正月休みも明け、2024年の仕事が始まった人もいることだろう。その仕事に行くために、目覚ましやスマホのアラームを朝に設定している人も多いと思うが、鳴ったら一発でスッキリ起きられるだろうか。自信がない人はスヌーズを使っている人もいるかもしれない。
スヌーズとは寝過ごし防止のためにアラームを停止してもしばらくすると再びアラームが鳴る機能のこと。ちなみに、スヌーズ(snooze)とは英語で「居眠り」という意味だ。
最近の目覚ましやスマートフォンでは、スヌーズの間隔を自由に設定できる機能も見かける。そんな機能を利用して、自分なりの目覚ましパターンを設定している人もいると思う。しかし、自由度が上がるほどに、どのように設定したらいいのかという疑問も出てくる。スッキリ起きられるようになる使い方はあるのだろうか。
睡眠障害や不眠症など、睡眠医療を専門とするスリープクリニック調布院長の遠藤拓郎さんに話を聞いた。
スヌーズの間隔は5~10分くらい
――そもそも、スヌーズは使ったほうがいいの?
使ったほうがいいですね。そもそも日本人は圧倒的に睡眠不足。ですから朝、一回の目覚ましで起きようとしても眠くて起きられないのは当然です。スヌーズを使うメリットは、起きるチャンスを増やせることにあります。一回起床に失敗しても、何度かチャレンジして成功すればいいのです。
――特にスヌーズを使ったほうがいい人はいる?
若い人と女性は、より朝が起きられない傾向が強くなるので、使うことをおすすめします。この理由は、若い人のほうが年配の人に比べて眠る力が強いためです。また女性の場合は、女性の特徴である女性ホルモンに眠気を催す作用が強いためです。
一方で、60歳過ぎくらいになれば、スヌーズを使わなくても起きられるようになるでしょう。高齢になると眠る力が弱くなるので、長く眠ろうとしても自然に起きてしまうのです。
――では、どんなふうにスヌーズを設定するのがいいの?
自分が起きたい時間と、実際の起床時間の間にスヌーズが鳴るように設定しましょう。例えば6時に起きたいけれど実際には6時半に起きているとしたら、6時にアラームが鳴るようにし、スヌーズを設定してください。間隔が設定できる場合は、5~10分間隔くらいがいいですね。この時、15分以上にはしないでください。人間は15分で深い眠りに入ってしまうためです。
――「自分が起きたい時間」の前にアラームとスヌーズを設定すればよさそうな気もするが、「自分が起きたい時間と、実際の起床時間の間」にスヌーズが鳴るように勧める理由は?
“起きたい時間(ベスト)”と“実際の起床時間(ワースト)”の間が、起きることが可能な範囲です。起きたい時間と実際の起床時間が一致していなければ、起きたい時間よりも前に設定しても意味がありません。一致していれば、「自分が起きたい時間」の前に設定してもいいでしょう。
――「自分が起きたい時間と、実際の起床時間の間」にスヌーズが鳴るように設定して生活を続けていけば、次第にスヌーズが鳴る前に起きられるようになる?
結果的にはそうなります。
休日は時間帯を変えて設定
――「休日は遅く起きる」という人も多いと思うけれど、アラームとスヌーズを使い分けたほうがいい?
休日に、仕事がある日より遅く起きているという人は、休日だけアラームとスヌーズの時間帯を変えてください。例えば仕事がある日は6時半起きだけど休日は10時に起きているという人は、9時半にアラームを設定し、10時に起きられるようにスヌーズを設定しましょう。
本来、起きる時間を遅くする“寝だめ”はよくないのですが、もう何年も休日に遅起きで“寝だめ”をする生活をしている人が、休日に6時半に目覚ましをかけても効果は薄いので、せめて寝すぎないようにしましょう。
ちなみに、睡眠時間は平均的に7時間がいいという結論が出ていますが、個人差はあります。自分にとってちょうどいい睡眠時間を知りたければ、1カ月くらい、休日と平日の睡眠時間を調べてみてください。それが一致していれば、丁度良い睡眠時間を取れていることになります。一致していない人は、休日に“いい寝だめ”を実践してください。
――“いい寝だめ”とは何?
同じ睡眠時間を取る場合でも、早く寝て早く起きるのが“いい寝だめ”です。例えば、夜中3時に寝て10時に起きるよりも、夜11時に寝て6時に起きるほうがいい。早く起きれば寝る時間も早くなり、翌日起きるのが楽になります。
よく、早寝早起きというけれど、サイクルの順番は“早起き早寝”。いくら早く床に入ったとしても、その日遅起きをしていたら眠くならずにもがくだけですから、遅起きの早寝では意味がないのです。
休日は早起きできる予定を入れる
――“早起き早寝”のサイクルをつくるコツはある?
一番大切なのは、休日に早起きできるかどうかです。そのためには、ワクワクできるような予定を入れることですね。例えば、日曜の朝にゴルフのラウンドに行くとしたら、日曜は早起きしますよね。すると、夜には早く眠くなるので、早寝になり月曜の朝に起きるのが楽になります。
結局、起きるのに必要なのは“外圧”なんです。学校や会社に遅刻すれば罰則がある。すると、コルチゾールというストレスホルモンが上がって起きやすくなります。休日に起きられないのは“外圧”によるモチベーションがないことによりコルチゾールが上がってこないためです。
そこで、あえてモチベーションを作ってしまうことが有効なのです。ポイントは、気が重くなるような予定ではなく、どれだけ起きるのが楽しみになる予定を入れられるかですね。
――冬に起きづらくなる人も多いと思う。起きやすくするには?
冬は暖房のタイマー機能を使って、起きる時に布団から出ても寒くないくらいの室温にしておくと起きやすくなります。人間は、体温が急激に下がると眠くなり、体温が上がってくると目覚めます。夏は暑くて起きてしまいますが、冬の朝は室温が低く体温も上がりづらいため起きにくいのです。
――ちなみに、先生はどうやって起きているの?
僕の部屋は5時半になると自動的に遮光ブラインドが開いて、シーリングライトが5時から5時半にかけて徐々に明るくなり、5時半になるとシーリングライトについた目覚ましが鳴り始めます。そのうえで、スヌーズに設定した枕元のスマートフォンのアラームが5時半から鳴り始めます。空調はつけっぱなしにしていて、冬は18℃に設定しています。
早起きが楽にできるようになれば、電車が混み合う前に出社することもできるし、早く仕事を始めることができて時間にも気持ちにも余裕が生まれるし、いいことしかありません。お金をかけてでも早起きしやすい環境を整えて損はないと思いますが、まずは手軽にできるスヌーズと空調から始めてみてはいかがでしょうか。
遠藤さんのアドバイスを参考に、休日の予定で早起きサイクルを整えつつ、目覚ましやスマホのスヌーズ機能を利用してスッキリ起きられる生活を目指したいところだ。