秋田県内に甚大な被害が出た2023年7月の記録的大雨から半年。浸水被害を乗り越えて営業再開を果たしたラーメン店が、能登半島地震の被災地への支援活動を始めた。温かい支援を受けた“恩返し”の気持ちを込めて。

記録的大雨から半年…日常取り戻す動きも

半年前の2023年7月14日に降り始めた雨。雨脚は弱まることはなく、秋田県内各地に甚大な被害が出た。

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県内では1人が亡くなり、5人がけがをした。これまでにわかっているだけで、住宅被害は7,039棟にのぼっている。また、農林水産関係の被害額は138億円、土木関係は232億円を超えた。

あれから半年がたち、季節は冬へと変わっている。

厳しい寒さが続く中、日常を取り戻す動きがみられる一方で、いまだに苦しい生活を強いられている人もいる。自宅の復旧工事が終わっていなかったり、自宅を手放したりした人もいて、支援が必要な人がいまも多くいることを忘れてはいけない。

秋田市のラーメン店は、店の復旧を終え、営業再開を果たした。日常を取り戻したいま、能登半島地震で被害を受けた地域に思いを寄せている。

自宅は浸水 店の客席は泥水で覆われた

JR秋田駅の東西の地域を結ぶ明田地下道近くに店舗を構えるラーメン店「稲庭中華そば秋田本店」は、記録的大雨に見舞われた日、店の中に最大で1メートルの高さまで水が入り込んだ。

稲庭中華そば秋田本店 店主・犬塚智さん:
入り口近くまで水が来てしまい、どんどん押し寄せてきた。水が来てから本当に早かった

調理場が水に漬かったほか、客席のほとんどが泥水に覆われた。店を切り盛りする犬塚さんの自宅も浸水し、家族と共に店の2階で避難生活を送った。

取材に訪れた日、犬塚さんの携帯電話が鳴った。

稲庭中華そば秋田本店 店主・犬塚智さん:
泥水はなんとかきれいに。床は汚い

記者が誰からの電話か尋ねると、犬塚さんは「お客さんが心配して電話をくれる。お客さんが励ましてくれるから、頑張ろうという気になる。それで何とかようやく持ちこたえている。前に進もうと」と気丈に話していた。

能登半島地震「人ごとじゃないと…」

2023年11月、完全な形で再オープンを迎えた
2023年11月、完全な形で再オープンを迎えた

あれから半年。店を訪れると、復旧を終え、再び完全な形でのオープンを果たしていた。営業が再開できたのは2023年11月だったという。

稲庭中華そば秋田本店 店主・犬塚智さん:
7月の大雨で店と自宅が被災して、その時にたくさんの人から応援してもらって、店を無事に復旧することができた

店を再び開くことができたいま、犬塚さんは、能登半島地震によって苦しい生活を強いられている人たちに思いを寄せている。

稲庭中華そば秋田本店 店主・犬塚智さん:
第1報を聞いたとき、胸が痛いというか、自分たちも被災したので、人ごとじゃないと思った

広がる支援の輪 チャリティーイベントも

地震発生翌日の1月2日には、店の食券販売機の横に募金箱を設置した。食券を購入した際の釣り銭を募金箱に入れてくれる客が多いという。

1月10日には、集まった善意9,602円を送った。募金はいまも続いている。そして支援の輪は、さらに広がりをみせる。

秋田市内のラーメン店が協力し、各店舗の「いいとこどり」の1杯を提供 売り上げは全額寄付へ
秋田市内のラーメン店が協力し、各店舗の「いいとこどり」の1杯を提供 売り上げは全額寄付へ

1月22日には、秋田市内にあるラーメン店3店が協力して、チャリティーイベントを開催する予定だ。3店の「いいとこどり」の1杯を提供し、売り上げは全額、被災地に寄付される。

稲庭中華そば秋田本店 店主・犬塚智さん:
当たり前の日常ではあるが、当たり前に店を開けることがとてもありがたいことだと思った。去年11月から全席稼働することができて、お客さんから温かい言葉をもらえたので、やりがいを感じ、感謝しながら日々の営業ができている

大雨による被災を乗り越え、地震や津波で被災した人たちに心を砕く犬塚さん。募金だけでなく、現地に出向いて被災した人たちに温かいラーメンを提供したいという思いも強い。自分たちが受けた支援への“恩返し”のために。

(秋田テレビ)

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