広島県東広島市でこども園の送迎バスが多重事故を起こし、園児など10人が重軽傷を負った事故。バスのドライバーは77歳と高齢で、ドライブレコーダーには、ウトウトしていた姿が映っていた。送迎バスのドライバーはなり手が不足していて、高齢者に頼らざるを得ない事情がある。

77歳のドライバーは体調不良を訴え、ウトウト

12月18日午後、東広島市で、こども園の送迎バスが突然、中央分離帯を乗り越えて反対車線を逆走。車4台と衝突し、園児など10人が重軽傷を負った。

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バスを運転していたのは77歳の男性で、当日、体調不良を訴えていたことが分かっているほか、ドライブレコーダーには、当日朝から、ウトウトしながらハンドルに覆いかぶさる様子が映っていたという。

こども園が保護者に22日に開いた説明会では、事故を起こした77歳のドライバーに対しては、これまでも、バスに乗っていた園のスタッフなどからクレームが出ており、バスの運行会社には伝えていたという。

認定こども園 さざなみの森 松井雄一郎園長:
安全な運行を求める中で、やや強引な運転が見られる場面もあり、委託会社に指導を求めることも複数回、履歴があった

バスの運行を委託されていた会社は、テレビ新広島の取材に対し、ドライバーが急ハンドルを切るといった園からの苦情が2023年に2回あり、本人に改善するよう指導していて、ドライバーは反省している様子だったとしている。

ドライバーの不足による高齢化が進む中、この会社では、定年制を設けておらず、事故を起こした77歳になるバスの運転手は、これまで約8年にわたり、この園で勤めていた。

事故を起こしたドライバーが所属している新中央交通 松田泰典総務部長:
年齢によって、雇用制限等は定めていませんので。健康面と、もしくは運転技量等に問題があった場合、ご本人と相談している

“時間が離れた短時間勤務”に人が集まらない

別のこども園の例を見てみる。

広島市のこの認定こども園では、ドライバーを給料制で直接雇用している。グループで運営する5つの園のうち、3つの園の園児をこの1台のバスで送迎しているほか、遠足などの園外活動も、このバスを利用している。園の代表は、運転手確保の難しさを訴える。

認定こども園「くすの木」 堀江宗巨代表:
朝だけ、午後だけ、という短時間で、しかも勤務の時間が離れているから、非常に働きにくい仕事で、募集をかけても集まりにくいというのがありますね。そのため、今頑張って運転されている方にお願いせざるをえなくて、全体的には高齢化しているというのが実情だと思いますね

この園では今回の事故を受けて、保護者に対し園バスの安全管理体制を示し、理解を求めたという。ドライバーが体調不良の場合は、代表の堀江さんが直接連絡を受け、堀江さん自らが代わりに運転することにした。

送迎バスがあることは、園児の募集などで保護者への大きなアピールポイントとなるが、事故のリスクも考えると、今後もバスを運行し続けるか、再検討しているという。

認定こども園「くすの木」 堀江宗巨代表:
保護者の負担軽減、それから子供たちの保育の内容が広がっていくというメリットがあります。一方、デメリットとしては今回のような事故のリスクがありますので。この両方を検討して結論を出していきたい

この園では、今回の問題を受け、ドライバーの年1回の健康診断を「2回」にすることを検討しているとのこと。

ドライバー不足は、様々な業界に及んでいるが、子育てに関する部分だけに、何よりも安全性を第一にした対策が求められている。

(テレビ新広島)

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