「化石燃料からの脱却」の表現で初合意
国連の気候変動対策会議=COP28は13日、会期を1日延長し、「化石燃料からの脱却」という文言を盛り込んだ成果文書を採択して閉幕した。
![会期を延長し成果文書を採択したCOP28](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/700mw/img_38d64782f387178acf3a641047194898306213.jpg)
今回の最大の焦点は、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える取り組みとして、石油や石炭など化石燃料の「段階的廃止」に向けて全会一致の合意をまとめられるかだった。
![COP28の会場および議長国は産油国のUAE](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/8/700mw/img_5880c66ebd515d6c364ac32aa50cd7e1949957.jpg)
議長国は中東有数の産油国UAE=アラブ首長国連邦で、議長を務めたのは国営石油会社・アドノックのCEOでもあるジャベル産業・先端技術相だった。脱化石燃料はUAEという国家の根幹に関わることや、議長自身が石油の新規開発を進める立場であったことから、会議の行方を心配する声が相次いだ。
![COP28議長を務めたUAEジャベル産業・先端技術相](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/3/700mw/img_e3cf9a040cdee9f62d918736e462c93d174579.jpg)
さらにジャベル氏がCOP開催前に「化石燃料の段階的廃止が1.5度目標を実現する科学は存在しない」と発言していたことが明らかになると批判はさらに拡大した。
こうした中であったが、ジャベル議長は開会中、常に中立的な立場を意識して、成果文書の採択実現に向けた努力を続けた。
化石燃料「廃止」から表現は二転三転
今回のCOP28で焦点となったのは化石燃料を巡る表現だった。当初の成果文書案には「廃止」という文言が入っていた。気候変動で被害を受け続けている途上国から一刻も早い対策強化を求める声が上がっていたためだ。
![石炭・石油・天然ガスなど化石燃料を巡る表現で利害が対立](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/700mw/img_f68bbf5c596d3ef4ca7ac3bee5022a80361499.jpg)
しかし、UAEと同じ産油国のサウジアラビアなどがこれに強く抵抗したことを受けて、一時は「廃止」の文言が消えて「削減」との表現に後退した。すると今度は「廃止」を求める欧米や島しょ国などが反発し、成果文書の合意も危ぶまれる事態となり、全会一致での合意に向けて夜通しの厳しい協議が続いた。
そして会期を1日延長し、最終的には「2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロを達成するために、化石燃料からの脱却を加速させる」という表現にたどり着いた。また化石燃料の代替として、UAEが掲げていた世界の再生可能エネルギーの容量を2030年までに3倍にすることに加え、原子力を推進する目標も文書に盛り込まれた。
![成果文書の表現は「化石燃料からの脱却を加速させる」で合意](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/8/700mw/img_c81194935688338863ba4d42eea5dea7213511.jpg)
脱炭素社会に向けた大きな一歩
COPの歴史の中で、全ての化石燃料を脱却の対象にしたのは初めてで、採択の瞬間には多くの人が立ち上がり成果を称えた。途上国を支援する基金の運用開始についても合意し、日本を含む18カ国が合わせて7億2500万ドルの拠出を表明している。
![採択の瞬間は満場総立ちに](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/a/700mw/img_aa9e486dc81e879e1005169495446e8f217702.jpg)
今回の採択は脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩となったが、各国が取り組みをしっかりと進めていけるかが今後の焦点となる。来年の開催地は、東欧の産油国アゼルバイジャンに決定し、産油国が2年連続で議長国を務める。
(FNNバンコク支局・田中剛)