車窓から宍道湖を眺め、ゆったりと流れる時間。そこへ、車掌が「おみくじ」の箱を差し出した。このおみくじが乗車記念というわけだ。2024年の幸運を願い、神々の国・山陰を駆け抜ける観光列車の旅へ出かけた。
神秘的な「あめつち」 4月に運行拡大
テレビ新広島の鉄ちゃん、野川諭生アナウンサーが降り立ったのは島根県のJR出雲市駅。縁結びの神として名高い出雲大社がある町だ。
そのホームで折り返し待ちをしている紺ぺき色の観光列車がある。ロゴマークには「天」と「地」の文字。神話に由来し「あめつち」と名付けられた。
「あめつち」は2018年に登場した観光列車で、山陰本線の鳥取駅から出雲市駅を結び、土日祝日を中心に運行。さらに2024年4月からは、米子～出雲横田駅区間、鳥取～城崎温泉駅区間も追加される。新たなルートになる木次線の沿線では奥出雲おろち号に代わる観光列車として期待が高まっている。
野川諭生 アナ：
まず「あめつち」というネーミングが神秘的ですね。ロゴマークの下に「キロ47・7006」とあります。元の車両は芸備線で広島県内を走っている「キハ47」で、これを元に改造した車両です。「ハ」は普通車、「ロ」はグリーン車を表します。改造してグリーン車に格上げされたので、「キハ」から「キロ」になりました
車体の下方に描かれた帯状の模様は、神秘的な美しさを持つ山陰の山並みや日本刀の刀紋を表現している。
野川諭生 アナ：
1つの美術品を見ているような…、そんな美しさがある車体ですよね
山陰地方の工芸品で彩られた車内
中はどうなっているのか？
野川アナの視点で内装を見てみよう。
野川諭生 アナ：
やっぱりグリーン車ですね。椅子のクオリティもいいですよ。座るや否や、目に飛び込んでくるのが、テーブルに埋め込まれた“石州瓦”。広島県内でも県北の方へ行くと石州瓦を使った屋根があります。石州瓦は赤茶色のイメージでしたが、黒っぽい色もあるんだなという発見もあったりして…。この地域の魅力に触れるきっかけになりますよね
島根県の石見地方で生産される石州瓦のほか、車内は神話をモチーフにした安来織など山陰地方の工芸品で彩られている。また、天井からは因州和紙を通した柔らかな光が車内を照らしていた。
野川諭生 アナ：
あ！元の車体「キハ47」の名残を見つけましたよ
見ると、「扇風機」の表示と赤いボタン。しかし、車内に扇風機は見あたらない。
野川諭生 アナ：
この赤いボタンを押すと車内の扇風機が回るという名残ですね。元の「キハ47」は1両にドアが2カ所あるんですね。ただ、この「キロ47」に改造するにあたってドアが1カ所なくなりまして。おそらくこの辺りにあったドアをふさいで、窓に改造しているんですよね。鉄道ファンからしますと、「キハ47」の感覚で乗ると「あれ？何か足りないな、何か変わったな」という感じがするんですけれども
宍道湖と一畑電車を眺めて“鉄分”摂取
鳥取駅から出雲市駅までは約3時間半の列車旅。野川アナは途中の松江駅から「あめつち」に乗り込み、しばしの旅を楽しだ。
野川諭生 アナ：
おー！宍道湖ですね。道路を1本挟んで、宍道湖が目の前に迫っています。美しいですね。湖の向こう側には、一畑電車の北松江線が走っています。両側を鉄道路線に囲まれた湖なんですよ。だから、シジミが有名な宍道湖ですけれども“鉄分”摂取にもおすすめの湖ですね
一方、車内の物販カウンターでは、鉄ちゃん必見の“車内限定あめつちグッズ”を購入することができる。
野川諭生 アナ：
観光列車としては、かなりオリジナルグッズの種類が多いと思います。神話の里にちなんだグッズも多いですね
乗務員に聞いたところ肌感覚で売れ筋だというのが、「メタルキーホルダー」720円と、運行5周年を記念して作られた「車窓クリアファイル」330円。クリアファイルは“あめつちの顔”がダイナミックにデザインされている。
神話にちなんだ「おみくじ」サービスも
車内では食事や山陰の雄大な景色だけでなく、神話にちなんだ楽しみもある。
車掌が座席を回り、乗客に箱を差し出した。
野川諭生 アナ：
こんなサービスもあるんですね！ありがとうございます
箱の中から手に取ったのは、乗車記念のおみくじだ。神話にちなんだ神様からのお告げは…？
野川諭生 アナ：
おっ！「争うより、譲るが勝ち」と書いてあります。座りたいなと思って列車に乗ったら椅子が何席かしかない時、ありますよね。譲り合いの精神を大切にしようということですね
しばらくして、野川アナは出雲市駅で列車を降りた。
野川諭生 アナ：
いや～、「あめつち」の旅でしたね。月に1回は鉄道旅をするようにしていますが、「あめつち」には今回初めて乗りました。沿線の名産品が車内デザインに生かされていて、グッズも豊富で魅力的でしたね。私はこの山陰区間が大好きで、また何度でも乗りたい列車だと思いました
（テレビ新広島）
