パソコンで仕事をし、スマホで友達とコミュニケーション…。「目を酷使し、視力が悪くなった気がする」と感じている人は多いかもしれない。

そこで最近、コンタクトや眼鏡を新しく購入するために眼科を訪れたという人もいることだろう。その際に視力だけでなく、いろいろな検査を機械や道具を使って行われたはずだ。異常がないかなど目の状態をチェックするのは大切なことだ。

検査風景(提供:冨田実アイクリニック銀座)
検査風景(提供:冨田実アイクリニック銀座)
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だが、皆さんはその検査で何を調べているのか知っているだろうか? 例えば、気球が浮かぶ景色の画像を見つめたり、眼球に空気を当てられたりするが、実際の検査内容までは知らないという人もいるのではないだろうか。

眼科検査では具体的に何を調べているのか? いくつかの検査内容についてを、冨田実アイクリニック銀座の冨田実院長に教えてもらった。

気球の絵で自然と遠くを見るよう意識

ーーまず、眼球に空気を当てる検査でどんなことが分かるの?

眼球に空気を当てて測定しているのは眼圧の検査です。使用する検査機器はノンコンタクトトノメーターといい、角膜(黒目)に空気を当てることで、目の表面を一時的に凹ませて角膜が変形する様子から眼圧(目の硬さ)を測定しています。

眼圧が高いと、視神経が傷つき視野が狭くなったり、視力が低下したりする症状が現れる「緑内障」などの病気が疑われます。 逆に眼圧が低いと眼球の「外傷」や、眼球の内側にある網膜がはがれて視力が低下する「網膜剥離」などが疑われます(※必ずしもこういった疾患が見られるわけではありません)。 

ノンコンタクトトノメーター 左:患者側 右:検査員側(提供:冨田実アイクリニック銀座)
ノンコンタクトトノメーター 左:患者側 右:検査員側(提供:冨田実アイクリニック銀座)

ーーでは、気球が浮かぶ景色を見る検査は?

覗き込むと気球が見える検査機器はオートレフ・ケラトメーター(他覚的屈折検査)と言います。眼科に行くと最初に行う検査で、気球の絵にどこでピントが合うかを自動的に測定して、わずか数秒の間に近視、遠視、乱視といった屈折異常や目のカーブを測定(曲率検査)することができます

普段は水晶体が厚くなったり、薄くなったりすることでピントを調節しています。自検査機器を自然に覗いていただくと、機械が自動的にピントの合う距離を測定してくれます。

オートレフ・ケラトメーター 左:患者側 右:検査員が見る画面(提供:冨田実アイクリニック銀座)
オートレフ・ケラトメーター 左:患者側 右:検査員が見る画面(提供:冨田実アイクリニック銀座)

あくまでも機械的な測定になりますが、このデータでおよその度数(視力)が予測できるため、この検査データをもとに視力検査を行います。視力検査で使用する矯正レンズを選択したり、眼鏡やコンタクトレンズの処方の際に参照したりします。

正確に検査を行うためには、視線を固定して気球の絵をしっかり見ていただく必要があります。無理に見ようとすると無駄な力が入って、目の調節機能が働いてしまうので、自然でリラックスした状態で覗いてください。

検査で見る気球が浮かぶ景色(提供:株式会社ニデック)
検査で見る気球が浮かぶ景色(提供:株式会社ニデック)

ーーなぜ気球が浮かぶ景色なの?

気球の絵を使用しているのは、自然と遠くを見ることを意識させるためです。人間の眼は、遠くを見ている時はリラックスしている状態なので、余計な調節力が働いていない状態で検査を行うために、手前の道から遠くに気球がある風景が採用されています。

子供用の検査機器には「くまもん」が採用されたものもありますし、海外ではクリスマスツリーなどの絵が採用されている検査機器もあるようです。

赤と緑のどちらがよく見えるかに正解は?

ーー赤と緑に描かれた二重丸を見比べる検査は何?

これは「赤緑テスト(せきりょくてすと)」「レッドグリーンテスト」「二色テスト」と言います。当院では、レッドグリーンテストと呼んでいます。

視力検査では、レンズの入っていない特殊な眼鏡(検眼枠)をかけて、何度もレンズ(検眼レンズ)を交換して視力を測定していますが、この視力検査の途中で、レッドグリーンテストを行います。

この検査では、検査で使用している検眼レンズの度数が適正かどうかを確認しています。光がレンズを通過すると、光の波長によって屈折の角度が異なるため、この光の特性を利用した検査です。

レッドグリーンテスト
レッドグリーンテスト

ーー「どっちがよく見える?」に対する正解はある?

赤と緑のどちらがハッキリ見えるかに正解はありませんので、深く考え込む必要はありません。

赤と緑が同じ場合赤がハッキリ見える場合は、目が疲れにくい状態で視力が適正に矯正されていると判断でき、使用しているレンズが適切であるということになります。

緑がハッキリ見える場合は、目が疲れやすい状態にあるため、使用しているレンズが適切ではないという判断の材料になります。

この赤と緑の比較によって、今、使用している検眼レンズが適切かを判断しています。

左:検眼枠 右:検眼レンズ(提供:冨田実アイクリニック銀座)
左:検眼枠 右:検眼レンズ(提供:冨田実アイクリニック銀座)

ーーちなみに、眼科にはどれくらいの頻度で通った方がいい?

特に目の病気がない人でも、半年~1年に一度は眼科を受診して目の健康を確認することが望ましいと思います。人間は普段から両目で物を見ており、片方の目に異常があっても、もう片方の目がそれを補ってしまうので、病気がある程度進行しないと病気が発見しづらい傾向があります。そのため、何らかの異常を感じて眼科を受診した時には、病気が進行しているケースが少なくありません。

また、40歳を過ぎた頃から目にも老化現象が現れ始め、様々な病気にかかりやすくなります。そのため40歳を過ぎたら通院間隔を短くすることも、病気の早期発見に役立ちます

目は情報の80%以上を入手している大切な器官です。現代社会はパソコンやスマホが必需品になっています。近距離を見る時間が長く、ブル-ライトを浴びやすい環境にありますので、目が休まる時間が非常に少なくなっています。目の病気は自覚症状が少ないので、病気を早期発見するには自分から定期的に眼科を受診する積極性も必要です。

検査室(提供:冨田実アイクリニック銀座)
検査室(提供:冨田実アイクリニック銀座)

視力の良い人は眼科を受診する機会が少ないので、そもそもこんな検査があることを知らなかったという人も中にはいるかもしれない。

今後、初めて検査をすることもあるだろうが、その際は目の健康のためにリラックスして臨んでほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。