岸田内閣の2023年をFNN世論調査で振り返る本企画。前編は上半期をお届けする。

支持率グラフは1つの山を描いた2023年

2023年、岸田政権は、発足から10月で3年目に突入した。世論調査で岸田政権の2023年は支持率のグラフを見ると、1つの山の形を描く形となった。

図:2023年の岸田内閣の支持率
図:2023年の岸田内閣の支持率
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30%台の支持率で始まった内閣支持率は、5月の広島G7サミットに向けて、右肩上がりが続き、50%台を回復。岸田首相は順調な政権運営を進めた。

ところが、6月以降、潮目が変わる。きっかけは、マイナンバーカードでの紐付け記録ミスの発覚だった。政府の個人情報管理の信頼が揺らぐ事態で、支持率の逆ドライブが始まる。

9月、副大臣・政務官に「女性起用ゼロ」という内閣改造で、支持率は下落。10月から11月にかけて、経済対策を決定するも、「増税めがね」の言葉に象徴される厳しい評価にさらされ、内閣支持率は政権運営の“危険水域”ともいわれる20%台に落ち込んだ。

さらに年末には、自民党の派閥の政治資金疑惑が、追い打ちをかける形で、過去最低を更新した支持率は22.5%にまで落ち込んだ。

「卯年は増える」年始会見で「異次元の子育て支援」を表明 支持8割超 

2023年(卯年)1月4日の年頭会見。
岸田首相は、「『卯(うさぎ)』は『茂(しげる)』を意味し、繁殖する、増えることを示すと言われている」と切り出した。その言葉通り年明け以降、内政・外交で掲げた政策で支持率が「増える」展開が続いた。

年頭会見で新たに「異次元の少子化対策」を打ち出し「子ども関連予算を倍増させる」と掲げた。この姿勢に1月の世論調査では、82.5 %が「賛成」と圧倒的に支持。3月にとりまとめた「次元の異なる少子化対策」には、児童手当の規模拡大、育児サービスの拡大、男女とも育児休業の取得の促進などの方針が盛り込まれた。この「次元の異なる少子化対策」の具体化について4月の世論調査では「評価する」が54.1%と過半数が支持した。

図:2023年1月世論調査「異次元の少子化対策のために子ども関連予算を倍増」
図:2023年1月世論調査「異次元の少子化対策のために子ども関連予算を倍増」

1月世論調査「異次元の少子化対策のために子ども関連予算を倍増」
賛成 82.5%
反対 13.2%

図:4月世論調査 「次元の異なる少子化対策への評価」
図:4月世論調査 「次元の異なる少子化対策への評価」

4月世論調査「次元の異なる少子化対策への評価」
評価する  54.1%
評価しない 38.4%

物価高対策 3月に低所得者世帯に3万円給付…52%が「評価」

2023年は1年を通して、消費者物価指数がプラスとなり、物価高騰が続いた。岸田政権は3月、低所得世帯を対象に3万円の給付を決定、くわえて住民税非課税世帯の子ども1人当たり5万円の支給も決定した。

11月に決定した非課税世帯への7万円給付の物価高対策を含む経済対策は、世論調査で7割が「評価しない」と答えているが、3月当時、物価高対策の3万円の給付金についての世論調査では「評価する」が52.4%と過半数を超えていた。3月に物価高が進む中で、低所得者を対象とした給付金は3月当時、内閣支持率にプラスに働いたとの調査結果がでた。

春闘に向け、賃上げ要請に動く岸田首相を71%が「評価」

さらに、労働団体「連合」によると、30年ぶりの高水準となった、平均賃上げ率3.58%の結果をもたらした春闘に先立ち、岸田首相が政府として経済界に賃上げを働きかけた姿勢は、3月の調査では、7割以上が「評価する」と回答。こちらも内閣支持率の上昇に貢献した。

図:3月世論調査「低所得者世帯への3万円給付、子ども1人あたり5万円支給への評価」
図:3月世論調査「低所得者世帯への3万円給付、子ども1人あたり5万円支給への評価」

3月世論調査「低所得者世帯への3万円給付、子ども1人あたり5万円支給への評価」
評価する  52.4%
評価しない 44.0%

図:3月世論調査「岸田首相が経済界に賃上げ実施を要請していることへの評価」
図:3月世論調査「岸田首相が経済界に賃上げ実施を要請していることへの評価」

3月世論調査「岸田首相が経済界に賃上げ実施を要請していることへの評価」
評価する  71.4%
評価しない 23.9%

地元広島でのG7サミット開催 70%が「評価」支持率50%超に押し上げた岸田外交

2023年の岸田政権のハイライトは、5月19日~21日まで岸田首相の地元・広島で開催したG7サミットだった。

広島サミットでの岸田首相
広島サミットでの岸田首相

岸田内閣の支持率は50.4%に上昇、議長としての岸田首相について「評価する」声は70.3%に上った。また、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島にサプライズで招待・訪問しサミット首脳と会談したことについて「ウクライナの状況改善に効果があった」との意見は60%に上った。

2023年5月世論調査「岸田内閣支持率」
支持する   50.4%
支持しない  44.5%

図:5月世論調査「G7広島サミット議長としての岸田文雄首相」
図:5月世論調査「G7広島サミット議長としての岸田文雄首相」

5月世論調査「G7広島サミット議長としての岸田文雄首相」
大いに評価する   15.1%
ある程度評価する  55.2%
あまり評価しない  15.2%
まったく評価しない 7.2%

図:5月世論調査「ゼレンスキー大統領の来日による、ウクライナの状況改善への効果」
図:5月世論調査「ゼレンスキー大統領の来日による、ウクライナの状況改善への効果」

5月世論調査「ゼレンスキー大統領の来日による、ウクライナの状況改善への効果」
大いに効果があった   12.3%
ある程度効果があった  47.7%
あまり効果がなかった  26.3%
まったく効果がなかった   7.1%

こうした上昇トレンドの中、岸田首相が水面下で模索したのが、衆議院の解散だった。

6月の通常国会会期末、永田町は、与野党の間で、岸田首相が解散に踏み切るだろうという見立ての中で攻防が続いた。衆議院の任期4年の折り返しにも満たない時期にもかかわらず、記者会見では連日岸田首相に対し、解散の判断を問う質問が相次いだ。6月13日の「いつが適切なのか諸般の情勢を総合判断する」との首相答弁については「解散に含みを示した」との解釈が飛び交った。

しかし、2日後の15日夕方、岸田首相は「今国会での解散は考えていない」と発言し、2023年前半のハイライトは、岸田首相自らが火消しをする形で幕を閉じたーー。

※「【後編:下半期】岸田内閣2023年をFNN世論調査で振り返る~年金データ紐付けミス発覚から雲行きに異変…下落の一途で支持率は“危険水域”20%台定着~」に続く

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。