マンションやビルなどにある “エレベーター”。利用する際には開閉や階数のボタンを押して操作している。

そんなボタンだが、車いす使用者用の“低い位置に設置”されたボタンを気にかけたことはないだろうか?かご内では戸(扉)の横にではなく左右の壁に。そして、エレベーターホール(乗降ロビー)でも、一般的な高さにあるものと共に、低い位置に設置されているのだ。

しかし、もしかしたら車いす使用者でなくても使ったことがある人もいるかもしれない。実際、時折「急いでいるから」「早く来てほしいから」と押す人を見かけるのだ。では、このボタンを押したことで、一般用とはどんな違いがあるかを知っているだろうか?

そこで、そんな「低い位置に設置されたエレベーターのボタン」について、一般社団法人日本エレベーター協会の事務局担当者に教えてもらった。

戸の開放時間が“約10秒”

ーーなぜ低い位置にもボタンが設置してあるの?

この低い位置にあるボタンは、一般的な位置にあるボタンとは別に、車いす使用者が操作しやすいように設けられています。

一般的に、エレベーター待ちをするときに押す上下ボタンを「車いす専用乗場ボタン」。かご内にある行き先階や戸の開閉を操作するボタン盤を「かご内車いす専用操作盤」と呼んでいます。

これらのボタンは「行き先の階数ボタン」と「開閉ボタン」を、それぞれ床面から約1000mmの高さに設けることを推奨しています。また、「車いす専用乗場ボタン」「かご内車いす専用操作盤」等の機器の周辺には、「国際シンボルマーク」(障害のある人々が利用できる建築物や施設であることを示す世界共通のマーク)を設けており、一般的な位置にあるボタンとは異なることを視覚的にも認識することができます。

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ーー低い位置と一般的な位置にあるボタンに、形や材質などで何か違いはある?

ボタン自体に相違はありません。各メーカーの判断でバリエーションがある場合はあります。


ーー運行での違いはどうなの?

「車いす専用乗場ボタン」そして「かご内専用操作盤」のボタンは、開放時間について、車いす使用者を考慮して“10 秒程度とすることが望ましい”と(協会で)規定運用しています。一般的な位置に設置しているボタンは、各社で異なりますが3~5秒程度で設定されていることが多いため、戸開放時間が数秒長くなっております。

手すりの上にあるのが「かご内車いす専用操作盤」(イメージ)
手すりの上にあるのが「かご内車いす専用操作盤」(イメージ)

ーー同時に押した場合はどうなる?

一般的に「車いす専用乗場ボタン」「かご内専用操作盤」のボタンが優先され、かごの戸開放時間が“約10秒”で運用されます。「早く来てほしいから」と押すと、逆に運行効率は下がることになります。

長押しや連打しても変わらない

位置だけでなく戸の開放時間が長くなるという運行にも、車いす使用者向けに工夫があることが分かった。他にも、一般的に使うボタンを含め普段利用している中での気になる点を聞いてみた。


ーー閉めるボタンを長押しすると何か変化はあるの?

戸の閉まる速度を含め、1回押した時と変わらないです。


ーー閉めるボタンを連打する人を時折見かけるが?

1回目の「閉ボタン」押で反応しているので、戸の閉まる速度を含め、1回押した時と変わらないです。また、連打することが常態化することにより、ボタンやその周辺機器の劣化が進む可能性があります。

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ーー行き先階ボタンを押し間違えた場合、キャンセルはできる?

すべてのエレベーターに付加されているわけではありませんが、最近では「登録済み呼び取消し機能(行先階ボタンの押し間違いをキャンセルする機能)」が付加されている場合もあります。ただし、同機能がエレベーターに付加されている旨の表示は、いたずら等による乱用を防ぐためにも基本的にしていません。


ーー知っておくと良いエレベーターボタンの知識を教えて。

地震の揺れを感じた際、乗っている方は走行状況を認識できないので、先ずは「行先階ボタン」を全て押すことで、エレベーターが最寄り階に到着します。



日本エレベーター協会によると、揺れを感じると最寄り階で自動的に停止する安全装置がついたエレベーター(地震時管制運転機能)もあるが、どのようなエレベーターでも「利用中の人は “すべての” 行先階ボタンを押し、最初に停止した階で降りてください」とのこと。

そして、万が一閉じ込められた場合は、無理に脱出をしようとはせずに、かご内に設置されている外部と連絡がとれる装置(インターホン)を使って連絡を取り、救出を待つことが良いという。

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低い位置に設置されているエレベーターボタン。車いす使用者がエレベーターを利用しやすいように、押すと戸の開放時間が長くなるように設定されているとのことなので、一般的には使わない方がよさそうだ。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。