こう着するリニア中央新幹線をめぐり、静岡市の難波喬司 市長が静岡県の川勝平太 知事の持論を真っ向から否定した。“元側近”による忠告とも受け取れる苦言に、川勝知事、そして静岡県は何を思うのだろうか。

川勝知事の持論を真っ向から否定

12月22日。年内最後となった定例記者会見で静岡市の難波喬司 市長は厳しい口調で批判した。

「常識的に考えて“部分開業”で採算が取れるわけがないと私は思っている。そんなことをすると物凄い金額の赤字が出るだけなので、あり得ない案だと思っている」

難波市長の定例記者会見(12月22日)
難波市長の定例記者会見(12月22日)
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いまだ静岡工区が着工に至っていないリニア中央新幹線をめぐり、川勝平太 知事が“解決策”と打ち出した“部分開業案”のことだ。

JR否定も…川勝知事が唱える“私案”

川勝知事は10月10日の定例記者会見で、こう着するリニア問題について「もし私が、これ大きなビッグイフですけど、JRの意思決定者であれば現在の川勝と膝を突き合わせて話し、その場で“解決策”を出せる自信はある」と豪語。

このため12月12日に開かれた県議会12月定例会の質問戦で議員から“解決策”について具体的に述べるよう追及を受けた。

すると、川勝知事は「現行ルートを前提にした上で、出来るところから、つまり開通できる状況になった部分から開通させることが営業実績となり、解決策となると考えている」「できるところからやるということから、実験線の延伸・完成が1つの例示になる。(計画を)変えることは社長にしかできない」と述べ、“部分開業”こそリニア問題の解決につながるとの認識を示す。

県議会で答弁する川勝知事(12月12日)
県議会で答弁する川勝知事(12月12日)

確かに山梨・神奈川間の“部分開業案”は川勝知事がかつて唱えていた持論だ。

しかし、2022年11月の時点で一度は封印した案のはずであるし、仮に実現したとしても静岡工区にはまったく関係のない話。

それにリニア建設の事業者であるJR東海は“部分開業”を一貫して否定している。

インタビューに応じるJR東海・丹羽社長(11月15日)
インタビューに応じるJR東海・丹羽社長(11月15日)

川勝知事はこうした指摘にも「社長が代わったので、(JR東海の意思が)変わる可能性がある」「みなさん静岡にだけ関心があるからかもしれない。私は東京から大阪までのリニア中央新幹線全体に関心がある」と意に介さないが、誰もが「なぜ」「いま」“部分開業”を主張するのか疑問を抱くのは当然だった。

“部分開業案”を静岡市長が一刀両断

こうした中、この“部分開業案”について見解を問われた難波市長は、まず「国家的事業だがJR東海という民間企業が実施している事業。どのように開業していくのかは事業者が決める話であって、企業の経営に関係ない者が『部分開業がいい』とか言う話ではない。静岡県には関係ない。何で言うのかわからない」と川勝知事を断罪した。

また、川勝知事がぶち上げた“部分開業案”をめぐっては、県議会12月定例会の危機管理くらし環境委員会で県当局が「県の公式見解である」と認めている。

この点についても、難波市長は「さらにわからない。川勝知事が言うのなら、それは“政治家”川勝知事が言っているのだからいいと思うが、県の公式見解というのはわからないというか理解できない」と痛烈に非難。

さらに、川勝知事が“部分開業”をリニア問題の解決策として示したことへの受け止めを聞かれると、「理解できない。市の協議会(静岡市中央新幹線建設事業影響評価協議会)も県の専門部会(静岡県中央新幹線環境保全連絡会議)も環境影響評価をやるために開いているのであって、『部分開業がいいのか』『全線開業がいいのか』という議論をする場ではない。従って、少なくとも静岡市としてはそういう問題に入るつもりはないし、県としてそういう問題について何か言うのは非常に変だと思う」と斬り捨てた。

元側近からの“忠告”に知事は何を思う

難波市長は国土交通省の元技術官僚で、土木工学に精通している。それゆえに川勝知事を支えた県の副知事時代も、副知事退任後の県理事時代もリニア問題について最前線で対応に当たってきたし、川勝知事からの信頼も厚かった。

特に副知事時代は“最側近”として、川勝知事の “理論武装役”を担う場面も多かったが、徐々に蜜月関係は崩れ始め、殊に静岡市長に就任して以降はリニア問題に対する県のスタンスに公然と異を唱えることも目立つ。

“元側近”による忠告とも受け取れる苦言に、川勝知事、そして“元部下”たちは何を思うのだろうか。

(テレビ静岡)

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