暖冬といわれる今年、12月になっても多くの登山客があった東京・奥多摩。

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「めざまし8」はその山を守る「警視庁青梅警察山岳救助隊」の師走の出動に密着。年の瀬の東京の山に潜む危険を捉えました。

密着・山岳救助隊

紅葉も終わり葉が落ちて、山が遠くまでよく見える、“今だからこその景色”が楽しめる、冬の登山。

しかし、多くの危険も潜んでいます。

青梅警察署 山岳救助隊 田代学隊員:
道迷い遭難が入ったので、今から一旦奥多摩交番に集結してそのルートで行くか、また、遭難者がどこにいるかというのを確認してから向かいたいと思います。

登山中の男性から遭難の通報があったのは、標高759mの高水山。

隊員:
高水山の山頂から南側、平溝側もしくは平溝林道側に細い道ですよね、1mくらいの道であれば、降りていく道がありますのでそちらに入ってしまったのかもしれないですね。

山の斜面を水平移動するいわゆる「トラバース」で、最短距離で遭難者の元に向かいます。道中には大きな岩もあり、常に危険と隣り合わせの救助活動。

捜索現場には今にも転がり落ちそうな巨大な岩も
捜索現場には今にも転がり落ちそうな巨大な岩も

捜索を始めてから30分、遭難者の男性を発見しました。田代隊員らが、男性の名前を呼びます。

声のした方向を指さす隊員ら
声のした方向を指さす隊員ら

遭難者「はーい」
田代隊員「発見です」

男性の救助に向かう隊員ら。男性は、断崖絶壁の場所で身動きが取れない状況に陥っていました。

断崖絶壁で身動きが取れなくなっていた男性
断崖絶壁で身動きが取れなくなっていた男性

幸い、けがもなく、水分も取っていたため、無事山岳救助隊と共に下山する事ができました。

登山歴10年だという40代男性。なぜ断崖絶壁の場所に迷いこんでしまったのでしょうか?

遭難者:
実際に登山しているときにルートに、“マーク”があったので、この道が正解だと思って進んでいったんですけど。思い込みが一番大敵だったなと…。

男性が見たという“マーク”とは、木にまかれたピンクや黄色のテープ。これは、林業用の伐採の目印のテープで、いわゆる「道しるべ」ではないといいます。

山岳救助隊 田代学隊員:
登山道のマークと勘違いしてしまう人が結構多いので、奥多摩では同じような事例で道迷いにいたるケースが多いです。

想定外の“日没”で高校生4人組が遭難

冬のこの時期、登山で最も注意が必要なのは、“日暮れの早さ”だといいます。

取材中、「高校2年生の4人組が遭難した」との通報が入りました。すでにあたりは真っ暗です。

遭難したのは、標高1109mの鋸山の山頂付近。暗闇の中、頼りになるのはベッドライトの光だけ…。

視界はヘッドライトのわずかな光のみ
視界はヘッドライトのわずかな光のみ

田代隊員「うわ、崩れてんなこれ…、危ないよこれ」

暗闇の中、救助隊が通った場所
暗闇の中、救助隊が通った場所

崖崩れが起きた場所を進むなど、最短ルートで進むため、暗闇の中、危険な場所を通って向かいます。

市川隊員「分岐って言ってましたよね?」
田代隊員「分岐って言ってましたよ、そこから動かないように言ってあるんで」

遭難者がいるはずの場所に向かって、隊員が「おーい」と声をかけると、「はーい」と返ってきました。すぐさま声の方向に向かいます。

わずかな視界と声だけを頼りに遭難者を探すという、プロである山岳救助隊にとっても困難を極める“暗闇”での救助。

暗闇の中に小さく光が
暗闇の中に小さく光が

暗闇の中、見つけ出したほんの小さなライトの明かり…。遭難した高校生4人は寒さに耐え、じっと救助隊を待ち続けていました。

市川隊員「転んだ子は、けがはないかな?」
遭難した高校生「大丈夫です」
市川隊員「ライトは一個しかない?」
遭難した高校生「全員あります」
市川隊員「じゃあつけよう」

田代隊員「寒い人は着れるだけ着て」
市川隊員「寒い?」
遭難した高校生「寒いです」
市川隊員「かっぱ貸しますよ」

寒さの中救助を待ち続けた高校生4人組
寒さの中救助を待ち続けた高校生4人組

田代隊員「ヘッドライトある?」
遭難した高校生「ヘッドライトないです」
田代隊員「携帯のライトか」

田代隊員が後から高校生らに話を聞いたところ、「どこから入山して、どこに下山する」という計画を明確に決めておらず、日が落ちるのが早いなどの感覚もなかったといいます。

日没が早まることによって起きてしまった、遭難。
隊員にとっても、崖崩れが起きていた場所を登って進むなど危険が伴った救助活動でした。

一刻を争う重傷者の救助

この日、一気に緊張感が高まったのが、「重傷者」の通報。標高1363mの川苔山に向かいます。

遭難者は、大けがをしており、上空にはヘリコプターが待機。一刻を争う事態です。

すぐに運べるよう上空にはヘリコプターが待機
すぐに運べるよう上空にはヘリコプターが待機

隊員「けが人、風が強くなります。ヘリコプターのダウンウォッシュで1名がホイストで救助活動に入るということなので、ダウンウォッシュ気をつけてください」

ダウンウォッシュとは、ヘリコプターから吹き下ろされる風のこと。石や木の枝が飛んでくることもあり注意が必要なのだといいます。

現場に到着すると、猛烈なダウンウォッシュが吹き付けていました。

男性は頭部からの出血で顔面血だらけ
男性は頭部からの出血で顔面血だらけ

けがをしたのは、埼玉県から登山に訪れていた50代の男性。頭部からの出血で顔面が血だらけに、さらに足にも大けがをしていました。

隊員「開放性骨折だと思います」
隊員「痛いよね、頑張ろうね、靴ひもも切っちゃって」
けがをした男性「うぉー!痛い、痛い、あぁぁ…」
隊員「頑張ろう、頑張ろう、お父さん!」
隊員「自分で落ちたの? 自分で転んだ?足が滑ったのでいいのかな?(男性がうなずく)頑張ろうね、助けるからね」

男性は足を滑らせ、約5mの高さから滑落したのだといいます。
そばには、共に登山していた妻の姿が。時折、涙をぬぐいながら夫に呼びかけます。

何度も夫に向かって声をかける妻
何度も夫に向かって声をかける妻

けがをした男性の妻「みんな助けてくれるからね、頑張ろう。もうちょっとだからね、あとちょっと頑張ろうね…ありがとう」

無事ヘリコプターで救出される
無事ヘリコプターで救出される

準備が整い、いよいよヘリコプターへ。男性は青梅市内の病院へ搬送され、その後、一命を取りとめたということです。

山岳救助隊 田代学隊員:
山岳遭難救助は、警察の救助隊だけでは完結し得ないものだと思っています。
登山者の方には遭難した方のために、各機関が全力で救助して治療して、また登山道を整備しているということを念頭に入山して頂ければ。また少し、装備を見直してもらって、絶対にけがしないで帰ってくるという気持ちを持っていただいて、山に入っていただければ遭難は減るのかなと思っております。
(めざまし8 12月26日放送)