2023年もあと数日で終わる。新型コロナウイルスの「5類」移行もあり、年末年始は久しぶりに親戚で集まるかもしれないが、コミュニケーションに不安がよぎったりはしていないだろうか。
親戚との距離感はそれぞれだが「疎遠ではないけど、頻繁に家を訪ねあうほどの関係ではない」という人もいるはず。特に甥っ子や姪っ子など、親戚の子どもとは年齢も離れがちなこともあり、接し方も悩ましいもの。相手が思春期となっているかもしれない。
せっかく集まるなら楽しい時間にしたいが、大人たちができることはあるのか。コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんに、親戚の子どもと接する際のコツや注意点を中心に聞いた。
親戚と話しづらくなる“3つの要因”
――親戚の集まりで、コミュニケーションのしにくさを感じるのはなぜ?
3つ要因があります。1つ目は恥ずかしさ。お互いに今の状況が分からないので自己紹介のようなことをすることになり、恥ずかしさや緊張を感じる。
2つ目が共通の話題の欠如。その場での共通の話題が少ないため、雑談や話しかけることを難しいと思ってしまう。
3つ目は反応が予測しづらい。例えば、同じ職場の人は普段の様子から「話しかけたらこう返ってくるのでは」と予測できます。親戚ではこれが難しいので、相手の反応が気になり、対人不安の傾向が強くなりがちです。こうした要因で話しにくさを感じるのだと思います。

――親戚の子どもと久々に接するときの注意点は?
子どもが成長し、性格が変わっている可能性があることですね。思春期もあるので、久しぶりに会ったら人見知りになっていることも考えられます。以前に話が弾んだからといって、大人がいきなり親密に話しかけると、子どもは混乱する・警戒する可能性もあります。

――それではどうコミュニケーションを取ればいいの?
恥ずかしさや緊張はあって当然なので、大人は楽しくリラックスした雰囲気でいることをお勧めしたいですね。自分の話を聞かせるのではなく、子どもが主役になれるように耳を傾けてほしいです。接し方のポイントは、心理的な距離を急に詰めないこと。簡単な質問のような話題から始めて、少しずつ距離を縮められると良いですね。
打ち解けるためのポイントとNGな話題
――具体的にはどのようなことができると思う?
子どもが主役になれて、話題を共有できることはいかがでしょうか。例えば、年間の3大ニュースや新年の目標を互いに伝えてみるといったことができると思います。
個人的には、2つの遊びをお勧めします。ひとつは「1年間を振り返り、自由な1文字で発表すること」。普通の会話では、相手が話したくないことに触れてしまう可能性がありますが、これは子どもが1文字を自分で決められますし、大人はポジティブな反応を返しやすいです。
もうひとつが「10円玉の模様など、身近な物を思い出して描いてみること」。思い出せる・思い出せないことが共通の話題になりますし、面白い作品が生まれるので、雰囲気も和やかになります。

――逆に避けてほしい、NGな話題や行動はある?
きょうだい間や親戚間で比べることは避けてほしいです。例えば、冗談でも「兄は○○大学なのか。弟はどうなの?」といった発言は傷つけてしまいますし、周囲も気まずくなります。学校や友人関係の話題も注意が必要です。みんなが学校に楽しく行けているわけではありません。
行動では、子どもがミスをしても否定的な言葉や強い叱責はNG。抽象的な注意や批判ではなく、具体的で前向きな言葉で伝えてほしいです。例えば、遅刻した子どもがいるとしましょう。大人は「しっかりしなさい」よりも「次は5分前に準備できるようにしてみようか」などと伝えてほしいですね。

――子どもの成長度合いに応じた接し方のポイントはある?
相手が幼稚園児や小学生だと、会話が続きにくいかもしれません。一緒にゲームやクイズをする、何かを作るといったことをすると楽しめるのではないでしょうか。中学生や高校生には日常の過ごし方、趣味などを聞くと雑談しやすくなると思います。
ただ、繊細な時期かもしれないので、思わしくない回答が返ってきてもネガティブな反応はしないでほしいです。大学生になっていたら大人と同じように、流行や楽しいと思っていることなどを聞くと会話が広がると思います。
周囲にいる子どもを見てあげてほしい
――自分の子どもが親戚の集まりで気まずそうにしていたらできることはある?
周囲が大人ばかりだと、子どもが主役になれない話題も多いと思います。そうした場合は、会話に参加できる切り口を作ってあげても良いでしょう。緊張やストレスを感じていると思ったら、誘って他の場所に移動する、手伝いを頼んでみるなど、その場を離れられるきっかけを与えてあげてほしいですね。

――大人たちに心がけてほしいことは?
自分が話しているだけではなく“周りの人”になったときにも、子どもの様子を見てあげてほしいですね。例えば、他の大人たちが学校や成績のことを話していて、近くにいる子どもがつらそうにしている。そんな時には「ところでさ」といった一言で、話題を変えてあげることもできるはずです。
――このほか、注意したいことはある?
新型コロナは5類となりましたが、感染リスクがなくなったわけではありません。心配やトラブルにつながらないよう、最低限の手洗いなどはしてほしいです。マスクの着用やワクチン接種は、地域や家庭ごとに常識や考え方も違うかもしれません。共通の話題にしやすいのですが、扱いには注意してほしいですね。
ちなみに、年上・目上の親戚とのコミュニケーションについても聞いたところ、敬語は他人行儀を感じさせるため失礼にならない程度に崩して話すと、心理的な距離が縮まりやすいという。その分、相手の話を遮らない、雑用などは率先して動くなど、態度や行動で尊敬の念を示すとうまくいきやすいとのことだった。
年末年始のコミュニケーションに悩んでいる人は参考にしてもいいかもしれない。