北海道ではクマやシカによる人身事故や農作物への被害が相次いでいる。

対応するハンターはピーク時に比べ4分の1ほどにまで減少しているが、狩猟免許の受験者数は増加傾向にあるという。

ただ、狩猟免許は取得しても一人前のハンターになるのは、簡単な道のりではない。

実際にシカ猟に携わるのはどれだけ難しいのか。33歳の若手ハンターに密着した。

”一人前のハンター”への道

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2023年でハンター歴5年の道上綾子さんだ。

道上さんは、農業被害の対策として発足した「ボランティア駆除隊」に2023年4月から所属している。

「2023年の7月の狩猟免許試験で、わな設置の資格を取った。許可が出たので、秋ごろから『わな』の仕掛けができると思う」

いずれは、札幌市ヒグマ防除隊に入りたいという道上さん。

クマ撃ち 5年~10年の経験必要

猟友会札幌支部の奥田支部長は、駆除活動をするためハンターに必要なものは経験だと話す。

「クマは5年、10年の経験を積んでスキルアップしないと担えない。クマに向かって3発撃って全部体に入っていても向かってくる」(北海道猟友会札幌支部 奥田邦博 支部長)

2023年9月、エスコンフィールド北海道のスタンド席にはカメラを構える道上さんの姿があった。

ハンター以外にもカメラマンの顔を持つ道上さん。

夜遅くに仕事が終わるなど、生活も不規則になりがちだ。

早朝から駆除隊の活動へ

「午前5時14分。きょうは…午前3時50分起き。眠い」(ハンター歴5年 道上綾子さん)

シカの農作物被害がピークを迎える秋。

道上さんは札幌市で先輩からわなを仕掛けるポイントを教わっていた。

「わかりにくいが、よく見ると、ライン上に荒れている」(ボランティア駆除隊 石田拓也さん)

「あ、本当だ。少しくねってなってる」(道上さん)

「遊びながら歩いてるので、この道にわなをかけてあげると踏む可能性が高い」(石田さん)

住宅が近い場所などではシカは直接銃ではなく、まず、わなで捕獲する。

シカが通った道には進行方向に草が倒れるというアドバイスをもとに、初めてわなを設置してみた。

掘り起こした土は、埋めたわなを隠すために必要だが、無意識に周りへ捨ててしまった道上さん。

先輩からの指導を受け、何とかわなの設置が完了。

「なかなか難しい。わなにかかればいいけど」(道上さん)

この日、3か所を見回ったが、わなにかかったシカはいなかった。

「新たに別の場所にわなを設置して、かかったらいいなって思っている。これで捕まったら農家さんは嬉しいし、わたしたちもやりがいがある」(道上さん)

仮にシカを捕獲することができても、危険はつきまとうという。

「オスジカはツノで向かってくるし、刺されて大ケガをしたり命を落とす場合もある。銃が使えない場所なら電気止めさしを使うなど、いろいろな方法がある。経験が無いと安全にできない」(北海道猟友会札幌支部 奥田邦博 支部長)

ハンターとして命と向き合うようになってから、食事を残さなくなった。

「農家さんのところも結構行ったりするので、作っている人たちの顔をよく見てるからこそ、大切に育てるものを残さなくなった。ハンターをやっていて良かったなと思う」(道上さん)

狩猟免許の講習会に講師として初参加

11月26日、猟友会が主催した狩猟免許の講習会でも道上さんは初めて講師として参加した。

「教える立場になると、知識がないと教えられないと痛感。日々勉強というその姿勢を忘れずに」(道上さん)

北海道文化放送
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