福岡名物「屋台」。名物ゆえに競争も激しい屋台の世界に飛び込んだ25歳の“最年少ペア”がいる。小川達也さんと田中廉太郎さんの2人は、無事に初日の営業を終えることはできるのか。“暑く、熱い”営業初日に密着した。

脱サラして屋台を始めた2人の若者

2023年7月26日、夕方。福岡・中洲中島町に、汗を流しながら屋台の組み立てに精を出す2人の若者がいた。慣れない作業に悪戦苦闘だ。

屋台を組み立てる田中さん(右)と小川さん(左)
屋台を組み立てる田中さん(右)と小川さん(左)
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福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
こんなもん?なんか違うくない?(この台上に本体が)絶対乗らんっちゃんね。押しても乗らん。これ逆じゃないん?

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
逆とかないっちゃん。(本体を)上げてみ~

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
1mmも上がってない

近所の屋台の人:
下のところ引いて上げないと(乗らない)。全然(台上に)乗ってない

小川さん&田中さん:
せーの!来た!ありがとうございます。すみません

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
スーパー重労働ですね。めっちゃ痛いです、腰

四苦八苦した後、何とか組み立て作業を終え、いよいよ料理の準備に取り掛かろうとするが…。

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
うーん…火がつかん!(ホースがこんがらがって)どれがどれか、わけ分からんわ

火をつけるのに苦労しているのは、屋台「繋々(つなつな)」大将の小川達也さん、そして田中廉太郎さん。どちらも25歳だ。

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
学生の頃から「屋台を2人でやりたいね」みたいな話はしていて

大学生のとき、中洲地区の隣同士の屋台でアルバイトしていたことで親交を深めた2人。大学卒業後、小川さんは福岡で営業マンとなり、田中さんは東京の広告代理店に勤務と、それぞれ別の道を歩んでいたが、福岡市が新たに屋台営業の募集を始めたことから脱サラを決意。

屋台だからこそ生まれる“魅力”

オープン前日の7月25日、室内で打ち合わせを行う2人の姿が。

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
(料理を作りながら)大根ば入れてから、これがいい。ぶりぶりがいい

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
(味見して)もうちょい甘くてもいいかな

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
僕はしゃべるのが好きなんですよ、人と。屋台だから生まれる“距離感”での会話っていうのが大きくて、すごいハマるというか、屋台の魅力に取りつかれたというか

ーー安定を捨てて不安は?

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
金銭面とかでいうと多分、見通しがあまり立たないんで不安はあるんですけど、自分でやってる感覚が強いほうが僕は「頑張れるな」という思いがあったので

屋台の看板メニューは「もつ煮込み」。メニューを考えたのは、学生時代にアルバイト先で料理を学んだ大将の小川さん。オープン半年前から毎日、試行錯誤を繰り返してきた。

屋台文化を「継承」し「つなげる」

7月26日、平日のオープンとなったが、一般客に加え友人たちも駆け付け、あっという間に席は埋まった。

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
ウェアフロム?(どこから来ましたか)

来店客:
コリアン(韓国)

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
カムサハムニダ!(ありがとうございます)

韓国人来店客の対応にも抜かりはない小川さん。滑り出しは上々。かと思いきや…。

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
何か頼まれたよなぁ…もつ焼き…とん平焼きだ!ちょ待って。いま一瞬バグった、頭が

次々と飛び交う注文に少々混乱気味となる小川さん。しかし、半年以上かけて完成した看板メニューの「もつ煮込み」の評判は上々のようだ。

来店客:
味がしみ込んでいて、ものすごくおいしい。これは“週1”くらいで来ちゃいますね

来店客:
屋台自体行ったことがなくて、ハードルが高かったんですけど、店をしている人も若いので、気軽に行けるんだなというのをきょう知りました

夢をかなえた2人を陰から見守るのは、小川さんの家族だ。

小川さんの父・秀行さん:
会社を辞めたときは「え!?」って思ったけど、頑張っている2人を見て、本当に応援しています

小川さんの母・みゆきさん:
心配と不安と期待と、いろいろ入り交じって、何とかここまでこぎつけられて、よかったなと思います

小川さんの弟:
本当すごいです。尊敬できる兄です

小川さんの父・秀行さん:
お客さんの方が大事ですから、また時間を見つけて来ます

開店して7時間以上、客足が途絶えることはなかった。そして、日付を越えた午前1時半。最後のお客を送り出し、初日の営業が終了。売り上げは、目標としていた8万円を上回り、10万円に達した。

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
これからもお客さんに「楽しんでほしい」という気持ちは忘れずにやっていきたいと思います

福岡屋台「繁々」・小川達也さん:
料理にバタついているだけになってしまったところが結構あるので、お客さんと話すとき、間を大切にしていきたいですね。いろんな方が来られると思うんですよね。そういう人たちがそこに集まってつながっていけば福岡が盛り上がるというか

福岡屋台「繁々」・田中廉太郎さん:
僕ら若い人間が店をやるということで、若い人にも屋台に来てほしいと思うし、福岡の文化としてつなげるという意味でもしていきたい

戦後から続く、福岡の屋台文化。それを継承する彼らの屋台の名前は、人と人、そして福岡の屋台文化を未来につなげる「繋々」だ。

(テレビ西日本)

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