広島と岡山を結ぶローカル線、JR芸備線は一部の区間が存廃に揺れている。広島市の大学生らが、その利用促進案をJR西日本などの関係者にプレゼンした。JRの担当者からは「新しい気づきがあった」との声が聞かれた。
“鉄路を未来につなぎたい”
広島経済大学での学生のプレゼンは、国や広島県、JR西日本の、まさに当事者らに対して行われた。
この記事の画像(18枚)広島経済大学の学生:
広島県の鉄路は県民すべての財産です。だから活用方法を県民全員で考える必要があります
JR西日本は10月に芸備線の備後庄原駅(広島県)と備中神代駅(岡山県)間の68.5kmの区間について、存廃を含めた地域交通のあり方を国・地域・JRで話し合う再構築協議会の設置を要請、いくつかの沿線自治体が参加を表明している。
そうした芸備線の現状を知った学生は、実際に現地に足を運んで考えが変わったという。
地方出身だという広島経済大学3年の高倉もなみさんは「広島の鉄道に馴染みがなかった」といい、「廃線の可能性を最初に聞いたときには、たしかにバスのほうが効率的なのかなと」と思ったというが…
広島経済大学3年 高倉もなみさん:
実際に乗って備後庄原に行ったことが、それ自体貴重な体験でしたし、駅舎や電車もすごい歴史を感じられたので、これはできれば残してほしいなと思った
そこで今回、再構築協議会に関わる3者を招き、自分たち若い世代の意見を伝えることにした。
“2024年問題”などを意識
ドイツへのサッカー留学経験がある下所虹輝さんは、その経験をもとに運転席後方にある空間を活用する利用促進案を提案。
ドイツにサッカー留学した下所虹輝さん(3年):
ドイツ鉄道では在来線(近郊鉄道)で自転車の持ち込みも可能です。芸備線で、縦約3m、幅1.5m、高さ約90cmのスペースに自転車3台程度を搭載し、分解や梱包をしていない自転車の持ち込みを許可し、有人改札から乗り降りするのはどうでしょうか
また2024年問題に絡めた、空きスペースの活用策は別の学生からも…。
広島経済大学の学生:
乗車人数の多い時間帯を除いて、荷物を載せて各駅まで運ぶことで、広島県北部の農産物を車内の空き空間を利用して、消費地に直接運ぶことができるのではないかと考えました
この学生は、2024年問題も意識し、トラックドライバーの負担軽減にもつながると訴えた。
また、別の学生は、通勤・通学や貨物輸送、観光面から芸備線が必要だとしたうえで、列車運行会社と線路保有会社を分ける「上下分離」方式や、複数の列車運行会社が走行できる「オープンアクセス」で路線を維持できるのではないかとの考えをプレゼン。
広島経済大学の学生:
上下分離とオープンアクセス 、(鉄道が不利な扱いを受けない)イコールフッティングの観点からの議論を、再構築協議会の場で検討してほしいと思います
JR西日本は「新しい気づき」
学生たちの熱心な発表に真剣な表情で耳を傾け、ノートにメモをとるJR、国、県の担当者たち。
国交省 中国運輸局 地方鉄道再構築推進調整官 遠北俊貴さん:
再構築協議会をもし、つくれば、議論としては、上下分離がいいのか、もっと地域に最適な交通はないのか、そういった観点から議論をしていく
JR西日本広島支社 飯島正泰 課長代理:
非常に新しい気づき、なかなか中にいる人間では思いつかないような意見もいただきましたし、貨客混載やサイクリングトレインは他の線区でも実績があるので、実現の可能性が高いのではないかと考えている
学生は今後も、海外から訪れるサッカーチームを芸備線を利用して観光案内し、SNSで発信してもらうなど、様々なことに取り組んでいきたいと意気込んでいる。
コメンテーター 広島大学大学院 匹田篤 准教授:
学生のアイディアでは、貨客混載、荷物を各駅まで運ぼうというアイディアがすごくいいと思う。そうすると駅に人や物が集まってくる。駅自体の魅力、駅にマーケットができ、駅がにぎわい、駅に行きたくなるというのが、これからの街づくりに欠かせないと思う
国、沿線自治体、JRの再構築協議会が始まれば、3年で結論を出すことになっている。若い視点、アイディアがローカル線の活性化につながるかどうかが注目されている。
(テレビ新広島)