普段の生活で裸眼の人もいれば、メガネやコンタクトが欠かせない人、中には運転する時だけメガネをかける人などさまざまだ。

今、そんな“視力の見え方”を再現した動画が、X(旧Twitter)に投稿され話題となっている。

目がいい人から強度近視まで、視力表の見え方比較動画をつくりました。

このコメントと共に「視力ごとの視力検査表の見え方を比較した動画」を投稿したのは、1級眼鏡作製技能士で「サカタメガネ」4代目店主の坂田頼彦さん(@sakata_yoshi)。

動画は、正面奥にランドルト環(アルファベットの「C」に似た図)を写した視力検査表があり、実際の視力検査を再現しているようだ。

視力1.0の見え方 5m先のランドルト環もはっきり(提供:坂田頼彦店主)
視力1.0の見え方 5m先のランドルト環もはっきり(提供:坂田頼彦店主)
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まずは「視力1.0(正視)」の見え方からスタート。全てのランドルト環がはっきりと見えている。

視力0.5の見え方 ぼやけてきている(提供:坂田頼彦店主)
視力0.5の見え方 ぼやけてきている(提供:坂田頼彦店主)

しかし、弱度近視の「視力0.8」「視力0.5」と視力が下がるにつれて全体がぼやけていき、ランドルト環は「C」の図の切れ目どころか、形すら分からなくなっていく。

視力0.1の見え方 ランドルト環なのかすら分からないほどぼやけている(提供:坂田頼彦店主)
視力0.1の見え方 ランドルト環なのかすら分からないほどぼやけている(提供:坂田頼彦店主)

「視力0.1」では、全てのランドルト環がうっすらと存在しているだけで、そもそもランドルト環なのかすら分からない。

視力0.01の見え方 全体がぼやけすぎて視力検査表の判別が難しい(提供:坂田頼彦店主)
視力0.01の見え方 全体がぼやけすぎて視力検査表の判別が難しい(提供:坂田頼彦店主)

そして“最強度近視”の「視力0.01」にもなると、ランドルト環を出していた視力検査表すら見分けることが難しくなっていた。

ぼやけた世界は視力が低い人にとってはなじみのある光景だが、メガネやコンタクトを必要としない人にとっては初めて見る世界で驚いた人もいるかもしれない。

実際、投稿には「なるほどこんな感じに見えるのか」「どんな見え方なのか、自分が視力良いので想像できず、なるほど!となりました」という驚きの声が寄せられている。

また、視力が低い人からも「これは是非目の良い人に知って欲しい世界ですね」「見えない世界はなかなか理解してもらえないので、こういう動画があると伝えやすくてありがたいです!」という共感や感謝の声も。12月22日時点で投稿はいいねが2万3000も付く話題となっている。

視力0.01の2倍強い近視も再現可能

こんなにも見えている世界が違うのかと驚いた人もいれば、「まさしく私が見ている世界!」と共感した人もいることだろう。面白い再現動画だったが、一体どのようにして作ったのだろうか?そもそもなぜこの動画を作成したのか?

坂田さんに話を聞いてみた。


ーーどうやって視力ごとの見え方を再現したの?

近視の度数と視力には概ね相関する目安があります。近視のメガネは凹レンズで作りますが、特定の近視度数の人の裸眼を再現するには、その凹レンズをちょうど打ち消す凸レンズをカメラの前に当てると可能となります。

例えば、視力0.5程度の近視メガネは近視度数-1.00の凹レンズで作ります。そのため、視力0.5の視界を再現するには+1.00の凸レンズをのぞくことで可能となります。投稿動画は視力測定用の機械フォロプター(どんな度数のレンズも試せる機械)の設定度数を変え、iPhoneで撮影しました。

実際の眼には乱視があったり、光が広がったり伸びたりして見える現象があるので、少し異なる部分もありますが、焦点距離は同じになるので、かなり実際の裸眼に近い見え具合になっていると思います。

視力測定用の機械フォロプターを使って、5m先の視力検査表を撮影した(提供:坂田頼彦店主)
視力測定用の機械フォロプターを使って、5m先の視力検査表を撮影した(提供:坂田頼彦店主)

ーー視力0.01よりも視力が悪い人はいるの?再現できる?

当店は強度近視のお客様が多く、今回再現した視力0.01の2倍近視が強い方までいらっしゃいます。今回の動画では再現しませんでしたが、実際に再現できます。ただし視力0.01の時点でほとんど全てぼやけているので、2倍にしても映像だと分かりにくいので動画には入れませんでした。

投稿動画を撮影する様子 フォロプターにiPhoneを設置して撮影した(提供:坂田頼彦店主)
投稿動画を撮影する様子 フォロプターにiPhoneを設置して撮影した(提供:坂田頼彦店主)

ーーそもそも、なぜ「視力表の見え方の比較動画」を作成したの?

元々は、弱視(メガネやコンタクトレンズなどをしても、視力が十分に出ない状態)のお子さんをもつ親御さんへ、お子さんの見ている世界を説明するために行っていた手法です。弱視のお子さんは弱視用メガネを朝から晩までかけていないと治療に繋がらないのですが、親御さんは普通の近視用メガネのことしか知らない場合が多く、「必要な時だけかけさせればいいか」なんて考えてしまうので、こういったやり方で説明していました。

弱視ではなく近視や遠視、乱視の方でも、自分の視界を他人に説明することは出来ないので、目が悪い人が他人に説明するときの1つの参考になればと思い作成しました。

「どれくらい見えていないか」を伝える手段

ーー投稿した理由は?

今回の動画は近視についてのみ再現しましたが、目の状態は本当に人それぞれです。メガネをかければ見えるようになる人はまだいいのですが、メガネをかけても視力が出ない方は沢山いらっしゃいます。そんな方々が見ている世界を少しでも想像するきっかけになれたらと思い、動画を作成し投稿しました。

動画撮影の様子(提供:坂田頼彦店主)
動画撮影の様子(提供:坂田頼彦店主)

ーー現在の反響に対しては、どのように思っている?

ここまで多くの反響を頂けるとは思っておりませんでした。今回とても多くの反応を頂いたので、目が悪くて困っている方は「自分がどれくらい見えていないか」を人に伝える手段がないことにも困っているという事が改めて分かりました。実際に来店されたお客さんからも声をかけられたりしていますので、ある程度の影響はあったかなと思います。

スマートフォンなどを使う時は近距離ではなく、目から40cm以上離す (提供:坂田頼彦店主)
スマートフォンなどを使う時は近距離ではなく、目から40cm以上離す (提供:坂田頼彦店主)

ーー視力を下げないために、気をつけるべきポイントを教えて。

「近くを見すぎない」ことと「合っているメガネ・コンタクトをする」ことです。最も目に負担をかける行為は、近くを見続けることです。特に現代はパソコンやスマートフォンの登場で、近距離を長時間見続けてしまうことが増えてきました。実はこれはとても目に負担をかけるので、パソコンやスマートフォンを使うときは、出来れば目から40cm以上離す、1時間続けたら10分間休憩するなどの工夫が必要です。

また、合っていないメガネをかけることも目に負担がかかります。実は「見えている」と「合っている」は違うので、見えているからと古いメガネやコンタクトを使い続けている方がいますが、目の度数は変わっていきます。定期的に眼の検査をして、目に合っているメガネやコンタクトをすることが大切です。

ちなみに、遠視や乱視の再現はできなくはないが、人によって見え方に大きな差があり、カメラによる再現が難しいため、投稿することは難しいとのことだ。

自分がどれだけ見えていないのかを伝えるのは難しい。しかし、この投稿動画を見せれば、全く同じ見え方を共有することはできないが、視力の低い人の見ている世界を想像する手助けになるのではないだろうか。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。