっかりとした食感です。
――どんなふうに食べてほしい?
ギリギリまで熟したイチゴの甘味を味わって頂きたいので、練乳など付けずにそのままお召し上がりいただくことをおすすめします。
イチゴは先端に甘味が詰まっていますので、ヘタの方から食べていただくとより甘味を感じていただけます。また、ほど良い酸味は、ケーキなどのスイーツ作りにもピッタリです。
ブドウなど他の果物の自社栽培も検討
――評判はどう?
おかげさまで、ご好評いただいています。「ほんとに美味しいイチゴにやっと出会えた」「甘味と酸味がちょうど良くておいしい」など、嬉しいお声をたくさんいただいております。
――「はるかすまいる」の販売期間はいつまでなの?
6月末までの販売を予定しています。
――他の自社栽培商品も今後登場する予定なの?
ブドウ、メロン、マンゴーなど色々な果物を検討しています。今後近鉄百貨店が手掛ける果物にご期待ください。

「デパートが農業を手がける」と聞くと最初は意外な気がしたが、このような試みはこれからもっと広がっていくのかもしれない。次はどんな果物を自社栽培するのか楽しみだ。