深刻な人手不足が続く「バス業界」。運転手を確保しようと、広島県内のバス事業者が合同で就職フェアを開いた。例年は年1度の開催だが2023年初めて、夏と秋の2回実施。路線を維持するための苦悩を取材した。
年2回は初、バス運転手の就職フェア
11月22日、広島市中区で開かれた、バス運転手に特化した就職フェア。路線バスや高速バスなど県内の様々なバス事業者が、企業の枠を超えて集結した。
この記事の画像(14枚)例年は年に1度の開催だが、2023年初めて夏と秋の2回実施。背景にあるのは深刻な人手不足だ。
広島電鉄 人事課・安部由理子さん:
拘束時間が長時間であったり、ちょっと厳しい印象を持たれている
芸陽バス 総務課・花岡義和 課長:
あと10年は、現在の50代の運転手でもっているかなと思いますが、そのあとはなかなか難しいのではないか
運転手不足で社員が休日返上も…
100台以上の車両を持つ県内の路線バス事業者に問い合わせたところ、多くの会社で慢性的に10人以上の運転手が不足し、路線を維持するため社員が休日返上で働く会社も複数あった。
【広島県内のバス運転手の不足人数(TSS調べ)】
広島電鉄(524台)…「余裕があるわけではない」
広島バス(214台)…15人以上不足
広島交通(191台)…30人不足
中国ジェイアールバス(127台)…20人以上不足
芸陽バス(103台)…10数人不足
(台数は「広島県バス協会」ホームページより)
この就職フェアは平日の夜、多くの人が来られるようにと仕事終わりの時間帯に開催されたが、空席が目立ち、決して盛況とは言えない状況だ。
高校2年生の参加者:
お客さんと接しながらの仕事になると思いますので、お客さんに失礼があってはいけないし、運転も事故にならないようにと仕事内容は大変そうです
エイチ・ディー西広島・中村広 取締役(運転手歴20年):
私自身、この仕事で子どもを大きくして家を建てて現在に至りますが、十分、自信と誇りを持ってできる仕事だと思います。決して悪い仕事ではないですし、社会の役に立てるのは間違いない
「2024年問題」さらに労働力不足
そんなバス業界が直面しているのが「2024年問題」。2024年4月から時間外労働の上限が規制され、運転手の勤務時間は1日1時間減ることになる。
県内には約3,000人の運転手が働いているが、広島県バス協会は「860人分の労働力が不足する」と見込んでいる。
広島県バス協会・赤木康秀 専務理事:
さらに減便や路線廃止が進むだろうと思われます。運転手はかなり不足していて深刻な状況になっています
“10代バス運転手”による若返り作戦
人材確保に向け、状況を打開しようとしてきたバス事業者の1つが「広島交通」である。
広島交通 運輸課・石井亮三 課長:
2024年4月以降、減便の可能性は十分あるとは思いますが、お客さまのことを考えてできるだけ減便しないように、一生懸命、会社のほうで策を立てています
広島交通では2022年、大型二種免許を取ることができる年齢が21歳から19歳に引き下げられたことを受け、県内初の“10代バス運転手”を誕生させた。
さらに、65歳までだった定年制度を撤廃。女性運転手が働きやすい職場環境にも努めている。それでも、本来必要な定員より30人不足しているのが現状だ。運転手の高齢化も進み、平均年齢は51歳8カ月、初めて50歳を超えた。
広島交通 運輸課・石井亮三 課長:
これから若い人を入れていかないと当社の場合は50代以上の運転手が大半を占めていて、この先、人手不足がますます深刻になっていきます。早急に対策を立てないと困ったことになりそうですね
迫り来る「2024年問題」、そして10年後には運転手の高齢化がもっと深刻に…。バス事業者は大きな危機感を抱いている。
(テレビ新広島)