「博多グルメ」を堪能できる人気スポット「屋台」。その屋台作りを始めて約40年、計100台近く作ってきた唯一の職人がいる。たった1人の女性職人として博多の屋台文化を支えている“屋台界のアイドル”を取材した。
福岡でただ一人 屋台専門の職人
定番の博多ラーメンはもちろん、ビールにぴったりの焼き鳥に、寒い時期にはたまらないおでんなど「博多グルメ」を堪能できるスポットとして、屋台は地元の常連客や観光客で連日にぎわいを見せている。
この記事の画像(12枚)現在、福岡市内には100軒を超える屋台が営業している。店主らの手によって毎日組み立てられている屋台だが、実はこの屋台を専門で作っている職人は福岡でたった1人だけなのだ。どんな人物なのか?屋台の店主に話を聞くと…。
屋台の店主:
エネルギッシュでかわいくて、すばらしい女性。屋台界のアイドルやけんね!「赤城なしに屋台なし」やけん。
「赤城なしに屋台なし」?屋台界のアイドル?福岡でたった1人の職人とは一体どんな人なのか?
屋台は全てオーダーメイトで製作
福岡・志免町にある赤城建具店の工場で、木材を手に屋台を組み立てているのは赤城孝子さん(82)。博多の屋台文化を40年以上支え続けている唯一の職人だ。
この日、なじみの板金職人らと進めていたのは、中洲の人気店「やまちゃん」の屋台の製作だ。「やまちゃん」では、長年使い続けた屋台の木材の部分が、コロナ禍の休業中に雨などの影響で傷んだため、今回作り変えることにした。
「赤城建具店」赤城孝子さん:
ここは頭の上の空気抜き。ここが「すっぽんぽんやけん(後ろが空いてるから)、いらんちゃないと」って言ったんだけど、夏にここに扇風機付けるみたい。
店主と綿密に打ち合わせを行い、全てオーダーメイドで屋台を作り上げる。そんな赤城さんが「屋台づくり」で大切にしていることがある。
「赤城建具店」赤城孝子さん:
(重宝されるのは)使い勝手やない?それと安心して使える。壊れるの心配しなくていいように。
組み立てと撤去が毎日繰り返される屋台は、使いやすく頑丈な屋台を作るため1mmのズレも見逃さない。この日の作業で最も気を使っていたのは「屋根の角度」だ。
「赤城建具店」赤城孝子さん:
ここからの勾配の(調整)。ここで測って、ここで10下がっとかないかん。水対策。雨が流れるように。
赤城さんが作る屋台は一体どこがスゴイのか?実際に屋台を使っている店主に聞いた。
屋台の店主:
赤城さんは屋台をずっと作り続けとるけん、ちょっとした細かいところとか気が利いてくれる。やっぱり作り方が特殊やけん、屋台は。プラスアルファ、後ろのトタンとかも作ってくれるわけよ。赤城さんは全部応えてくれるよ、なんでも。
屋台の店主:
雨の漏れ方にしても、ちゃんと計算されて作ってあるんですよ。お客さんがぬれないような配慮もしてるし、すごいですよ本当。そういうのも分かるけん、屋台も働きやすいです。
「赤城建具店」赤城孝子さん:
「壊れた」って言われたくない。年数がたって壊れたのはしょうがない。でも早いうちに「壊れた」とは言われたくない。
「一発バシッと決めて終わりたい」
赤城さんは、たった一人の女性職人として博多の屋台文化を支え続けている。
2022年2月に、二人三脚で屋台を作ってきた夫の光則さんを肺炎で亡くした。
建具師だった夫の光則さんが屋台作りを始めたのは40年前で、2人がこれまでに作ってきた屋台は100台近くに上るという。その多くはいまも健在で、現在、福岡市内で使われているほとんどの屋台は赤城夫妻が作ったものだ。
そんな赤城さんは、現在82歳。今後について尋ねると…。
「赤城建具店」赤城孝子さん:
いつ辞めたっていい。でもいっぺん一発、バシッと決まったのをして終わりたい。
理想の屋台を追い求め、赤城さんの仕事はまだまだ続く。
(テレビ西日本)