戦後最悪の火山災害となった2014年の御嶽山噴火で、山頂で命を落としたカップルがいた。「山の上で2人の結婚式を挙げたい」と話していた、亡くなった女性の父親の願いが、9年越しにかなえられた。
■「いずれ結婚したい」 生前の娘が話していた想い
2014年の御嶽山噴火では、死者58人、行方不明者5人の犠牲者を出した。

愛知県一宮市の丹羽由紀さん(当時24)は、恋人の所祐樹さん(当時26)と山に登り、噴石に当たり亡くなった。

由紀さんの父・丹羽邦雄さん(2015年):
娘は本当にかわいかったですよ、父親から言わしてもらうと。結構自慢でしたね、何をするにしても…
由紀さんにとって祐樹さんは初めての彼氏で、毎週のようにデートに出かけていた。母親に「いずれ結婚したい」と伝えていたという。

由紀さんの母・丹羽真由美さん(2015年):
まさかそんなことになるとは思ってなかったから
由紀さんの父・丹羽邦雄さん(2015年):
自分は(御嶽山に)上がれるようになったら行くつもりでいますからね。気持ちの中で、父親が娘を迎えに来たという感じになるから、ちょっとは楽になるかもしれないですけどね。なんせ、上までまだ迎えに行っていないですからね、自分は。やっぱり迎えに行きたいですね

■山頂で2人の結婚式を… 父が残した「三三九度」の杯
入山規制が解除されて山頂まで行けるようになった時のために、邦雄さんが用意していたものがある。
由紀さんの母・丹羽真由美さん:
お父さんが、小さい三三九度を買ってあるのね。「2人がいたところに三三九度を持っていきたい」って。結婚式を挙げてないから、上でってことじゃないかなって

娘のために山の上で結婚式を挙げようとしていた邦雄さん。しかし噴火から1年9カ月後、規制解除を前に、心臓を悪くして亡くなった。

■父が果たせなかった“娘の願い”背負って… 恋人の父が山頂へ
噴火から9年がたった2023年7月、登山道が整備されて規制が解除され、2人が亡くなった場所まで行けるようになった。
2023年9月、由紀さんと一緒に亡くなった、恋人の祐樹さんの父・所清和さんが、邦雄さんの代わりに盃を持って山頂を目指した。

由紀さんの恋人の父・所清和さん:
お父さんの果たせなかったことを。これ(三三九度)を持って、上まで
登山開始から4時間半ほどで、2人の最期の場所に到着した。

三三九度の杯を並べ、夫婦の契りを交わす。邦雄さんの遺影も、隣に置いた。

所さんは、由紀さんの母・真由美さんに山頂から電話をして報告する。
由紀さんの恋人の父・所清和さん:
見えてます?
由紀さんの母・丹羽真由美さん:
お父さんの写真
由紀さんの恋人の父・所清和さん:
お父さん、ちゃんと見てますよ
由紀さんの母・丹羽真由美さん:
ありがとうございます
由紀さんの恋人の父・所清和さん:
よかったよかった。お父さんが一番見たかった景色だから
娘と父の願いが、9年越しに叶った。

由紀さんの母・丹羽真由美さん:
上まで持っていってもらえたし。大きな区切りができたから、それで…
(東海テレビ)