2024年辰年、注目度急上昇の日本酒がある。それは、2023年のG7広島サミットで各国の首脳たちに振る舞われた「龍勢」という名の濁り酒。辰年とサミット効果を追い風に、注目度が上がる酒蔵を取材した。

12年に一度、「辰年」に飛躍する酒蔵

五十川裕明 記者:
広島・竹原市の酒蔵にやってきました。のれんに“龍”が描かれています。今、この酒蔵は昇り龍のような勢いがあるようです

五十川裕明 記者
五十川裕明 記者
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1863年創業から160年の歴史を持つ竹原市の藤井酒造。冷え込みが増した1月、代表銘柄の日本酒「龍勢」の作業が大詰めを迎えている。

複数の種類がある代表銘柄「龍勢」
複数の種類がある代表銘柄「龍勢」

藤井酒造 5代目・藤井善文 会長:
辰年は12年に1回なので、今年(2024年)をきっかけに飛躍をしていきたいと思っています

なぜ完売状態の濁り酒がサミットで?

「龍勢」は2023年5月、G7広島サミット初日のワーキングディナーで各国の首脳たちに“乾杯酒”として振る舞われ、注目を浴びた。

2023年5月、G7広島サミットのワーキングディナー
2023年5月、G7広島サミットのワーキングディナー

ところが、藤井会長にはある疑問が…

藤井酒造 5代目・藤井善文 会長:
なぜこの時期に活濁酒(かつだくしゅ)なのかと思ったんですけどね。毎年2月に販売してすぐに完売してしまう商品なので、蔵には在庫がなかったんです。どこに酒のストックがあったんだろうと、不思議なところでした

複数ある「龍勢」ブランドのうち、実際にサミットで提供されたのは、発泡性のある濁り酒「活濁酒」。本数と販売店を限定し完売状態だったため、サミットの後、全国から殺到する注文に応えることができなかった。

藤井酒造 5代目・藤井善文 会長:
広島の酒で乾杯していただいたということ、そして私どもの「龍勢」で乾杯していただけたことがすごくありがたいです。味はスッキリしています。甘くないんですよ。だから食事と合わせて飲んでいただくスタンスの酒です

サミットで振る舞われた発泡性のある活濁酒
サミットで振る舞われた発泡性のある活濁酒

2月出荷を前に全国から注文殺到

2月の出荷を前に、すでに取引のある専門店には全国から注文が殺到しているという。出荷が迫る中、さらに活濁酒の発酵を促し、持ち味の辛さを引き出すため、取材した1月9日は大きなタンクから1日で2,200本分を瓶に詰め替えていた。

藤井酒造 6代目・藤井義大 社長:
G7広島サミットの影響が今年の活濁酒にどれだけ出るのか、どきどきしている感じですね

追い風に乗る藤井酒造だが、実は近年の豪雨災害で2018年と2021年、二度の浸水被害に見舞われ存続の危機にも直面した。

藤井酒造 5代目・藤井善文 会長:
皆さんに勇気づけてもらった。同業者、飲食店、酒屋、いろんな人に助けられて飲んでいただいて今があると思います。この勢いを続けていきたい

今シーズンからすべての酒を昔ながらの製法に戻した藤井酒造。12月の売り上げが過去最高となるなど“昇り龍の勢い”を取り戻している。
注目が集まる「龍勢」の活濁酒は、2月上旬以降に販売される予定だ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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