1月16日、めざまし8が訪れたのは輪島市門前町。

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田中良幸情報キャスター:
このあたりは多くの商店が建ち並ぶ地区なのですが1階部分が崩壊した建物、手つかずの状態になっていますね。

多くの建物が倒壊していて、通りを行き交う人の姿はほとんど見られません。

そんな中、ポツンと営業していたのが街の小さな洋服店です。

営業再開「休めるスペースと情報共有の場所に」

店内を見せてもらうと…。

シモグチ洋服店 下口十吾さん:
レジの裏も全部(ひびが)ずっと入っているんですよね。

刻まれていた地震の爪痕。

シモグチ洋品店 下口十吾さん:
(家族の)誰も亡くならないで本当によかったなと。

周囲に営業している店舗はなく、人も少ないこの地区で、なぜ営業を再開したのでしょうか?店主の下口さんは…

シモグチ洋服店 下口十吾さん:
やれるだけのことはやりたいなと思って開けたんですけども。
歩けるスペースとお客さんが休めるスペースと情報共有の場所でいいかなと。
避難所にずっといてもみんな晴れないというか、出かけてくるので、ここ来て話して。
自宅避難の方もずっと家にいても怖いし一人で寂しいというのでしゃべっているだけでも全然気が紛れるので。

「つらい避難生活を、一時でも忘れられる憩いの場になれれば…」そんな思いから、再びシャッターを開けたのだといいます。

しかし、営業面では影響も…。それが、学校制服の受注がないことです。

シモグチ洋服店 下口十吾さん:
ここは門前中学校さんの指定校の販売店になります。
――去年の今ごろは試着室を誰かが使っていた?
そうですね。年明けだったら小学校の制服だったりとか中学校の制服。
――今年はまだ誰も(着ていない)?
まだ誰もなんです。それどころではないです

例年であれば、学生服やランドセルを買いに来る子供たちでにぎわうこの時期。
今年、そうした風景は、見られなくなっています。
それでも取材中…

男性客:
大丈夫だったお店?あぁよかったね。

シモグチ洋服店 下口十吾さん:
開けとけば来てくれるお客さんいっぱいいますので、肌着とかお客さんに買っていってもらえて。

避難所で入浴できるようになったことで、最近は肌着やタオルを買いにくる客が増えてきたといいます。

家族7人で避難生活 思いはひとつ「ちょっとずつ…」

そんな下口さんを支えているのが家族の存在です。

店に隣接する住居部分も深刻な被害を受けました。
そのため今は、店の倉庫に布団を敷き、家族7人で避難生活を送っています。

長女の凛奈さんは市役所の職員。震災後、帰宅するのは3日に1回で、この日も市役所で仕事中。
代わりに店を手伝ってくれているのが3人の息子たち。
地震後、散らかった商品を率先して片付けてくれたといいます。

店主の十吾さん、長男・隼汰さん、三男・碧斗くん、次男・凱叶さん
店主の十吾さん、長男・隼汰さん、三男・碧斗くん、次男・凱叶さん

――集団避難に関してご自身のお子さんは?
父 下口十吾さん:

うちは同意していなくて。

集団避難しなかった理由について次男で中学3年生の凱叶さんは…。

次男 凱叶さん:
勉強も大事なんですけども、家族とか家とかも心配で、そっちの方を優先したいという自分の気持ちが強くて、残ることを決めました。

家族を優先したいという思いで自宅に残ることを決めたという凱叶さん。
そんな下口さん家族に現在の思いを聞いてみると、1つの同じ言葉が返ってきました。

長男 隼汰さん:
ちょっとずつ改善していって。
父 下口十吾さん:
ちょっとずつ・・・。
次男 凱叶さん:
ちょっとずつ良くなる。
少しずつみんなで手を取り合ってやっていければ・・・
1年後にはいい生活が待っているんじゃないか。そういう思いで生活しています。

「ちょっとずつ進んでいけば、街は良くなる」
そう信じ、前に進もうとする家族。
そんな下口さんのお店でひとときを過ごした客は…「ありがとう」の言葉とともに店を後にしました。
(めざまし8 1月17日放送)