元日に起きた、能登半島地震。誰もが情報を求めたその瞬間から、インターネットには、災害に便乗した"偽情報"や"誤情報"が拡散された。東北大学災害科学国際研究所では、災害発生の2日後の1月3日から、被災地の教育情報に特化したWebサイトを立ち上げ、運営している。狙いは「正しい情報のまとめた発信」と「被災地の子供たちと学校関係者の支援」だ。

「正しい情報が届かない・・・」

東北大学災害科学国際研究所・斎藤玲助教
東北大学災害科学国際研究所・斎藤玲助教
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「令和6年能登半島地震・学校教育関連情報まとめサイト」と名付けられたWebサイト。立ち上げたのは東北大学災害科学国際研究所の斎藤玲助教(教育実践学)など5人のグループだ。

 目的は被災地の学校関係者に正しい情報をまとめて届けること。斎藤助教は「発災直後から被災地では誤った情報が多く拡散されていた。このままだと確実な情報や共有されるべき情報が被災されている学校関係者に届かない可能性がある」と危機感を感じていた。

斎藤助教のグループが立ち上げたサイト
斎藤助教のグループが立ち上げたサイト

 地震の発生から2日後に立ち上げられたこのサイトには、文部科学省や石川県などの教育情報が多数まとめられている。自身も被災しながら、学校の対応にあたる教員は多忙を極める。一つのサイトで、各所の正しい情報が確認できる、いわゆる"まとめサイト"の存在は、大きなメリットだ。

知っておきたい"子供のストレス"の見極め方

 このWebサイトは、情報だけがまとめられているわけではない。「子どもへの接し方」「心のケア」など、11のテーマで発信されている。

 「子どもへの接し方」のページでは、大阪大学がまとめた子供向けの絵本にアクセスすることができる。絵本は、「地震に遭った場合どうなるのか?」がテーマで、中には「倒れた家や建物を見るかもしれないこと」「避難所に行くことがあること」「水道が出なくなることがあること」などが、動物の絵とともに紹介されている。

 そして、お手伝いをすることの大切さや規則正しい生活の大切さ、さらには深呼吸によるリラックスする方法なども描かれている。

 また、福島大学がまとめた資料では「子供のストレスの見極めポイント」や「ストレス対処のポイント」などが掲載されている。

 資料では、子供に対し「大丈夫と声をかけ安心させてあげましょう」「親の笑顔が子供にパワーを与えます」など、具体的な行動も記載されていて、子供のストレス軽減のため、いざという時には一読すべき内容となっている。

過去の災害の教訓も 斎藤助教「防災教育を」

 また、サイトの中では、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の教訓などがまとめられた、各県のホームページにもアクセスすることができる。リンクが張られた宮城県の「学校再開ハンドブック」のページでは、東日本大震災発生後の学校再開に向けた動きや、どのように子供たちの心のケアを行ったのかを確認することができる。

リンクが張られている宮城県のホームページ
リンクが張られている宮城県のホームページ

 熊本県の「大規模災害発生時における学校再開と心のケアハンドブック」でも、災害直後の学校の動きや学校再開後の動きなどがまとめられている。能登半島地震をめぐっては、被災地で中学生の集団避難が始まるなど、学びの場の確保が課題となっている。

能登半島地震での中学生の集団避難
能登半島地震での中学生の集団避難

 斎藤助教は「被災地の動きと、このサイトを通じて、全国の学校関係者に"自分事"として防災教育にあたってほしい」と呼びかける。

また、斎藤助教は「未来に集団避難というものを意思決定しなければいけない可能性がある。いつ、どこで、被災するか分からない。そうであれば、防災教育のための資料として、あるいは備えとしてWebサイトを一つの活用のきっかけにしてほしい」と話す。         

 このサイトでは1月25日現在、「大学生向けの災害ボランティア」に関する情報を発信していて、今後は外国人向けにも展開させていく予定だ。斎藤助教は「状況に応じて情報を追加していきたい」としていて、当面の間、運営を継続する方針だ。

(仙台放送)