「自分が何をしたいのかわからない」

「今の仕事を続けていいのか不安」

こんなモヤモヤを抱えている人は多くいるだろう。

女性の多様な働き方への支援を通じて、すべての人の自分らしい人生を応援する人材サービス企業、株式会社Waris共同代表の田中美和さん。

編集記者時代に3万人以上の働く女性の声に触れ、「女性が自分らしくいきいきと働き続けられる社会にしたい」と事業を始めた。

著書『自分らしく働くための39のヒント Live My Life』(KADOKAWA)には、20年以上、自分らしい働き方の実現を支援してきた経験をもとにした、誰もが自分らしい生き方・働き方を実現できる方法をまとめている。

今回は「自分のやりたいことは何だろう」と悩んだときや、働き方・仕事について考えたときに知っておきたい、「働く理由は人それぞれ」という考え方を一部抜粋・再編集して紹介する。

「好き」が仕事じゃなくてもいい

「自分のやりたいことがよくわからないんですよね…」

年齢を問わず本当によく聞く声です。みなさんはいかがですか?

「自分のやりたいこと」ありますか?

「あります!私の夢は…」と力強く語れるあなたはとてもラッキー。でもなかったとしても大丈夫です。私の経験からすると、実はない人のほうが半数以上、いやむしろ多いくらいなのです。

働き方や仕事について考え始めるときに、一度ぜひ見つめ直していただきたいことがあります。

「好きを仕事に」といった考えにしばられていることも(画像:イメージ)
「好きを仕事に」といった考えにしばられていることも(画像:イメージ)
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それは、「自分のやりたいこと=自分の好きなこと」「好きを仕事に」。こうした考え方にしばられていないか、ということです。

以前、ある40代の女性とお話をしていたときのことです。その女性は言いました。

「私ってやりたいことが何もなくて。でも最近わかってきたことがあるんです。『やりたいことがある人を支えたい』それが私のやりたいことなんだって」

「素晴らしいじゃないですか!それも『あなたのやりたいこと』ですよ!」と、私はちょっと興奮気味にお伝えしました。なぜならそこに気づけた彼女が素晴らしかったからです。

「心地いい」と感じるのはどんなとき?

「やりたいこと」と言ったときに、「自分自身が」「自分のために」実現したいこと、自分の能力を「自分のために」生かせること、という意味で表現している人が多いように感じます。もちろんそれは素敵なことですし、否定するつもりはありません。

しかしながら「働く」ってそれがすべてではありませんよね?

周囲の人を支えたい!などやりがいを得られる行動は人それぞれ(画像:イメージ)
周囲の人を支えたい!などやりがいを得られる行動は人それぞれ(画像:イメージ)

先ほどの女性のように周囲の人を支えたり、誰かが困っていることを解決するために行動したり…。

自分以外の誰かのために行動することも働き方のひとつの形ですし、本人のやりがいや充実感につながります。

「やりたいこと」が具体的な「コレ!」というものがなくても大丈夫です。

あなたが心地いいと感じるのはどんなときですか?

楽しいと感じるのはどんな瞬間ですか?

人生は一日一日、一瞬一瞬の積み重ねです。心地いい時間、楽しい時間を重ねていきましょう。仕事を選ぶ理由、働く理由は一人ひとり違っていいのです。

時間の使い方で人生は決まります。あなたはどんな人生を送りたいですか?自分らしい理由、自分なりの働く理由をぜひ考えてみてください。

「楽しいと感じる一瞬に働く意味が隠れている」

自分らしく働くためのヒントです。

勝手にハードルを上げていませんか?

「やりたいことがない問題」に関して、私がいつも思うのは「やりたいこと」のハードルを自分で勝手に高くしてはいませんか、ということです。

「貧困をなくす」「世界平和に貢献する」といった、だいそれた内容じゃなくてもいいんです(もちろん、貧困問題の解決や世界平和に取り組んでいる人は、それはそれでとても素晴らしいことです!)。

たとえば、「ありたい姿」や「実現したい生活」から少しずつ分解して考えていくのも手です。

「あなたは毎日どんな生活を送りたいですか?」

自分がどんな状態が「幸せ」なのか考えてみる(画像:イメージ)
自分がどんな状態が「幸せ」なのか考えてみる(画像:イメージ)

「家族と一緒に食卓を囲みたい」
「子どもと一緒に毎日笑って過ごしたい」
「お気に入りのカフェで好きな本を読みたい」

ささやかなことでいいので、誰とどんな生活を送りたいのか、どんな状態が自分にとって幸せなのか、考えてみてください。

「家族と一緒に食卓を囲みたい」のであれば、毎日朝から夜まで仕事に追われる生活ではなかなか実現するのは難しいですよね。

リモートワークがある程度許容されて、フレックスタイムなど時間の自由度がある仕事が「あなたらしい働き方」かもしれません。

思い切って会社員ではなく、フリーランスとして在宅中心で仕事をすることで家庭生活とのバランスを取る方法もあります。

「ありたい姿」を考えてみる

私が共同経営している会社ではフリーランスやリモートワークなどの柔軟な働き方ができる仕事をご紹介していて、10年前に創業して今は2万6千名以上の方にご登録いただいています。

「高齢の両親の介護と仕事を両立したい」「子どもとの時間を大切にしたい」「将来的な起業の準備がしたい」など、登録理由は人それぞれですが、みなさんご自身の人生や暮らしで大切にしたいことがあって、それを実現するために新しい仕事や働き方に挑戦したくて私たちの会社に登録されています。

「ありたい姿」や「送りたい生活」から、それを実現できるような仕事や働き方を考えてみるのはどうでしょうか。

「そんなことを言っても今の仕事は接客業だからリモートワークなんて無理」と思った方、新たなスキルを学んで業種・職種を変更することもできます。

実際、私たちの会社でご紹介しているリスキリングプログラムを経て、接客業の方がリモートワーク可能なIT企業へ転職したケースもあります。

今は新しいスキルを学んで新しい仕事を獲得することが奨励されている時代、意欲があればいくらでも自分のありたい姿にそって働き方を変えていけます。

『自分らしく働くための39のヒント Live My Life』(KADOKAWA)

田中美和
株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事、国家資格キャリアコンサルタント

田中美和
田中美和

株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事、国家資格キャリアコンサルタント
慶応大学法学部政治学科卒業後、日経BPで編集記者として働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接した働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく独立し、2013年、多様な生き方・働き方を実現する人材サービス企業Warisを創業し共同代表に(現在、ベネッセグループ入り)。フリーランス女性と企業との仕事のマッチングやリスキリングによる女性の就労支援に取り組む。最近では女性役員紹介事業を通じて意思決定層の多様性推進にも尽力している