G7広島サミットでワーキングディナーが開かれた宮島の老舗旅館。国内外の要人を魅了してきた奥座敷とは…。また首脳パートナーたちが身につけた折り鶴ブローチ、贈呈品の万年筆など脚光を浴びた県産品を紹介。

伊藤博文や大隈重信も宿泊

古くは初代内閣総理大臣・伊藤博文に、大隈重信など数々の文化人や著名人が宿泊してきた廿日市市宮島の老舗旅館「岩惣」。

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近年も要人たちが訪れている。2004年には小泉純一郎元首相が岩惣の穴子飯に舌つづみ。

小泉純一郎 元首相:
いい味だ。うーん、おいしい

2004年3月、「岩惣」を訪れた当時の小泉首相
2004年3月、「岩惣」を訪れた当時の小泉首相

また2016年のG7広島外相会合のときは「離れ」の一室がワーキングディナーの会場になり、当時は外務大臣だった岸田首相が各国の要人を迎えた。

「離れ」は一室一棟の平屋建てで、伝統建築があしらわれている。もみじ谷公園の景観に溶け込んだ、まさに“宮島の奥座敷”とも言える場所だ。

初日の夕食会でG7首脳をもてなす

国内外の要人を魅了してきた宮島の奥座敷「岩惣」について、掘り下げてみよう。

場所は厳島神社から徒歩3分、手つかずの自然が残る弥山の麓にある。江戸時代末期に茶屋として始まり、夏目漱石やヘレンケラーなど名だたる偉人が宿泊してきた。

創業は江戸時代末期
創業は江戸時代末期

現存する母屋が建てられたのは1892年(明治25年)。

趣のある玄関は、石の柱を深く埋め込んで造ったという石畳。独特の風合いを漂わせる梁(はり)や天井には、すべて弥山のマツが使われている。

岩惣・7代目女将 岩村玉希さん:
柱には松やにが付いています。昔のいい材をたくさん集めて造られたと聞いています

2016年取材
2016年取材

歴史的な場にふさわしい伝統と格式。岩惣は、2023年のG7広島サミットで各国首脳の“もてなしの舞台”となった。初日の5月19日に夕食会が開かれ、「外交安全保障」と「核軍縮・不拡散」について議論。岸田総理が発表した核軍縮に関する「広島ビジョン」のもととなる話し合いが行われた。

5月19日、G7広島サミット初日のワーキングディナー
5月19日、G7広島サミット初日のワーキングディナー

乾杯の日本酒は竹原市の「龍勢」

そのワーキングディナーの乾杯酒に、二度の豪雨災害から立ち上がった蔵元が選ばれた。竹原市の藤井酒造で醸造された「龍勢」である。

藤井酒造は2018年と2021年の二度、豪雨による浸水被害に見舞われた。

それでも、地元の人々や多くの日本酒ファンに支えられ、伝統的な自然由来の酒造りを徹底してきた。

藤井酒造・5代目 藤井善文 社長:
驚いています。本当にたくさんの方に応援してもらっているので、それに応えるようさらに頑張って元気にやっていきたいと思います

創業銘柄である「龍勢」は、かつてその年で最も出来の良い純米酒だけが名乗ることを許されたそう。“純米酒”にこだわり続け、数々の品評会で名誉に輝いた味を現代に受け継いできた。

G7サミットで提供された「龍勢」は、フレッシュさと辛口の味わいが特徴で、食事にも適した日本酒だという。

試飲した五十川記者「フルーティーで、軽くて飲みやすい」
試飲した五十川記者「フルーティーで、軽くて飲みやすい」

折り鶴ブローチや赤い靴下も外交に活躍

今回のG7サミットでは、広島のグッズも外交の場で活躍した。脚光を浴びた品々を3つ紹介する。

1つ目は、裕子夫人とアメリカのジル・バイデン大統領夫人など首脳のパートナーが身につけていた“折り鶴の形をしたブローチ”。

岸田裕子夫人
岸田裕子夫人
ジル・バイデン大統領夫人
ジル・バイデン大統領夫人

広島市西区のビーズ会社「トーホー」が、自社製造のグラスビーズを一粒一粒つなぎ合わせて手づくりで製作した。ガラス製のホワイトとゴールドのビーズが放つ透明感と輝き…。平和の祈りが込められた折り鶴ブローチは、サミット終了後に受注を始め、ひと月50個限定で生産されている。

ビーズで作られているので、折り鶴の羽を曲げることもできる
ビーズで作られているので、折り鶴の羽を曲げることもできる

2つ目は、イギリスのスナク首相が5月18日の日英首脳会談で披露した“真っ赤な靴下”。

5月18日、イギリスのスナク首相(中央)と岸田首相(右)
5月18日、イギリスのスナク首相(中央)と岸田首相(右)

地元のプロ野球チーム「広島東洋カープ」のチームカラーの赤い靴下に“Carp”のロゴマークが刺しゅうされている。

真っ赤なカープソックスを披露
真っ赤なカープソックスを披露

このカープソックスは「靴下屋」の広島限定商品。SNSを中心に話題となり、5月21日には県内5店舗で完売状態となった。スナク首相の粋な計らいに、カープファンは心をつかまれたようだ。

贈呈品の万年筆…各国が選んだ色は?

3つ目は、サミットで注目される“贈呈品”に選ばれた「万年筆」。

彩雅(いろみやび)万年筆
彩雅(いろみやび)万年筆

呉市天応に本店を置くセーラー万年筆の「彩雅」シリーズが、岸田総理から各国首脳へ贈呈品として渡された。

呉市天応のセーラー万年筆本店
呉市天応のセーラー万年筆本店

ペン先は呉市天応の工場で製造され、21金の独自の加工技術と弾力のある書き味は海外からも高い評価を受けている。持ち手の部分は「石目塗(いしめぬり)」という伝統的な漆塗りの技法が施され、凹凸感を演出。ペン先には特別にそれぞれの首脳のイニシャルやファーストネームが彫刻されたという。

セーラー万年筆・山口浄猛さん:
お使いいただくにふさわしい世界的にも高い品質と書き心地の良い万年筆ということを認めていただけたことに、感謝を申し上げたいです

持ち手の色は各国で選んだ色が異なり、1番人気は「深藍」と呼ばれる威厳を感じさせる青。アメリカのバイデン大統領やイギリスのスナク首相、カナダのトルドー首相が青を、フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相が「蘇芳」と呼ばれる高貴な赤を、イタリアのメローニ首相が「淡香」と呼ばれる上品なベージュを選んだ。

G7各国首脳が選んだ万年筆のボディの色
G7各国首脳が選んだ万年筆のボディの色

開催地・広島の食と伝統を詰め込んだ“おもてなし”は、G7各国の結び付きを強める大切な役割を果たしたと言えるだろう。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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